「認知症の親の介護をしなければいけないけど不安ばかり…」
あなたは今こんな不安に押しつぶされそうではないですか?
やったことのない介護、しかも認知症の介護なんてどうしたらいいかわからない…
というあなたの抱える悩みは他の多くの方も抱えている悩みです。
現在の日本では、年々高齢者の認知症患者数は増えています。
内閣府が出しているデータによると、65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計は、平成24(2012)年は認知症患者数が462万人とされています。
また、65歳以上の高齢者の7人に1人(有病率15.0%)が認知症患者割合という現状ですが、2025年には約700万人、5人に1人が認知症になると見込まれています。
このことから、あなたの悩みは多くの人が同じ悩みを抱えている、また経験し乗り越えてきた悩みであることがわかっていただけると思います。
この記事では認知症の介護において、必要な知識や考え方を徹底解説していきます。
前半ではそもそも認知症とは?を解説し、心構えを解説させていただきました。
後半部分は、参考例となるケアプランと介護においての注意点を説明させていただきました。
(すでに認知症で介護始めている方は2章から読み始めてみてください)
この記事をよむことで、認知症に対しての理解を深めどのように介護をおこなっていくのか?という不安を解消することができるようになっています。
是非この記事を参考に、認知症の介護に向き合っていってください。
目次
1.介護における認知症2つの症状
まずはこの章で認知症になった人にどんな症状が現れるか知っておきましょう。
認知症には、認知症の直接の原因である「脳の細胞が壊れる」ことで起こる「中核症状」という症状と、
「周辺症状」といわれる2種類の症状があります。
1-1中核症状とは「脳の細胞が壊れる」ことで起こる症状のこと
中核症状は、認知症の直接原因である「脳の細胞が壊れる」ことで起こる症状です。
中核症状には主に、以下の3つの不可解な行動により引き起こされます。
- 記憶障害が起こる
認知症の症状で、まず出てくる障害が記憶障害です。普通の「物忘れ」は記憶の一部が抜け落ちているだけなので、ヒントがあれば思い出すこともあります。
しかし、記憶障害がおこることで、昔のことや、つい最近あったことが、記憶かからすっぽりと抜け落ちてしまいます。記憶障害がおこれば、思い出すことが不可能なことが殆どです。
- 見当障害が起こる
見当障害が引き起こされることで、日時・場所や方向などがわからない、また今がいつ、自分がどこにいるのかがわからなくなります。
知っているはずの人を見ても、どんな人だったか、まわりの人間と自分の関係がわからなくなってしまうという症状がみられます。
- 判断力に障害が起こる
中核症状が起きると、判断力に障害が起き、物の違いや共通点などがわからなくなります。また、自分の行動が正しいかどうかも判断ができなくなっていきます。
買い物にいっても「ネギと大根の違いがわからない」「季節にあえあせて服が選べなくなる」「お金を払わずに万引きをしてしまう」「交通ルールがわからなくなり事故にあいやすくなる」というようなものが挙げられます。
1-2.周辺症状
周辺症状は、かつて問題行動と言われていたものです。
介護者や家族を驚かせたり悩ませたりするのが、この周辺症状です。介護に対する負担感や、ストレスが高まる要因もこの周辺症状にあります。しかし、この周辺状況は、介護者にとっては理解できなくても認知症患者の立場からすれば、必ずそれなりの理由があってのことです。
本人がもともと持ち合わせている性格や、これまで生きてきた性格の歴史や現在おかれている環境が大きく作用します。
そのため、症状を分類したりすることはできますが、これから紹介する症状がいくつもでてしまうという場合があります。症状の組み合わせのパターンが多いため、全く同じ症状の方はいないと言われています。
そのため対応のマニュアル化が難しくなっております。しかし、少しでも症状の例を知っておくことで、事前に対策を立てることは可能です。なので、これから周辺症状で困る5つの症状と行動をご紹介します。
周辺症状で困る5つの症状・行動
- 徘徊をする
自分のいる場所がわからないので、1人で歩いていてもとの場所に戻って来られなくなる症状です。
本人がいこうとしている場所に、自力でたどり着くことはまずありません。
さまよい歩いた果てに、脱水や過労で倒れたり、転倒事故や交通事故にあって発見されることがあります。
- 「物盗られ妄想」が起こる
