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親が病気になったときに仕事はどうする?3つのパターンを紹介

親 病気 仕事
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「親が病気で倒れた!」

とりあえず駆けつけながら、今抱えている仕事のことや家庭のこと、お金のことなどが頭をよぎり、不安になっていたりしませんか?

高齢の方が病気で倒れると、そのまま入院となるケースが多くあります。

「一命はとりとめました」
「命に別状はありません」

この言葉でホッとしたのも束の間、しばらく安静にしていれば大丈夫、と思っていたら、入院している間に体力が落ちたり、脳の機能が衰えたりといったことが原因で”自立”が難しくなることがあります。

そうなると無事に退院したとしても、以前の通りの生活には戻れず、看護や介護といったサポートが必要になってしまうことも決して珍しいことではありません。

そのようなことが起こったときに気になるのは、あなた自身の生活のこと、特にお仕事のことではないでしょうか?

「このまま親の面倒を見ることになったとき、仕事をしながら面倒を見ることができるのだろうか?」

「”介護離職”なんて他人事かと思っていたけど、もしかして、、、」

そこで、この記事では、親が病気で倒れてしまったときに仕事はどうしたらよいのか?と思った時に考えられる代表的な3つのパターンをご紹介しました。

この記事を読むことで、あなたが仕事を続けるべきか辞めるべきか、という判断するための材料がすっきりと整理できます。

いざ!という時にあなたに冷静な判断をしていただき、後悔のない選択をしてほしい。と思いながら書きました。

突然のことで慌てているお気持ちはわかりますが、ここは一旦気持ちを落ち着けて、この記事の内容を参考にしながら、あなたの状況を整理してみてください。

では解説していきます。

1. 親が病気になったときに仕事はどうする?3つのパターンを紹介

親 病気 仕事

親が高齢になると、病気で倒れたときには誰かが面倒をみることになる可能性は高いです。

そうなったときにあなたが面倒をみなければならない立場であった場合、

・親との関係
・親族兄弟との関係
・あなたの家族との関係
・上司、同僚との関係

といった人間関係が複雑に絡み合い、先行きが見えない不安の中で仕事を続けるか辞めるべきかを悩んでしまうことは決して珍しい事ではありません。

いざ!というときにあなたが後悔しない、冷静な判断ができるように仕事を辞める前に考える以下の代表的な3つのパターンで整理してみましょう。

1-1. 仕事を休むパターン

親が倒れた!というとき、仕事を休む方法として、「年休」「介護休暇」「介護休業」の3つの方法が考えられます。

この3つの中でも、まずは「年休」(年次有給休暇)を使って対応するようにしましょう。

いわゆるフルタイムの正社員であれば、最低でも年10日の「年休」を取得できます。

さらに親が「要介護状態という条件がありますが、これに該当したときには、「年休」に加えて、年5日の「介護休暇」と通算93日までの「介護休業」を取得できます。

この「介護休暇」や「介護休業」はうまく利用すれば仕事と介護を両立できる非常に便利な制度です。

この制度は働く人々が、仕事を続けながら家族のを介護を両立できる体制を構築するために、一時的に仕事を休むことができる制度のことで、育児・介護休業法という法律でその利用条件が定められています。

「介護休暇」・「介護休業」の制度について次から詳しく説明します。

1-1-1. 介護休暇制度

「介護休暇」とは、”要介護状態”にある”対象家族”(親は対象家族に該当)を介護するために休暇を取得できる制度です。

対象家族1人につき年5日間(2人の場合は10日間)の休暇を1日または半日単位で取得することができます。

利用条件は以下の4点です。

○利用条件
① 「対象労働者」であること
② 「要介護状態」であること
③ 「対象家族」であること
④ 「対象となる世話」を行うこと

① 対象労働者 [1] 労働者(日々雇用される者を除く)
[2] 労使協定によって対象外とされている者
2.1 入社6ヶ月未満の者
2.2 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
② 要介護状態 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり「常時介護を必要とする状態」

「常時介護を必要とする状態」とは、以下の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合であること。
(1)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
(2)状態①~⑫のうち、2が2つ以上又は3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。

③ 対象家族 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、父母及び子(これらの者に準ずる者として、労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫を含む。)、配偶者の父母

