「親が、約束をすっぽかしてしまう」
「病院の受診日を忘れてしまう」
このような悩みを抱えていませんか?
それは、認知症の症状の一つ、見当識障害が原因かもしれません。
見当識障害は、早期受診をしたり、適切な対応により進行を遅らせられます。
この記事では、見当識障害の種類から、対応方法、治療法について紹介します。
1.見当識障害とは、認知症の中核症状の一つ
見当識障害は、認知症の中核症状の一つです。
見当識とは、時刻や日付、場所、周囲の状況などを判断する能力であり、その能力が低下するのが見当識障害といいます。
原因は、アルツハイマー病や脳が損傷する高次脳機能障害、認知症、睡眠障害などです。
1-1.見当識障害の症状
見当識障害の症状には、時間・場所・人物の3種類があります。
1-1-1.時間がわからない
時間の見当識障害では、年月日や季節など、時間感覚がわからなくなります。
日付や時間を間違えることに加え、季節や朝・昼・夜の認識がわからなくなる症状です。
1-1-2.場所がわからない
場所の見当識障害では、道順がわからなくなり、場所への認識も薄れます。
そのため、外出すると自分がいる場所がわからず、家に帰ることが困難になる症状です。
1-1-3.人物がわからない
症状が進んでいくと、家族や親戚、友人など人物の認識ができなくなります。
見覚えがある顔でも、相手と自分の関係を思い出せません。
1-2.見当識障害の進行
見当識障害で現れる症状の順番は、時間→場所→人物の順番です。
認知症の初期のころから現れ、ゆっくり進行します。
1-3.見当識障害による日常でのトラブル
見当識障害になると、生活に支障をきたします。
症状別の生活への影響は、以下の通りです。
・時間:夏なのに暖房をつける。冬なのに冷房をつける。夜中なのに朝だと思い活動する。季節に合わない服装をする。
・場所:トイレやお風呂にいけなくなる。外出したら自分の家に戻れなく、徘徊する。
・人物:コミュニケーションが困難になる。
2.対応方法
見当識障害の対応方法について紹介します。
2-1.症状別の対応方法
まずは、「時間・場所・人物」の症状それぞれに対する対応方法です。
2-1-1.時間がわからない場合
時間がわからない場合、カレンダーに今日の日付に印をつけましょう。
そして、今日の日付を声に出してもらうことで、現在の日時を確認する習慣をつけます、
また、介護保険サービスを利用し、病院受診やデイサービスの日時を一緒に確認することなどをヘルパーさんにお願いすることが可能です。
2-1-2.場所がわからない場合
場所がわからない場合、家の道順をわかりやすくしましょう。
例えばトイレに張り紙をしたり、道順を矢印で示す、一緒にトイレに行くことで失禁を防ぎます。
また、外出する際はひとりで行かないよう、誰かが同行するのも大切です。
家族の同行が難しい場合は、外出支援サービスの利用がおすすめです。
2-1-3.人物がわからない場合
人物がわからない場合、自分から名乗りましょう。
また、アルバムを見て、写真は誰が写っていて、いつ撮ったものかなど話をして思い出を引き出します。
2-2.周りの人の接し方
見当識障害では、否定したり試すことは本人にとってストレスです。
ここでは、接し方について紹介します。
2-2-1.症状であることを理解する
まず、症状であることを理解しましょう。
見当識障害によって、約束を忘れてしまったり、失禁したりすることがあります。
困らせたくてやっているわけではないので、症状だと理解し振り回されないのが大切です。
2-2-2.間違いを責めない
見当識障害は、自覚をできません。
そのため、間違いがあっても、なぜ怒られているか理解が難しく、混乱してしまいます。
このことで、認知症の症状が進行する可能性があります。
もし、感情が高ぶってしまったり、怒りが押し寄せてきたときは、距離をとり冷静になりましょう。
2-3.病院を受診する
時間感覚がわからない、場所がわからないなど、見当識障害のような症状が現れたら、早めに病院に行きましょう。
認知症の診断が出た場合、ケアマネジャーと、症状に合わせた対応を相談できます。
3.見当識障害の予防と治療法
3-1.3つの予防方法
3-1-1.カレンダー、時計の使用
カレンダーや時計を上手に利用することで、進行を止めたり、遅らせられます。
例えば、見やすい大きめなカレンダーを使用し、1日のスケジュールを記入するなど、規則正しい生活を心がけましょう。
また、時計を使いながら、「もうお昼ですね」「もう寝る時間です」など、時間を意識させることも大切です。
3-1-2.リハビリで気分転換
家にばかりいると、脳への刺激が減り、認知症の進行が早まる場合があります。
散歩や運動をすることで、体へのリハビリにつながる他、気分転換にもなります。
3-1-3.認知症の予防
見当識障害は、認知症の中核症状の一つであるように、認知症と関わりが深いです。
そのため、食事や適度な運動を行うなど、認知症の予防をすることで、見当識障害の予防にも繋がります。
>>>認知症予防についての記事はこちら
3-2. 治療法
見当識障害の治療法としては、薬物療法とリアリティ・オリエンテーションの2つがあります。
3-2-1. 薬物療法
見当識障害の最大の原因は、認知症です。
そのため、認知症の治療を早めに開始しましょう。
アルツハイマー薬は神経細胞の流れを良くすることで症状の改善を図るため、早期の治療であればあるほど改善する可能性は高くなります。
3-2-2.リアリティオリエンテーション
見当識障害の不安を和らげ、安心した生活を送る方法として、リアリティ・オリエンテーションがあります。
リアリティ・オリエンテーションの種類は2つです。
①24時間リアリティ・オリエンテーション
日常生活の会話の中で、季節や気候、行事、時間を取り入れた会話をします。
そうすることで、現在の状況を意識してもらいます。
(例)「桜が綺麗な春ですね」
「今日は12月25日だから、クリスマスですね」
「21時なので、もう寝る時間ですね」
②クラスルームリアリティ・オリエンテーション
少人数で集まり、進行役のスタッフが名前や日時、場所、予定を確認する方法です。
少人数なので、コミュニケーションをとることで気持ちを共有できます。
見当識障害は、自分の状況を理解できず、混乱におちいる可能性があります。
会話の中で情報提供することで、混乱を和らげ認知症の進行を遅らせる効果があるのです。
4.まとめ
いかがだったでしょうか。
見当識障害は、時間、場所、人物の順番で進行していきます。
カレンダーや時計を活用したり、散歩をして進行を防ぎましょう。
また、病院へ診断を受けに行き、専門家と共に症状にあった適切な対応をするのが大切です。