手すりは介護において高齢者の自立した生活をサポートするための一つの方法です。
適切に手すりを設置することにより高齢者が安全に自力で移動することができるようになります。
高齢者の歩行によって起こる転倒や落下などの危険性が下がり介護者の負担も軽減することができます。
この記事では介護保険を利用した自宅改修の知識と自宅改修しなくても使える手すりを紹介し、あなたにとってどちらが合うか選べるように解説していきます。
目次
1.介護における手すりの役割
手すりの役割は大きく分けて3つあります。
①立ち上がりや階段の上り下りの際の体の支え
ベッドや椅子から立ち上がる、階段の上り下りなどの上下移動の動作は足腰の弱っている高齢者にとって大きな負担となります。
手すりにつかまることで負担を軽減し、高齢者の方が自分で動けるようにサポートしてくれます。
そうすると1人で立ち上がり、階段の昇り降りも安全にできるようになります。
高齢者の方が一人で歩こうというきっかけが増えます。
②1人で歩けるようにするサポート
高齢者は筋力、関節機能の低下により、2本の足を使った自力での歩行が困難になってきます。
手すりにつかまることで、安定した歩行をできるようになります。
そのため高齢者の方の移動の範囲が広がり、できることが増えるので自立した生活への大きなサポートとなってくれます。
③怪我の防止
高齢者の方は
- 足腰が弱くなっている
- 視力の低下により足元が見えずらいなどが原因でバランスを崩しやすく、転倒・転落の危険性が高いです。
衝撃の度合いや打ちどころによっては後遺症が遺ってしまったり、骨折してしまったりします。
手すりにつかまり安定したバランスを得ることで怪我の防止となります。
2.手すりの種類
この章では複数ある手すりの種類と活用シーンについて解説します。
なお、手すりの種類と設置位置によっては、全く使えないものになることが往々にしてあるため、種類や設置位置の決定には、ケアマネに依頼してリハビリや看護師などの専門家に相談して決めることが重要です。
その前提を踏まえたうえで各種類についてみていきましょう。
①I字型手すり
I字型手すりとは床面に対して垂直に設置する縦型の真っすぐな形状の手すりのことです。
主にトイレ・浴室・寝室の出入り口などに設置され高齢者の方が立ったままドアを開け閉めしたり段差を超えるときに姿勢を安定させる目的で使われます。
I型手すりの設置位置は手すりの一番上の部分が肩の高さの位置かその少し上の位置が目安になります。
(出典:https://item.rakuten.co.jp/kenkul/ren529/)
②水平型手すり
水平型手すりとは地面に対して水平に設置する手すりのことです。
中腰の姿勢を補助したり、肘を手すりにおいて移動することができます。
玄関や廊下に設置されることが多いです。
短い距離を歩くための補助や動く際の体の支えになります。
手すりの位置が低すぎると高齢者の方が不安定な姿勢になってしまうので最も使いやすい高さに設置しましょう。
(出典https://item.rakuten.co.jp/krjyusetsu/t113b6/)
③L字型手すり
L字型手すりとはI字型手すりと水平型手すりを組み合わせた手すりのことです。
浴室やトイレ、玄関の上がり框に設置されることが多いです。
設置位置には注意が必要で、誤った場所に設置してしまうと高齢者の方に無理な姿勢を強いさせてしまいます。
I字型は便器先端から200m~300m程度前方が使いやすく水平型は便器上端から220m~250mが適当です。
(出典:https://item.rakuten.co.jp/select-tool/toto-te025/)
④波型手すり
くねくね曲がった波状の手すりのことです。
立ち上がるのに体を引き寄せたり、踏ん張ったりするのに握りやすい角度になっています。
(出典:https://item.rakuten.co.jp/f062014-yamagata/fy18-021/)
⑤可動式手すり
稼働式の手すりは使用しないときに折りたたんでおけるてすりのことです。
折りたたんでしまえるため邪魔にはならないですが、使用するときは高齢者の方が手すりを自分で出さなければいけないというデメリットがあります。
(出典:https://item.rakuten.co.jp/kenkul/ren905/)
⑥据え置き型手すり
据え置き型手すりとは床に置いて使用するタイプの手すりのことです。
手すりを移動させることができるので好きな所に移動させて設置することができます。
しかし、安定しにくい点がデメリットとなります。
(出典:https://item.rakuten.co.jp/importshopaqua/loha/)
3.在宅介護で使える手すり
3-1自宅改修を利用して手すりをつけるには?