④ 対象となる世話 [1] 対象家族の介護
[2] 対象家族の通院等の付添い、対象家族が介護サービスの適用を受けるために必要な手続きの代行
その他の対象家族に必要な世話であり、対象家族を直接介護するものに限られず、対象家族のために行う家事や買い物などについても、対象家族の世話と認められるものであれば含まれます。

(出典①:厚生労働省「平成 22 年 2 月 26 日版 改正育児・介護休業法に関するQ&A
(出典②:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし パンフレット」介護休業の対象となる労働者
(出典③:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし パンフレット」常時介護を必要とする状態に関する判断基準) 

○利用手続
「介護休暇」は、国が法律で定めた制度(育児・介護休業法)に基づくものですので、就業規則に制度が無くても、申出により利用することができます。

ただし、勤務先の労使協定によって、「介護休暇」の対象労働者[2]に該当する場合がありますので、勤務先に確認してください。

介護休暇 「介護休暇」を取得するには、対象家族が要介護状態にあること等を明らかにして、事業主に申し出ます。
ただし、「介護休暇」の取得は緊急を要することも多いため、当日の電話等による口頭の申出でも構わないとされています。

○給与の有無
「介護休暇」を取得している期間は、原則として無給となりますが、勤務先の規定によっては別途補助がある場合がありますので、確認してみてください。

介護休暇 「無給」(勤務先によって別途補助がある場合がある)

○取得のタイミング
「介護休暇」は原則無給となりますので、年休があれば年休の活用を優先しますが、利用条件が限定されていますので、次の優先順位のイメージで利用されることをおススメします。

①年休(使い切らない) > ②介護休暇 ≧ ③年休(残り)

>>>関連記事 「仕事と介護を両立したい!介護休暇の条件から申請手順まで全てを解説

1-1-2. 介護休業制度

「介護休業」とは、”要介護状態”にある”対象家族”(親は対象家族に該当)を介護するために休業できる制度です。

対象家族1人につき通算93日まで、最大3回まで分割して取得することができます。

利用条件は以下の4種類です。

○利用条件
① 「対象労働者」であること
② 「要介護状態」であること
③ 「対象家族」であること
④ 「対象となる世話」を行うこと

以上の4点です。

① 対象労働者 [1] 労働者(日々雇用される者を除く)
[2] 労使協定によって対象外とされている者
2.1 入社1年未満の者
2.2 申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
2.3 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
[3] 有期契約労働者は、申出時点において、次の要件を満たす者
3.1 入社1年以上
3.2 介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
② 要介護状態 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり「常時介護を必要とする状態」

「常時介護を必要とする状態」とは、以下の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合であること。
(1)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
(2)状態①~⑫のうち、2が2つ以上又は3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。

③ 対象家族 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、父母及び子(これらの者に準ずる者として、労働者が同居し、かつ、扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫を含む。)、配偶者の父母

④ 対象となる世話 [1] 対象家族の介護
[2] 対象家族の通院等の付添い、対象家族が介護サービスの適用を受けるために必要な手続きの代行
その他の対象家族に必要な世話であり、対象家族を直接介護するものに限られず、対象家族のために行う家事や買い物などについても、対象家族の世話と認められるものであれば含まれます。

(出典①:厚生労働省「平成 22 年 2 月 26 日版 改正育児・介護休業法に関するQ&A
(出典②:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし パンフレット」介護休業の対象となる労働者
(出典③:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし パンフレット」常時介護を必要とする状態に関する判断基準) 

○利用手続
「介護休業」は、国が法律で定めた制度(育児・介護休業法)に基づくものですので、就業規則に制度が無くても、申出により利用することができます。

ただし、勤務先の労使協定によって、「介護休業」の対象労働者[2]に該当する場合がありますので、勤務先に確認してください。

介護休業 「介護休業」を取得するためには、対象家族が要介護状態にあること等を明らかにして、

介護休業開始予定日の 2 週間前までに書面等により事業主に申し出ます。

○給与の有無
「介護休業」を取得している期間は、原則として無給となりますが、「介護休業」の場合は、雇用保険から「介護休業給付金」として、93日を限度に給与の67%が支払われます。

なお、勤務先の規定によっては別途補助がある場合がありますので、確認してみてください。

介護休業 「無給」
雇用保険から「介護休業給付金」として67%給付あり。(93日限度)

