「薬を飲むのを拒否される」
「さっきは『あとで飲む』と言っていたのに、忘れて飲んでいない」
そういった悩みを抱えていませんか?
介護において、薬の管理は不安な要素の一つ。
単純な物忘れや認知症の影響で、服用を忘れたり重複して服用したりすることがあります。
しかし用量や用法を守って薬を服用しないと、体に悪影響となることも。
そういった時に重要なのが、「服薬管理」です。
この記事では、服薬管理についてや服薬管理のよくある問題、そして服薬管理の工夫を紹介します。
この記事を参考に、本人・介護者両方にとって負担のない服薬管理を目指しましょう。
1.服薬管理とは
服薬管理とは、薬の服用者が決められた時間と用量を守って薬を服用し、服薬状況を主治医に報告するものです。
服薬管理をする人は薬を振り分けたり、残薬数のチェックをしたりします。
2.認知症と服薬管理
認知症は脳の神経細胞が破壊・減少し、日常生活が正常に送れない状態になることをいいます。
2025年には、65歳以上の5人に1人が認知症となる推定もでています。https://www.tr.mufg.jp/shisan/mamori/dementia/02.html#:~:text=65%E6%AD%B3%E4%BB%A5%E4%B8%8A%E3%81%AE%E9%AB%98%E9%BD%A2,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E6%8E%A8%E8%A8%88%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
日常生活が送れない状態とは、記憶力や学習力、理解力、判断力などの知能低下によってもたらされる生活障害のことです。
そのことを考えると、認知症の人のほとんどが服薬管理の問題に直面すると言えるでしょう。
3.認知症の原則
認知症の人を介護するにあたり、原則が2つあるので紹介します。
一つ目は、「記憶になければ本人にとっては事実でないこと」です。
例えば、ついさっき夕飯を一緒に食べたのに「晩御飯はまだ?」と尋ねてくる場合があるでしょう。
本人にとっては、「何を食べたか」だけではなく、「夕飯を食べた」という行為自体を忘れてしまっています。
二つ目は、「本人が思ったことは本人にとっては絶対的な事実であること」です。
例えば、まだ薬を飲んでいないのに、「ついさっき薬を飲んだ」と思い込むというようなことです。
3-1. 認知症の服薬管理でよくある問題
認知症の人は、行なった行為自体を忘れてしまったり、逆に思い込んだりします。
ここからは、認知症の人によく見られる服薬管理の問題を3つ紹介します。
3-1-1. 医師の指示通りに服薬させられるか
服薬管理をする人が、医師の指示通りに用法や用量を守って服薬させられるかという問題があります。
コンプライアンスにも関わる問題であり、注意が必要です。
3-1-2. 薬を飲んだことを忘れる
「本人が薬を飲んだことを忘れる」ことも認知症の服薬管理での問題です。
これが問題になる理由は、飲んだことを忘れてもう一度服用したいと要求してくることにあります。
本人は「まだ服用していない」と事実として捉えているため、納得させるのが難しいです。
3-1-3. 服薬拒否
さらにあげられるのは、薬の服用を拒否する問題です。
薬自体を忘れてしまったり、これは自分の薬ではないと言って頑なに拒否することもあります。
4.服薬管理は看護師にお願いするべき?
自分で飲む薬を、自分で管理することとプロにお願いすること、どちらが良いのでしょうか?
