「親が脳梗塞になり、急遽介護が必要に…」
あなたは今こんな状況になり不安になってはいませんか?
厚生労働省発表の「患者調査の概況」によると脳血管疾患(脳梗塞以外にも脳内出血、くも膜下出血などを含む脳内の血管のトラブル)の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は年々減少しているものの、平成29年時点で117万9,000人と言われています。
この数字からわかるように、多くの方が脳梗塞等になり介護を受けている現状があります。
たとえ家族や親が脳梗塞になっていない場合でも、将来的に脳梗塞になってしまう可能性も十分あります。
上記を踏まえた上で、
脳梗塞の方における介護も、知っておかなければいけない知識や心構えをしっかりした上でのぞむことが理想です。
慣れない初めての介護で脳梗塞になってしまった親の介護は、不安でいっぱいだと思います。
脳梗塞になった方の後遺症は、多種多様で介護に完璧な正解はありませんが、限りなく正解に近づけることは可能です。
是非この記事を参考に、介護をスタートしてみてください。
それではまずは脳梗塞について知っていきましょう。
最初にお話するのは、脳梗塞の種類と症状です。脳梗塞の症状は人それぞれ変わってきますが、どんな症状があるのか 知っておくだけでも介護に役立てることができるので参考にしてください。
1.脳梗塞の介護で知っておくべき5つのポイント
1-1脳梗塞3つの種類と症状
脳梗塞とは、血管が細くなってしまったり詰まってしまうことで、脳に栄養や酸素がいかなくなり脳の細胞が死んでしまうといった障害を受ける病気です。脳は体の神経を司る場所なので体に様々な障害があらわれてしまいます。
また、一度死んでしまった脳神経や脳細胞は復活することはありません。なので脳梗塞発症初期の段階で重い症状が出てしまった場合、後遺症が残ることは仕方がありません。それではまず具体的な脳梗塞の名称や症状を紹介します。
・ラクナ梗塞
脳にある細い血管が詰まってしまうのがラクナ梗塞です。ラクナとは「小さなくぼみ」という意味もあり、現在1番多いといわれている脳梗塞です。脳の細い血管なので、つまった場所によっては無自覚でさらに無症状の場合があります。その逆で、軽いしびれや麻痺というような障害があらわれる場合もあります。
・アテローム血栓性梗塞
ラクナ梗塞とは違い、脳の太い血管が血栓によっておこる脳梗塞です。動脈硬化によってもとは太かった血管が細くなっていき詰まってしまうものなので、体への影響は非常に大きく障がいが現れてしまいます。半身の麻痺や足の麻痺、自分で服が着られなくなる、その人自体の性格がかわってしまうような障がいがみられることがあります。
・心原性脳塞栓症
心臓にできた血栓が血流に乗って脳まで運ばれ、脳にある太い血管を詰まらせてしまうことで起こる脳梗塞です。紹介した3つの脳梗塞の中で1番怖いものになります。脳の広い範囲の血液が止まってしまうので、多くの障がいがおきてしまいます。呼吸ができなくなってしまう、食事ができなくなるなどの命にかかわる障がいがあらわれることがあるので、非常に危険な脳梗塞となります。
上記の3つが主な脳梗塞の種類になります。
それでは次に症状を紹介します。
声を出すことが難しくなる | 失語症 | 右左がわからない |
顔面や手足が麻痺、しびれがでる | 飲み込めなくなる | めまいがする |
ふらついてしまう | 衣服が 着られない | 自分がどこにいるかわからない |
性格や人格が変わる | 記憶障害になる | ものの使い方がわからなくなる |
上記の表に出した症状の他にも多くの症状が存在します。また表にある症状が必ずしも1つだけ現れるというわけではありません。色々な症状が出てくることもあるため、人それぞれ症状が違ってきます。
あなたが介護する方にどんな症状があるかをまずは見極めましょう。
1-2.脳梗塞の前兆を感じたらすぐに病院へ
脳梗塞とは、「急に意識を失って倒れるもの」とイメージする方が多いのかもしれません。確かにこれも脳梗塞の症状の1つです。しかし単なる症状の1部でしかありません。