○取得のタイミング
ここで強くおススメしたいのは、1回に全部の休業期間を取得してしまうのではなく、以下の3つの体制構築のために3回に分けて活用することです。

1)初期体制の構築
2)状態変化に伴う体制変更
3)終末期に向けた準備体制

1)初期体制の構築
親が倒れた直後は年休などを利用して対応しますが、退院後に生活に戻っていく際には「要介護認定」のための手続きや各種サービスの契約、新しい生活への順応など「初期体制」を構築するためには何かと人手が必要ですので、「要介護認定」の前後を最初のタイミングとして利用することをおススメします。

2)状態変化に伴う体制変更
介護が必要になった高齢者の方は、緩やかに、時には急激に身体能力や身の回りのことを行う能力が衰えていきます。

転倒が続いてケガをすることが増えたり、認知症が疑われるような症状が出てきたりしたときには、体制を立て直すタイミングとして「介護休業」を取得することをおススメします。

3)終末期に向けた準備体制
終末期が近づいてきた頃には、その時がいつ来ても慌てないようにモノや記録、関係者の整理などをしておくことをおススメします。

>>>関連記事 「介護休業の条件・対象者、期間、給料から申請手順まで全てを解説

1-2. 仕事を辞める

親が突然倒れた場合、仕事を辞める(介護離職)という選択肢があります。
責任感の強いあなたは「仕事を辞める」ことを考えるかもしれません。

しかし、いきなり仕事を辞めるのはおススメしません。

なぜならば、仕事を辞めて看護・介護に専念することによって、あなたの前に立ちはだかる3つの”カベ”があるからです。

その3つの”カベ”について詳しく説明します。

1-2-1. 「お金」のカベ

あなたが仕事を辞めたとき、毎月の収入が途絶えることになります。
共働きで一定以上の収入があり、貯蓄もあるということでない限りは、お金の不安がつきまといます。

特に看護や介護のために面倒を見なければならない期間は予測できるものではなく、長ければ10年20年という長期にわたることも珍しいことはありません。

総務省の調査結果によれば親世代の家計状況は余裕がないことが分かっています。

総務省「家計調査」:家計収支編、総世帯のうち無職世帯】
 収入:約16.5万円(うち年金が約14.1万円)
 支出:約22.1万円

上記の調査結果からもわかるように、月次の収支は赤字であることが多く、貯蓄を切り崩しながら生活していることを考えると、先行きの見えない状況を親の収入だけで賄うことは現実的とは言えません。

1-1.で説明したように、仕事を辞めるのではなく、まずは「介護休業」を取得するようにしましょう。

1-2-2. 「キャリア」のカベ

親の看護・介護に専念するために仕事を一旦辞め、区切りがついたときに再就職をしようと思っても、うまくいかないことが、2017年の総務省の「就業構造基本調査」によると分かっています。

こちらの調査によると看護・看護のために離職した人のうち1年以内に再就職しているのは約25%(調査時点での有業者:2.5万人/看護・介護のために離職した人数:9.9万人)にとどまっています。

(出典:厚生労働省 2017年「就業構造基本調査」)

また、看護や介護を理由とした転職では、年収が大幅に減少したという調査結果もあります。

(出典:明治安田生活福祉研究所、ダイヤ高齢社会研究財団「仕事と介護の両立と介護離職」共同調査)

「介護離職」した場合、以上のデータからもわかるようにあなたの人生設計を大きく狂わせる可能性が高いです。もちろん再就職ができないわけではないですが、急場をしのぐために「仕事を辞める」ことはおススメしません。

一時の忙しさや感情で「介護離職」するのではなく、「介護休業」を取得して冷静に体制を構築し、ぜひ仕事と介護の両立を目指してください。 

「休暇・休業制度」などの法律に基づく制度を利用する場合、会社が従業員に対して不利益になるような取り扱い(たとえば解雇はもちろん、不当な減給、異動など)をすることは禁止されております。

「介護休業」などの制度を利用した場合、企業には以下の義務が課せられています。
・会社による「不利益な取り扱い」の禁止
・職場における「ハラスメント」(ケアハラ)の防止措置