自宅改修をして手すりをつけるには費用がかかってしまいます。
しかし、要介護(要支援)認定を受けている被保険者の場合、介護保険の住宅改修制度を利用できます。
自分で取り付けた場合でも手すり・段差解消スロープ購入費の7~9割分が給付されます。
なお、給付の受け取り方は下記の2種類があります
- 償還払い
- 受領委任払い
原則として①償還払いとしての受け取り方になります。
②受領委任払いは自治体により扱い方が全く異なるため各自治体に確認しましょう。
①償還払い
利用者が一旦介護保険サービスの対する費用を全額支払い、その後申請をすることで本来負担するはずだった1割を差し引いた9割りが保険者である市町村から被保険者へ支払われる制度です。
一旦全額払ったお金が9割戻ってくるといったものです。
②受領委任払い
利用者は介護保険サービスに対する費用の1割~3割を事業者に支払い、7割~9割分を利用者からの委任に基づき市が事業者に支払う制度です。
自宅改修までの流れ
- 担当のケアマネージャーに相談
- 見積書を工事会社に依頼
- 市町村の介護窓口に事前申請
- 工事依頼・施行
- 工事費用を工事会社へ支払い
- 市町村の介護窓口に支給申請
- 審査の上、引き取る
*必ず福祉用具の購入や工事施行をする前に3番の「事前申請」を行いましょう。
といった流れになります。
まずは、担当のケアマネージャーに相談しましょう。
3-2改修しなくても使える手すり
改修工事をして手すりをつけるのはちょっと…
という人は簡易手すりというものがあります。
階段の手すりなどが工事で取り付ける必要がありますが、玄関で立ち上がる場合やこたつに入った状態で立ち上がる場合などには簡易手すりでもサポートしてくれるため便利です。
4.手すりをつメリットデメリット・デメリット
手すりをつける上でメリット・デメリット双方あるため、それを解説していきます。
4-1.メリット
介護手すりを設置するメリットは下記の3点です、
- 高齢者の事故予防
- 自立した生活のサポート
- 介護する人への負担の軽減
高齢者は、「トイレから立ち上がる」「服を着替える」といったちょっとした動作でも、バランスを崩して転倒するおそれがあります。手すりの活用は被介護者の事故防止だけでなく、同居人やご家族、介護者の負担軽減にもつながり、安心して暮らすことができるようになります。
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4-2.デメリット
介護手すりを設置するデメリットには次のものがあります。
- 費用が高額になると自己負担額が増えてしまう可能性あり
介護保険を利用したとしても給付金額内だけで全ての改修を終わらせられないことも少なくありません。
5.手すりを選ぶうえでの4ポイント
本人に確認しながら決める
使用される方が一番使いやすい位置かつ握った時の使いやすさが大切です。
そのため本人と話し合いながら決めましょう。
手すりの素材
手すりの素材として主に木・プラスチック・アルミ・ステンレスなど様々な種類があります。
木製は自由に長さをカットできる利点があるため階段などでは手すりを連続して取り付けることができるため安全性が高まります。
また水濡れしやすい場所では樹脂がおすすめです。
このように素材によって特徴が異なるので設置場所によって使い分けましょう。
手すりの高さ
手すりの高さとは床面から手すり上面までの高さのことです。
個人差ありますが、大腿骨大転子の高さに2,3cm加えた高さが使いやすいとされています。
手すりを握る所は本人が立って手を下したときに本人の手首が手すりの高さと同じくらいがちょうどいいと言われています。
手すりの太さ
手すりの太さは直径2.8cm~3.5cmが握りやすい太さと言われています。
目安として本人が握って指先が触れる程度の太さです。
リウマチや麻痺などで握ることが難しい人は楕円に近い形状の手すりもあります。
手すりに肘や手を乗せて移動できます。
6.費用を抑えたい場合は、改修なしで使える手すりがおすすめ
業者に手すりの取り付けで自宅改修を依頼した場合4万円~かかります。
一方、簡易手すりだと5000円前後、上がりかまち用手すりや立ち上がり補助用の手すりだと1万円~2.5万円です。
そのため費用を安く抑えたい。という希望がある場合は改修なしで使える簡易手すりがおすすめです。
7.まとめ
自宅改修で取り付ける手すりは費用がかかってしまいますが、介護保険の住宅改修制度で7~9割給付されます。
しかし、上限があるので簡易手すりなどと組み合わせたり、手すりにかける予算などと考えてどちらが良いのか考えるといいかもしれません。
費用をかけて手すりをつけるため、効果的な設置ができるよう本人の状況や希望を踏まえて専門家と相談しながら設置しましょう。