介護において「尊厳」は重要視されますが、実際に介護の現場で要介護者と関わる中で、どのように介護をすれば尊厳を守ることができるでしょうか?
介護における尊厳は簡単には理解することができず、しっかりと尊厳について理解を深める必要があります。
そこで本記事では、介護における尊厳の概要と重視される理由、介護の三原則について詳しく解説します。
介護における尊厳を理解したい方は最後まで読んでみてください。
目次
介護における「尊厳」とは?
そもそも「尊厳」という言葉は”尊く、おごそかで、犯してはならないこと”という曖昧な意味合いの強い言葉です。
そのため、一般的に浸透している尊厳の明確な定義はありません。
介護における尊厳についても明確な定義は定められていませんが、主に「介護の三原則」に基づいた生活をすることを尊厳として定義していることが多いです。
介護において尊厳が重視される理由
介護において尊厳が重視される理由はさまざまですが、大きな理由のひとつとして挙げられるのが、基本的人権に基づいた法律によって尊厳が定められているからです。
尊厳について定められている法律はさまざまですが、介護における尊厳について定められている法律は「認知症基本法案」や「介護保険法」が挙げられます。
それぞれの法律の内容について以下で解説します。
認知症基本法案の内容
衆議院が定めた「認知症基本法案」では、尊厳について以下のように定められています。
”認知症の予防等を推進しながら、認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される社会の実現を図る”(出典:衆議院「認知症基本法案」)
介護保険法の内容
厚生労働省が定めている「介護保険法」では、尊厳について以下のように定められています。
”入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができる”(出典:厚生労働省「介護保険法」)
介護の三原則とは?
介護における尊厳を守ることの大前提となる介護の三原則は以下の通りです。
- 生活の継続性
- 自己決定の尊重
- 残存能力の活用
介護の三原則を理解することは、介護において要介護者の尊厳を守るために非常に重要な役割を持っています。
それでは、それぞれの項目について、以下で詳しく解説します。
介護の三原則①:生活の継続性
生活の継続性とは、要介護者が生活環境や生活リズムを大きく変えることなく、これまでの生活を継続できるようにサポートすることを指します。
例えば、介護施設に入居するタイミングで、今まで自宅で使用していた食器や家具などを持ち込んで、今まで通りの雰囲気を創るよう配慮することなどが挙げられます。
生活環境や生活リズムを大きく変えてしまうと尊厳が失われるだけではなく、大きなストレスを感じてしまい、認知症の悪化やほかの病気の引き金になってしまうこともあります。
介護の三原則②:自己決定の尊重
自己決定の尊重とは、要介護者が考える暮らし方や生き方を尊重してサポートすることを指します。
例えば、夜ご飯に何を食べるのか、軽い運動をしたい、この本が読みたいなどの小さな自己決定を尊重することです。
介護をしていると「〇〇を食べて」や「〇〇をして」などの強制をしてしまいがちですが、ネガティブな思考になってしまいます。
自己決定を尊重することで、自分の意思で生活できているという小さな達成感を積み重ねることができます。
介護の三原則③:残存能力の活用
残存能力の活用とは、要介護者に残されている能力を最大限使用して、要介護者ができない部分のみを介護職員がサポートすることを指します。
要介護者の中にはさまざまな症状の方が存在しており、立って歩くのが難しい方もいれば、両手が自由に使えない方もいます。
このようにさまざまな症状に合わせて残存能力を活用しながら介護することが大切です。
例えば、杖があれば自立して歩行できるにも関わらず、介護のしやすさから車椅子を利用したりなど、残存能力を活用せずに介護してしまうと「自分はもう何もできない」と尊厳を傷つけてしまうことに繋がります。
介護では尊厳を尊重しましょう
本記事では、介護における尊厳の概要と重視される理由、介護の三原則について詳しく解説しました。
介護において尊厳を尊重することは要介護者が人として正しく生活するために必要なことはもちろん、コミュニケーションを正しく取るためやポジティブに生活するために必要な基本的な考えとなります。
ぜひ本記事を参考にして介護における尊厳について理解を深めてみてください。