脳梗塞にも前兆があります。一過性脳虚血発作(TIA)といって、脳の一部の血液の流れが一時的に悪くなることで、半身の運動まひなどの症状が現れ、短くて数分、長くても30分程度で症状が治まってしまう発作を起こすことがあります。すぐに消失する発作ですので、「疲れのせい」にして放っておいてしまう人が多いです。しかし一過性脳虚血発作が起こると約5%から20%の人に脳梗塞が発症すると言われています。
前兆の内容として意識が低下、軽い手足のしびれやめまい、吐き気を感じたり、ものが二重に見えたりした場合は脳梗塞の前兆かもしれません。
このような症状を少しでも感じたら、すぐに119番に電話して救急車を呼びましょう。そして救急車の中で、症状を伝えて専門医がいる病院まで搬送してもらいましょう。脳梗塞は発症してから数時間以内に治療を開始すれば、症状を早期に回復させ、後遺症を最小限に食い止めることができる可能性があります。つまり早期に対応することがあなたの体を守ることへ繋がります。大切なのは気になったらとにかくそのままにしないことです。また、いつその症状が出たか聞かれると思いますので、発症した時刻を覚えておきましょう。
1-3.脳梗塞の予防と再発防止
「動脈硬化」「高血圧」「脂質異常症」この3つの予防や治療が大切です。
脳梗塞は、先ほどお話しした通り「前兆」を感じても、症状が消えてしまうことがあります。ただこの時点で、脳梗塞を発症または発症する確率は非常に高く、検査してみたら脳梗塞が見つかることやすぐに発症してしまう場合があります。なのですぐに専門医に相談する、検診してもらうことが大切です。
紹介した3つの脳梗塞は基本的に「動脈硬化」「高血圧」「脂質異常症」の3つがおもな原因になります。
動脈硬化とは高血圧がもたらすものなので、高血圧にならないための食事生活や運動習慣、たばこや飲酒を抑えるといった生活習慣を見直して対策をしていきましょう。これは俗にいう生活習慣病の予防となり、他の病気への対策にもなります。また定期的な健康診断をし、自分の身体の状態を把握していく中で問題があった場合はしっかり正常にもどす治療や行動が大切になります。
細かいことかもしれませんが、上記で紹介したことをしている人としていない人では、前者の方が脳梗塞になるリスクは低くなります。普段の生活を見直して発症や再発を予防していきましょう。
それでは次に脳梗塞になったあとの後遺症にはどんなものがあるのか紹介していきます。脳梗塞の要介護者を介護する方には、とても大切な内容になりますので押さえておきましょう。
1-4. 脳梗塞の後遺症は多種多様。脳梗塞による後遺症4種類
1-1でも話しましたが、一度死んでしまった脳神経や脳細胞は復活することはありません。なので脳梗塞発症初期の段階で重い症状が出ている場合、後遺症が残ることを覚悟しましょう。
それでは実際にどんな後遺症があるのか?具体例を紹介します。
1-4-1.運動障がい
脳の運動を司る部位が損傷すると、日常生活で手足を動かすことが困難になる場合があります。
片麻痺や半身麻痺が起こり、手足の動きのコントロールが利かなくなることが後遺症として現れます。
歩いたり、階段を上ったり、箸を持ったりするなど日常生活の普段できていた行動ができなくなってしまいます。また、喉や舌の筋肉に影響が残ると、うまく話せなかったり飲食ができなくなってしまう場合があります。
1-4-2.感覚障がい
脳にある感覚を司る神経は、運動神経と深い関係があります。よく見られる後遺症として手足が痺れたり、物に触っても感覚がなかったり、温度を感じなくなるなど感覚が鈍感になったりすることがあります。手足のしびれや、感覚がなくなることで、ものを落としてしまったりやけどをしているけど何も感じないという実例もあります。
1-4-3.言語障がい
脳には言語を司る部分があります。この部分を損傷してしまうと、言葉や文字の理解ができなくなる場合があります。これにより喋れない、文字が書けないなど、意思の疎通が難しくなることがあります。
この後遺症が残ってしまった場合、こちらからの意思や考えが殆ど通じることがなくなる可能性もあることを覚悟しておきましょう。
1-4-4.認知障がい
こちらの障がいは脳血管性認知症と言われる障がいです。空間を認識できなくなってしまったり、ものや名前、場所を思い出せなくなるというような症状があらわれます。迷子になってしまったり、自分がどんな薬を飲んでいるのか忘れてしまうといった症状があらわれます。
いかがでしょうか?