あなたは堂々とこれらの制度に基づくあなたの正当な権利を主張して大丈夫です。
もし会社から「不利益な取り扱い」や職場から「ケアハラ」を受けたならば、企業は法律の義務違反です。

1-2-3. 「メンタル」のカベ

仕事を辞め、社会との関係が薄くなり、親の看護・介護に専念したとしても、ラクになるというのは思い込みです。

(出典)平成24年度厚生労働省委託調査「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」

こちらの2012年の厚生労働省の調査結果からもわかるように、肉体的にはもちろんのこと精神的にも看護・介護に専念した時の方が「負担が増した」という方が6割を超えています。

つまり、「看護・介護」のために退職することは自分の首を絞めることになるのです。

ある介護者の体験者は

「仕事をしていないと24時間親と顔を突き合わせているので、気が休まらない。
たまに気晴らしをしようと思ってでかけたとしても、いつも頭のどこかに親のことが残っており、全然休んだ気がしない。仕事をしながら介護をしていた時はもちろん忙しかったが、仕事をしている時には完全に頭を切り替えられていたので、むしろ仕事が気分転換になっていた。」

と仰っていました。

つまり、仕事を続けている方が結果的に”ストレス解消になる”ことがあるのです。

この事例からもおわかりになるように、仕事を辞めて社会とのつながりを断つべきではなく、親と一定の距離を置くことができる「居場所」を持ち続けることをおススメします。

1-3. 仕事を続ける

「休暇」や「休業」といった制度を利用することによって、一時的な対応はできますが、終わりが見えない介護。いずれ、自分一人だけで対応できず、仕事を辞めるという結果につながってしまうかもしれません。

そのため、あなたが仕事を続けるには、周囲の方々の協力が不可欠です。

総務省の「就業構造基本調査」によれば、看護・介護を行っている日数が「週に3日以上」の方が約半数を占めています。

(出典:総務省「就業構造基本調査」

つまり、誰かの協力なしに自分で抱え込もうとするとほぼ毎日看護・介護にかかわる必要があるということです。

では協力をお願いするべき方とその方々からどんな協力を得たいかを整理します。

2. 自分だけで判断する前に相談するべき3つの関係先

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あなたが相談するべき3つの関係先があります。

2-1. 上司・同僚・人事担当者

【目的】 休暇・休業や短時間勤務、残業免除の「制度活用」

プライベートなことだから、と遠慮する必要はありません。

遠慮しているうちに、仕事に大きな穴をあけて、取り返しのつかない迷惑をかけてしまう方が問題です。
ぜひ、早いうちに相談しておき、制度の活用や休暇の取得ができるような協力を得ておきましょう。

2-2. 親・親戚・きょうだい

【目的】 身の回りの世話や費用の「負担分散」

親の話をよく聞き、できるだけ意向に沿った対応をしようということも大切ですが、ぜひ、きょうだいや親戚の方に対しても状況を連絡しておき、決断の方針について話し合っておくことをおススメします。

なぜならば、ひとりで判断してしまうことによって2つのデメリットが起こるからです。
以下で詳しく説明します。

  • まわりが非協力的な人ばかりになってしまうこと

ひとりだけが頑張ってしまうと、まわりの人が「当事者意識」を失い、「手も金も出さないが、口だけは出す」批評ばかりを行う非協力的な人ばかりになってしまう恐れがあるのです。

たとえばこのような事例があります。

Aさんは、母親とはもちろんのこと専門家にも相談しながら、介護休業をとって在宅で介護をしていました。現在に至るまでにいろいろな介護サービスを利用してきましたが、ここ数ヶ月で母親の状態が悪くなってしまい、母親に合った施設を探すために仕方なく仕事を休んで介護をしていたという状況でした。

そろそろ介護休業の予定していた期間も終わりに近づき、焦ってきていたところ、ようやく母親に合いそうな施設に空きが出たとの連絡があり、久しぶりに兄(長男)に連絡をして、費用負担について相談をしたところ、「お前が面倒を見られているならそのままみていたらいいじゃないか。そんな高い金払ってまで親を捨てたいのか?俺はそんなことのために金を払うなんて考えられない。そもそも、施設は本当によく探したのか?たまたま見つけたところに入れようとしているだけなんじゃないのか?」というような冷たい言葉を浴びせられ、ただでさえ疲れがたまっていたため、言葉を返す気力もなくなってしまったそうです。