認知症が進行するとい、いつどこに何をしまったかがわからなくなります。さらにはしまい込んだこと自体も忘れてしまいます。お金・通帳・貴重品を失くしたと騒ぎ、タンスや引き出しの中を1日中探してしまったりする。
見つからず被害者という気持ちがでてくると、「誰かが盗んだのではないか?」と一緒に住む家族や介護者を疑ってしまうことになります。
- 幻覚や幻聴が起こる
いきなり誰かが部屋にはいってくる、ベッドに電気が流れているなどの幻覚をリアルに見えたり感じたりします。
重要なポイントは「その幻覚の内容をいきなり否定しない・肯定もしない」という点です。
- 暴力・暴言介護拒否をする
介護に対する不満や不安、いらだちが募ってくるとこれまでのように理性で抑えることができなくなり、暴力・暴言となってあらわれることがあります。認知症の男性の場合は、標的となった介護者が危険にさらされることもあります。
- 昼夜逆転が起こる
高齢者になると一般的に眠りが浅くなります。加えて認知症の人は、睡眠や覚醒などの体内時計の調節に関わる神経伝達物質の量が変化することで、眠りが不安定になる傾向があります。夜間の睡眠量が減り、日中は逆に眠くなってしまう昼夜逆転が起きやすくなります。
以上が認知症の方に現れる代表的な症状です。
内容を見ると不安になるかもしれませんが、「この症状が起きるかもしれない」と心構えておくだけでも対応の仕方が変わってきます。是非頭に知識としていれておき、「この症状が起きたらどうするか?」をシミュレーションしてみましょう。
2.認知症介護を上手に行う際に重要な3つのポイント
認知症には主に2つの症状に分かれるのがわかったと思います。
それでは次に、症状を知った上で、介護を行う上で重要な3つのポイントを説明していきます。
2-1.「本人を尊重する」
記憶をなくしても、感情やプライドといったものは決してなくなっていません。
また認知症の方は記憶を失っているので、ただでさえ不安になります。介護者が本人を否定したりできないことを責めたりすると、怒りが増し症状が悪化してしまいます。
そこでまずは日常生活を送る上で不安材料をリストアップして、「できないこと」を補える環境作りを心がけましょう。そして「できること」はなるべくやってもらいましょう。例えばですが、下記のような表を作ってみてください。
できる事 | できない事 |
食事をしたことを記憶している | 道を覚える |
衣服を自分で毎日選べる | 家に1人で帰る |
掃除機をかける | 車の運転 |
歯磨きすることができる | 料理を作る |
リモコン操作ができる | 自分の置いたものの場所を覚える |
上記の表のように、簡単にでもいいのでノートにまとめて日々「できること」と「できないこと」を更新していきましょう。
そしてできることを積極的にやってもらうことで、症状の悪化を遅くしたり防ぐことに繋がります。
また、このノートを作っていく時に、介護者の方やご家族は「できないこと」に気づく場面が必ずあります。
そんな時に「叱る」「怒る」「愚痴をいう」などといった、マイナスな行為をしてしまうはやめましょう。なぜなら先ほども話しましたが、感情やプライドは消えていないからです。このことを念頭においておきましょう。
上記の内容は、本人を尊重し、症状を安定させることにもつながります。
2-2.「なじみの環境を用意する」
認知症の人は、新しいことに対応するのが苦手です。そのため、なるべくこれまでと同じなじみの場所で、これまで通りのものを使って、これまで通りの人間関係の中で暮らすのがよいとされています。
しかし、現実的には認知症になったことで、施設に入所したり外部の介護サービスの人が自宅を訪れることも必要になります。
施設に入所する際に可能であれば、使い慣れた家具や身の回りの品物、たとえば茶碗やコップや箸を使えるよう工夫しましょう。細かいことかもしれませんが、こういった環境を整えていくことは、介護を行なっていく上で大切になります。
また、外部スタッフもなるべく安定した人間関係を築けるところを選びましょう。外部のスタッフの方も十人十色ですので、要介護者と合う合わないがでてくるからです。合わないと思ったならスタッフの交代を申し出てみることや、利用施設の変更を検討していきましょう。
2-3.「行動には意味のあることを理解する」
認知症の要介護者の行動で、とくに周囲の人をとまどわせるのが徘徊です。知らないうちに外にでてしまい、どこにいったのかわからない。探し回ったあげく思わぬ場所で発見されるというようなことは、認知症の人にはありがちです。徘徊は、誰かを探していたり、過去の習慣の記憶を思い出して、その場所にいこうとしているからです。