上記の内容を見ていただければわかるように脳梗塞の後遺症はひとそれぞれ違ってきます。
なので同じ脳梗塞の要介護者を介護していくとしても、後遺症の内容によって対応の仕方も変わってきます。
それを理解した上で、自分が介護する人にどんな後遺症がでているか?それによって日常生活上、何が困るのかを見極めて対策をとっていくことが大切になります。
1-5.脳梗塞のリハビリテーション
それでは第1章の最後にリハビリテーションの役割についてお話していきます。
リハビリの目的は「脳、身体の機能を回復する」「残った機能を開発・強化する」ことの2つで、できるだけ元の生活に近づけることです。
リハビリテーションとは、病気やけがなどによる後遺症を持つ人の社会復帰のために行う身体的・心理的訓練です。「身体」と「心」この二つの機能を回復し社会復帰をするために重要な役割をもっています。後遺症や症状に合わせて、リハビリメニューを作成してもらいリハビリしていくことが大切です。
損傷してしまった脳細胞はもう治ることはありません。しかし脳の使っていない部分を避けて、新しい回路で指令を伝達するようになることもあります。これによって出来なくなってしまったことが、できるようになることもあるので、根気強くあきらめないでリハビリを継続していくことが大切です。介護者の方は、このリハビリを行う環境を整えサポートすることを心がけていきましょう。
2.脳梗塞の介護にかかる費用
第1章では、脳梗塞の方を介護する上でのポイントを紹介しました。
この章では、実際に脳梗塞の介護にかかる費用を紹介していきます。
2-1 在宅介護の場合
介護度 | 1月あたりの平均費用 |
要支援1 | 2.8万円 |
要支援2 | 3.4万円 |
要介護1 | 5.4万円 |
要介護2 | 7.7万円 |
要介護3 | 7.2万円 |
要介護4 | 10.1万円 |
要介護5 | 10.7万円 |
全体平均 | 6.9万円 |
http://www.kakeiken.or.jp/jp/research/kaigo2013/result1.html
出典:家計経済研究所
上記の表からわかるように在宅介護の場合、かかる費用(保険からの給付分を差し引いて実際に支払う金額)は、平均で1人あたり6.9万円が目安になります。要介護度によってかかる費用の目安はかわってきますので、上記の表を参考にしてください。金額の内訳として介護サービス費用および介護サービス以外の費用、すなわちおむつ代や介護食などの介護用品代、医療費、社会保障費などが含まれています。
介護保険が適用されることで、介護サービス費用の負担は1割〜3割に抑えられます。
ただ介護保険にも上限がありますので、その上限と相談し上限を超えた金額のサービスを受けた場合は全額負担になるので、注意しましょう。この保険については3章で触れていきますので、そちらを参考にどんなサービスをうけるのかはケアマネージャーに相談して決めてください。
2-2 施設介護の場合
次に施設介護の場合です。
施設は在宅介護とは違い、管理費、家賃が含まれているため、在宅介護よりも高額になります。目安の値段として月15〜30万円ほどです。
介護施設に入居した場合は、介護サービス費の自己負担金に加えて、居住費や食費、光熱費など、生活に必要な費用を毎月支払う必要があります。なので費用はどうしても高くみえますが、在宅で過ごす場合にも家賃、食費、光熱費はかかることも考慮する必要があります。介護施設によっても費用は変わってきます。
例として介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1ヶ月の自己負担の目安を表を用いて紹介します。
・要介護5の人が多床室を利用した場合
施設サービス費の1割 | 約25,000円 |
居住費 | 約25,200円(840円/日) |
食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます。) |
合計 | 約102,200円 |
・要介護5の人がユニット型個室を利用した場合
施設サービス費の1割 | 約27,500円 |
居住費 | 約60,000円(1,970円/日) |
食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定されます。) |
合計 | 約139,500円 |
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
(出典:厚生労働省)
上記の表は目安であり、1番費用が高くなる要介護度5の方にスポットをあてましたが、入所する方の世帯の所得や資産、施設の立地などで金額は変化します。なので施設選びお住いの地域の施設の料金帯を調べて、ケアマネジャーと相談して決定することが大切です。
3.脳梗塞で介護が必要になった時の保険について解説
この章では知っておきたい保険の基本知識を解説していきます。
介護保険では、要介護状態に応じて支給限度額が決められています。