このような事態になってしまったことの一因として、長男である兄が蚊帳の外に追いやられていると感じて、へそを曲げてしまっていたのではないか?と仰っていました。

このような状況にならないためにも、早い段階から話をしておき、少しずつでも役割を分担するようにすることで、「当事者意識」を持ち続けてもらうことが、継続的な協力関係を築くコツです。

  •  疑惑が生じたときに解決が困難なこと

”事実”を知っている人が限られてしまうことにより、関係者間で疑惑が生じた際にそれを払しょくすることが難しいことがあります。

ある介護者の方から伺ったお話をさせていただきますと、

「よかれと思って親の意向をできる限り汲み取り、自分で全部を抱え込んで判断を行ってきたが、親が他のきょうだいや親戚に全然違うことを言っていたようで、周りから親を勝手に老人ホームに”捨てた”とか、 “財産目的だ”とか、いわれのないようなことを言われ、驚きを通り越して呆然としてしまった。」

というようなウソのようなホントの話が起こりうるのです。

このような事態が起こる原因としては、看護・介護を受けている本人の記憶の欠落や被害妄想といった「認知症」の症状に起因する”事実”とは異なった情報が広がったときに収拾がつかなくなる恐れがあり、一旦生じた疑念というものを解決することというものは難しく、ずっと尾を引いてしまうということがあるのです。

早い段階でまわりの人に話をしておくことで、”事実”の共有と”判断”の証人を作り、後の争いを予防しておくことが大事です。

2-3. 専門家や事業者

【目的】 医療や介護、行政の専門家・事業者による「サポート」

ひとりで抱え込んでいるうちは、周囲の方々もあなたに協力したくてもできません。
どのような協力ができるかはあなたが相談をして初めてあなたに必要な選択肢が見つかります。

「専門家」というとハードルが高そうですが、誰でも相談できる窓口があります。
そのひとつとしては、各市区町村に設置されている「地域包括支援センター」です。

“親”が住んでいる地域で、「地域包括支援センター ○○市」とインターネットで検索すれば担当のセンターが簡単に見つかります。

この「地域包括支援センター」は、地域に住む高齢者に関するなんでも相談所という位置づけで設置されており、何か起こってからでなくとも不安があるタイミングでも相談をすることができますので、気軽に問い合わせてみてください。

【参考】 「地域包括支援センター」の名称は地域ごとに異なる場合があるので注意してください

例)東京都23区の場合
東京都千代田区     :高齢者あんしんセンター
東京都中央区/板橋区  :おとしより相談センター
東京都新宿区      :高齢者総合センター
東京都文京区      :高齢者あんしん相談センター
東京都台東区      :高齢者支援総合センター
東京都江東区      :長寿サポートセンター
東京都世田谷区     :あんしんすこやかセンター
東京都豊島区/葛飾区  :高齢者総合相談センター
東京都北区       :高齢者あんしんセンター
東京都練馬区      :高齢者相談センター
東京都江戸川区     :熟年相談室
その他23区(10区)   :地域包括支援センター

そして、サービスの利用により軽くなった”負担”の分、あなたにしかできない親とのコミュニケーションという「寄り添い」の時間を大事にしてください。

ひとりで抱え込まずに、まず「相談」する。これを心がけることが、誰もが不幸にならないための第一歩です。

以上のようにあなたが相談するべき3つの関係先についてその必要性と目的を理解できましたか?
ここで3つの関係先を改めて整理しておきますね。

【ポイント】 あなたが相談するべき3つの関係先

① 上司・同僚・人事担当者
【目的】 休暇・休業や短時間勤務、残業免除の「制度活用」
親・親戚・きょうだい
【目的】 身の回りの世話や費用の「負担分散」
専門家や事業者
【目的】 医療や介護、行政の専門家・事業者による「サポート」

どれか一つ欠けたとしても、あなたが仕事を続けること、そしてあなたが人生を楽しむことが難しくなります。

たかが「相談」、されど「相談」。すべては話してみないと始まりません。後から選択肢があったことに気が付いたとしても後の祭りです。「相談」のハードルは決して高くありません。