また、介護者にむかって何かを盗んだと身に覚えのないことを言われることもありますが、これは大切な物をどこかにしまい忘れてしまうことから起こる内容です。この時、介護者のことも忘れている場合がありますので、見知らぬ人が自分のものを盗んだと考えてしまうわけです。今説明したように、認知症の人の行動は意味のあることを理解して接しましょう。
3.認知症介護の身体的負担を減らせるケアプランをご紹介
それではここからは、簡単にですがケアプランをご紹介していきます。
3-1 ケアプラン例をご紹介
- 1日のうち半日ほど働いている方へ
認知症の人から目を離してしまうのはとても危険が伴います。たとえ半日でも1人にしてしまうのはよくありません。
上記の表を見ていただけたらわかるように、認知症の方の行方不明者の人数は年々増加しています。
このことからも、半日目を離しただけでどこかへ出かけてしまい行方不明になってしまうことがあります。
そのため、仕事をしている間使えるデイサービスを利用するか、ホームヘルパーの方に頼むのが理想的です。
前もって予定が決まっている、定期で仕事がある場合などはあらかじめサービスの利用を申し込んでおきましょう。唐突な申し込みは受け入れてくれない場合もあります。その際に予定を優先するか、介護を優先するか迷ってしまう、家族や親戚内で頼める人がいないか声をかけまくるといった、余計な負担がかかってしまう場合もあります。計画的なサービスの利用を目指しましょう。
- 1日中働いている方へ
次に一日中働いている方のケアプランを紹介していきます
一日中働いている方には、施設介護または1日通える施設に通うことをお勧めします。
先ほどもお話ししましたが、認知症の要介護者を1人にするのはよくありません。施設に拒絶反応を示す場合ももちろんありますが、施設選び等でできる限り不安感をなくせるようにしましょう。
理由として「1日のうち半分のほど働いている方」に向けたケアプランでもお話しましたが、丸々1日要介護者から目を話してしまうと、1人で外に出てしまい行方不明になってしまったり、家に帰ってきたらものが散乱しまるで空き巣が入ったあとのようになってしまうことがあるからです。
実際に家に1日いることが少なく、毎日の介護が難しいという方には、「グループホーム」という介護施設をおすすめします。「グループホーム」は簡単に説明すると、認知症の方を対象にした施設です。詳しく知りたい方は以下のページを参考にしてください。
認知症の方専門の施設「グループホーム」についてはこちらから
3-2 働いている方には介護休業を勧めます
働いている方で、自分ができる限り要介護者の側にいたいという方には介護休業という制度をお勧めします。
本記事でお話ししたように、「なじみの環境を用意する」という点で自宅で家族に介護されるのが認知症の方の不安を減らすことができます。働いているから無理だ…と諦めるのではなく介護休業という制度を使うことを検討してみてください。
介護休業について詳しく知りたい方はこちらで解説しております。
http://carers-navi.com/restsystem
4.認知症介護をする際は暴力・暴言に注意する
最後に認知症介護をする上で注意しておきたいことを、復習もかねてお話します。
認知症介護で注意することは、4章のタイトルにもなっていますが「暴力・暴言」「愚痴を吐く」というマイナスなことをしないことです。「思い通りにいかない」「言うことをきいてくれない」ことが発生してしまうのは、認知症の方の介護では特に仕方のないことです。ただ思い通りにいかないからといって、「暴力・暴言」は関係を悪化させ介護の質を下げるだけです。
認知症の方にはたとえ記憶がほとんどなくなってしまったとしても、感情やプライドというものは存在します。そのため、自分が怒られていることや暴力をふるわれていることは、しっかりわかっていますし当然傷ついてしまいます。そうなると逆に要介護者の方が暴力をふるってしまったり、症状が悪化してしまうなどのマイナスのことがおきてしまいます。
どんなことがあっても「暴力・暴言」といった行為は避けましょう。認知症の方の介護において最も大切なことは「本人を尊重する」ことです。この記事の2−1でもお話した内容を介護に取り入れて、介護の質を高めていってください。
認知症の暴力・暴言はどう対応すればいい?7つの要因と5つの予防策
5.まとめ
いかがだったでしょうか。
認知症の介護は、ただの介護とは違うことを理解していただけたと思います。
介護をする際は、今回紹介した3つのポイントを念頭にいれて介護をしてあげてください。
もし質問、悩み、不安などあればコメントしていただければ介護の専門のスタッフが対応いたします。お気軽にコメントください。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。