上限額の範囲内でサービスを利用する場合は、利用者負担は原則1割(一定以上所得者は2~3割)です。
しかし上限を超えてサービスを利用した場合は、超えた分の費用が全額負担となりますのでサービスを
利用する際はその費用と支給限度額をよく見て決めましょう。
以下在宅サービスの支給限度額表
要介護状態の区分 | 1ヶ月の支給限度額 |
要支援1 | 50,030円 |
要支援2 | 104,730円 |
要介護1 | 166,920円 |
要介護2 | 196,160円 |
要介護3 | 269,310円 |
要介護4 | 308,060円 |
要介護5 | 360,650円 |
上記の表を見て、要介護者の介護度と照らし合わせることで
月に支給される保険金の限度額を知ることが可能です。
「一定以上所得者とは?」
本人の合計所得金額が160万円以上であり、かつ、
同一世帯の65歳以上の方の「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯で280万円以上、
2人以上世帯で346万円以上の人を指す言葉です。
前年の所得金額や年金収入やその他の細かい条件もあり、毎年7月中に介護保険負担割合証が届きますので、それを確認しましょう。
在宅サービスを利用する場合は、
上記の内容は知った上でサービスを選んでいきましょう。
4.脳梗塞の介護をする上での3つの注意点
4-1. できることはやってもらう
要介護者の方ができると思うことは積極的にやってもらいましょう。
なぜやってもらうか?無理せずこちらでやったほうがいいのではないかと思うかもしれません。前提として後遺症の程度によってできることは変わってきますが、実はできることまで全てやってしまうと身体の機能は衰えていきます。
なので後遺症があっても、要介護者の方ができることは積極的にやってみてもらいましょう。例えば積極的に食事の際に食器を運ぶことを手伝おうとしてくれたり、掃除などといった家事を手伝おうとしてくれた時は、お願いしてみましょう。もし失敗してしまったとしても怒るのではなくやろうとしてくれたことに感謝をして、今後自分ができると思ったことをやろうとする環境を作っていきましょう。
それが身体の機能維持にも繋がります。
4-2. 家族で支え合う
介護の負担を1人に背負わせる、また背負うのは避けましょう。
特定の人にだけ負担がかかってしまうと、疲労や精神的な負担によって適切な介護ができなくなってしまいます。最悪の場合、介護をする側が介護鬱になってしまったり、からだを壊して病院に通わなければいけなくなります。特に後遺症が重症の場合や、または介護を担当できる人が家族で自分1人の場合は、介護保険のサービスなどを利用して負担を分散、軽減することも大切です。
もちろん家族で介護を続けるという心構えは重要ですが、常にベストな状態で介護をしていくためにも、負担を抱えすぎないようにしましょう。
4-3 要介護者の気持ちに寄り添いましょう
後遺症の症状によっては、会話ができなかったり意思疎通ができない場合があります。
こういった場合にはは要介護者の気持ちを理解し寄り添うことは難しいかもしれません。
しかし上記以外の場合は、まず意思疏通を通して要介護者の気持ちに寄り添ってあげましょう。
では具体的に寄り添うとはどうすればいいでしょうか?
要介護者は今までできていたことができなくなった不安や辛さを抱えています。
そんな状態の人に「怒る」「怒鳴る」「悪口を言う」といった行為は、不安や辛いという気持ちをさらに強くしてしまいます。決してしないようにしましょう。逆に、要介護者の方がしてくれたことの意図を理解し、たとえその行為を失敗したとしても感謝をしてみましょう。
例えばお皿を出す時に手伝おうとして、落としてしまったとします。この場面で「余計なことはしなくていい」と怒る場合と「手伝おうとしてくれたことが嬉しい、でも怪我をされたら私が悲しいから私にやらせてね。ありがとね」と伝える場合、どちらが要介護者の気持ちを尊重しているかは一目瞭然です。この違いが介護における介護者と要介護者のストレスや、気持ちを変えていきます。
まずは今まであったことや想像できる場面を思い出して、どうしていくかどう声をかけていくか?を考えシミュレーションしてみてください。これをするだけで介護の質が変わってきます。
5 まとめ
いかがだったでしょうか?
脳梗塞になった方に現れる後遺症や、介護をする上での費用や注意点をお話ししました。
一番大切なのは、脳梗塞の後遺症を理解し、要介護者を尊重した介護をすることです。
介護に必要なサービスであったりサポートは、ケアマネージャーに相談して決めることができますが、最後はあなたの姿勢が介護の質を高めることにつながります。
ぜひこの記事を参考に介護を進めていただけたら幸いです。
もし質問、悩み、不安などあればコメントしていただければ介護の専門のスタッフが対応いたします。お気軽にコメントください。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。