なぜなら、親が突然倒れるというような事態は誰にでも起こりうる身近なことだからです。

あなたが置かれた状況は決して特別なことではない、皆さん明日は我が身です。

ぜひ、後悔しないためにも、不幸な人を増やさないためにもまず上記の3つの関係先には必ず「相談」をしてください。

>>>関連記事 「介護の相談は誰にすれば良い?気軽に相談ができる相談先を紹介

3. 家族で話しておきたい!介護を行う3つの役割分担

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役割分担をするべき主なものとして3つあります。
3-1. お金の管理
3-2. 身の回りの世話
3-3. 費用の負担割合

では解説していきます。

3-1. お金の管理

お金の管理は、目的と方法が明確で後の相続争いの原因にもなりかねませんので、「記録」をきちんととることが最も大事な役割です。
一般的には、お金の管理を行う方と身の回りの世話を行う方は同じとなることが多いですので、お金の管理を行う方とそれをチェックする方を別に設定することをおススメします。

なお、実際に行っていた方で素晴らしいと思った事例としては、専用の「家計簿」を作っていた方でした。

この方は、1冊のノートに、
① 日付
② 購入者/支払者
③ 用途及び領収書管理
④ 財産状況(口座状況、預金の入出金状況)
を記録していました。

そして何より素晴らしいやり方だと感じたのが、ノートは実家の親のところにしまっておき、きょうだいが来た時にはいつでも確認できるようにしていたことでした。

いつも「オープン」にしていることで、きょうだい間の信頼は厚く、終末期を迎えた後も相続等でもめたりもせず、今もきょうだい仲は良いとのことでした。

今であれば、家族間で共有できるような ZaimマネーフォワードME など無料で利用できる「家計簿アプリ」もありますので、親の銀行口座やカードなどをすべてアプリに連携させておくとともに、領収書をスマホのカメラで簡単に取り込んでおくこともできます。

そして、それをきょうだい間で実家に行ってノートを見るまでもなく、いつでもアプリで確認することもできるので、財産状況の管理もチェックも簡単にできますので、ぜひ活用してみてください。

3-2. 身の回りの世話

身の回りの世話は、時間的に最も行える方、親としても心おきなくお願いができる方がいいでしょう。

ただ、ひとりだけに押し付けるのではなく、他の人も定期的に訪問し、身の回りの世話を行う体制とすることをおススメします。

>>>関連記事 「親の世話は誰がする?介護をする時に兄弟で話しておくべき5つのこと

3-3. 費用の負担割合

費用の負担割合は、遠方に住んでいる、面倒を見ることができない事情があるなど、他の関係者よりも肉体的・精神的な負担を負うことができない方が多めに負担するというのが一般的です。

たとえば、親が老人ホームに入所していて、月に20万円かかる場合で考えてみます。

家族構成
父親がひとりで老人ホームに入所(母親はすでに逝去)
きょうだいは3人(長男、長女、次男)で、全員既婚。

介護負担
長男が老人ホームに最も近い(徒歩15分)ということもあり、週2-3回訪問して様子を見たり買い物をしたりしている。
長女と次男は遠方に住んでいる(電車で片道2時間以上)ため、3-6ヶ月に1回訪問する程度。

費用負担
【総 額】 20万円/月
【 親  】 10万円/月
【長 男】  2万円/月
【長 女】  4万円/月
【次 男】  4万円/月

この場合、長男が普段の面倒を最もよく見ていることもあり、他のきょうだいは費用面で多めにみることに決めた、という事例です。

なお、一概に距離や訪問回数だけで決められるようなものではないことが多いので、しっかりと関係者間で話し合いをしておくことが大事です。

もちろん、費用負担についての記録もしっかりととっておくこともお忘れなく。

4. まとめ

いかがだったでしょうか?

「親が倒れた」という突然のことから、たて続けに色々な判断を迫られることが多く、多くの選択肢や事前に話し合っておくべきことが見落とされてしまうことがあり、それがために取り返しのつかない後悔をしてしまう恐れがあります。

そのような後悔をしないためにも慌てている時こそ、
・上司・同僚・人事担当者
親・親戚・きょうだい
専門家や事業者

といった方々に「相談」しながら、冷静な判断をしてください。

>>>関連記事 「親の介護は誰が担当?親の介護をする前にしておきたい2つの準備

>>>関連記事 「介護の準備はこれで安心!今から備えておきたい3つの準備

 

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