家族信託って何だろう?
認知症になってからも家族信託はできるの?
このような疑問を抱えているのではないでしょうか?
家族信託とは、加齢や病気により自分の財産を管理できなくなった時に備え、家族が柔軟に資産の管理を行えるようにする制度です。
この制度は、2007年に施行された比較的新しい制度です。
記事では、家族信託の仕組みやメリット・デメリット、成年後見人制度との違いを解説します。
目次
1.家族信託とは
家族信託とは、加齢や病気により自分の財産を管理できなくなった時に備え、家族が柔軟に資産管理を行えるようにする制度です。
正式には民事信託という制度で、家族以外も利用可能ですが、大抵の場合は家族が利用するため、家族信託と呼ばれています。
1-1.家族信託の仕組み
家族信託では、「委託者」、「受託者」、「受益者」の3者が当事者となります。
①委託者
委託者とは、家族に財産管理をお願いする人。
②受託者
受託者とは、財産管理をする人。
③受益者
受益者とは、財産管理で出た利益を受け取る人。
委託者は、財産管理を受託者に任せ、受託者は財産管理を行います。
そして、財産管理で利益が出た場合は、受益者がその利益を得ます。
多くの場合は、委託者と受益者が同じ人になります。
1-2.認知症になってからも家族信託はできる?
家族信託は、どんな状態でも行うことができるわけではありません。
認知症発症後でも行うことは可能ですが、原則、認知症患者は家族信託を行えないです。
なぜなら、契約行為は、判断力のない人は行えないからです。
そのため、認知症=契約できないというわけではなく、判断力がない=契約できないことになります。
認知症であっても、判断力がある軽度の症状であれば可能です。
1-3.家族信託のメリットとデメリット
1-3-1.家族信託のメリット
①本人の判断能力や病気に影響されることなく財産管理が可能
家族信託を行っていると、本人の意思確認手続きは本人に対して行われません。
そのため、ご本人の判断能力が低下してしまった場合も、財産管理が可能になります。
②遺言の代わりになる
家族信託には、遺言としての機能もあります。
③相続の順位を決めることができる
契約書作成時にご本人が相続の順位を決めることができます。
④成年後見制度より柔軟な財産管理ができる
成年後見人制度では、財産の維持を目的としていますが、家族信託は将来の備えを目的としているので、柔軟に財産管理が可能です。
1-3-2.家族信託のデメリット
①節税効果が少ない
節税することが第一の目的であれば、遺言書など他の手段を使ったほうが効果が大きくなることが多いです。
②新しい制度のため、精通している専門家が少ない
2007年9月30日に施行された比較的新しい制度のため、先例や裁判の判例の数が少なく、情報が限られています。
そのため、家族信託に精通している専門家が少ない現状があります。
③遺言書は別で必要
家族信託は、遺言の機能を持ちますが、遺言書ではありません。
家族信託の契約書に記載されていない財産については、遺言書で承継先を決める必要があります。
家族信託を行っても遺言書はしっかりと残しておきましょう。
2.認知症発症後は成年後見人制度
成年後見制度とは、認知症により判断能力が低下した人や、知的障害により適切な財産保護がでできない方をサポートする制度です。
第三者や親類がその財産を管理することにより、不当な契約から財産を守る目的で用いられます。
一般的には、財産を守る人を「後見人」、守られる人を「被後見人」と呼びます。
2-1. 法定後見のメリット
法定後見のメリットは5つあります。
①家庭裁判所において、適切と認められた人だけが成年後見人に選任されます。逆に言えば、適切だと認められない人は成年後見人にはならないため安心です。
②被後見人の判断能力がなくても、必要な手続きが可能です。
③被後見人の財産管理を適切に行えます。
④相続が発生した際にも財産把握が容易です。
⑤公的な地位の証明になります。契約内容が公的書類に登記されるためです。
2-2. 法定後見のデメリット
法定後見のデメリットも3つ押さえておきましょう。
①手続きに最低でも半年の時間が必要です。
②高額な費用がかかります。
③被後見人が選挙権を失います。
3.表でわかる家族信託と成年後見人制度の違い
3-1.役割
家族信託は、将来のために行う一方で、成年後見制度は、現状のために行います。
家族信託は、生前に死後の財産の継承を決める契約ですが、成年後見制度は、支援が必要となった場合に契約をします。
3-2.財産管理
家族信託は、目的の範囲内で自由に財産の管理・処分が可能です
しかし、成年後見制度は、ご本人の利益のためにある制度のため、財産管理に制限がかかります。
3-3.財産管理者の権限
家族信託は、信託契約によって定められた権限によって範囲や対象が決まります。
一方の成年後見制度は、全財産に権限が与えられます。
3-4.期間
家族信託は、期間を設定できますが、成年後見制度は期間を設定できません。
家族信託 | 成年後見人制度 | |
役割 | 将来の備え | 現状の不自由 |
財産管理 | 目的の範囲内で自由 | 制限あり |
財産管理者の権限 | 契約によって自由 | 全財産 |
期間 | 契約によって自由 | 一生涯 |
4.家族信託の手続きについて
4-1.信託契約を締結する
まずは、家族信託の内容について取り決めを行い、信託契約書を作成します。
財産の範囲や財産の管理方法、契約期間などを定めます。
契約を結ぶ際は、家族全員が納得するまで話し合いましょう。
また、公証役場で公証することで、トラブルを防げます。
4-2.信託用の口座を開設する
続いて、受託者は、財産管理を行うための口座を開設しましょう。
必ず必要なものではありませんが、分別管理義務があるため「受託財産用の口座」と「受託者の口座」は分けておくと便利です。
大手信託銀行では、信託口口座という家族信託に適した口座を開設できます。
4-3.運用開始
口座の開設が終わったら、受託者による財産管理が開始します。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
家族信託を行えば、ご本人の判断能力や病気に影響されることなく財産管理が可能になります。
ただし、家族信託を行う際は、内容を家族全員が納得するまで話し合いましょう。
トラブルを避けるためにも、司法書士や弁護士などの法律家からアドバイスを受けることをおすすめします。