ここからは、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
4-1. 看護師による服薬管理のメリット
看護師は専門知識を持っているため、飲み忘れを防ぐことができます。
一人暮らしの高齢者には特に、看護師による服薬管理がおすすめです。
4-2. 看護師による服薬管理のデメリット
本人ができることを看護師に任せることで、自主性を奪ったり、自分でできることが減ったりするデメリットがあります。
「基本的には自分でできるが、忘れることが不安」という場合には、看護師にどの程度任せるか、その裁量を話し合うこともおすすめです。
4-3. 本人による服薬管理のメリット
自分でできることは自分で対応することで、自分で自分の生活をこなせる期間も長くなります。
特に、家族と同居されている場合などには、家族のサポートを借りて飲み忘れを防ぐ等の工夫で、本人が管理するのが良いでしょう。
4-4. 本人による服薬管理のデメリット
家族や看護師がサポートするとはいえ、基本的に本人が管理するとなると、服用を忘れてしまうことがデメリットでしょう。
薬の服用をできるだけ忘れないために、次の章で服薬管理の工夫を紹介します。
5.服薬管理の工夫
5-1. 効率化
薬の数や種類が多いと、服薬管理も大変です。
用量と用法を守って確実に服用してもらうために、服用管理を効率する工夫を3つ紹介します。
5-1-1. 一包化
一包化とは、飲むタイミングごとに薬をまとめて包装してもらうことです。
複数の種類の薬を服用する場合は、本人だけでなく周囲の人たちの混乱を招くことも。
一包化することは、薬の飲み忘れや飲み間違いの予防にも繋がります。
さらに、薬の管理も楽になるメリットもあります。
一包化を希望する場合は、まずは医師に相談しましょう。
5-1-2. カレンダー利用
普段使用しているカレンダーに書き込んだり、薬用のカレンダーを作ってはいかがでしょうか。
カレンダーを利用することで、服用すべき薬を一目で確認できます。
さらに、カレンダーに薬の包装を直接貼り付けておく方法もあります。
飲んだかどうかの確認をスムーズに行うことができ、非常に便利です。
5-1-3. 紙に書く
見やすい位置に「薬を飲む」というメモを置くのもおすすめです。
例えば、食前の薬であれば食卓の上に、食後の薬であればお茶の間の机の上に置くなどの工夫ができます。
5-2. 見直し
現在服用している薬を効率的に服用するだけではなく、時には薬そのものを見直すと良いでしょう。
薬の種類や量を調整することで、飲みやすくなる可能性もあります。
5-2-1. 服用しやすい形のものにしてもらう
錠剤タイプの薬が飲みにくい場合には、粉薬や塗り薬に変更できることもあります。
現在服用している薬の一部だけでも、薬の形を変えることで服用の負担を減らせるでしょう。
まずは医師に相談してみましょう。
5-2-2. 最低限必要な薬に絞る
たくさんの種類の薬を服用するのは負担が大きいもの。
そういった場合には、医師に相談し、どうしても必要な薬に絞ってもらうことも可能です。
薬は、その相互作用なども考えて処方されているため、決して自己判断で減らしてはいけません。
まずは医師に相談してみましょう。
5-3. 周囲のサポート
服薬管理の工夫は薬自体に止まらず、その他にも多くあります。
5-3-1. 電話や声かけ
薬を服用してほしいタイミングで周囲の人が声をかけることも服薬管理の工夫の一つ。
本人と家族が同居している場合には、声をかけるようにしましょう。
遠方に住んでいて直接声がかけられない場合には、電話なども利用するようにしましょう。
5-3-2. 居宅療養管理指導または在宅患者訪問薬剤管理指導の利用
居宅療養管理指導(薬剤師)と在宅患者訪問薬剤管理指導とは、どちらも主治医の指示を受けた薬剤師が自宅を訪問する制度のことです。
居宅療養管理指導には介護保険、在宅患者訪問薬剤管理指導には、医療保険が適用されます。
要介護・要支援認定を受けている場合は、自動的に介護保険が適用され居宅療養管理指導を受けることとなります。
どちらも適切な服薬指導はもちろんのこと、薬の服用状況を主治医に報告してもらえます。
服用状況を主治医に報告してもらえることで、薬の在庫調整や今後の治療方針を立てやすくなります。
5-3-3. デイサービス利用時に服用
デイサービスを利用している人は、デイサービス利用時に服用することもできます。
デイサービスを毎日利用しないという場合には、薬カレンダーを併用するなどして、上手くデイサービスを活用しましょう。
5-3-4. 介護者以外の人がうまく勧める
薬の服用を嫌がる人には、介護者以外の人が勧めると服用してくれるケースもあります。
「この薬を飲みたくない」「私は健康だから薬は必要ない」などの思い込みがある場合に有効です。
特に認知症の思い込みは、身近な人に対して強く出る傾向にあります。
その場合にはケアマネージャーや訪問看護師、主治医から直接勧めてもらうと良いでしょう。
6.服薬管理の注意点
当然のことながら、服薬管理は大きな責任が伴います。
ここからは、服薬管理において注意すべきことを3つ紹介します。
6-1. 相手の同意を得てから行う
服薬管理をする際は、本人の同意を得てから行うことが大切です。
本人が嫌な思いをして薬の服用を拒否されると、治療に支障がでることも。
良かれと思っても勝手に薬をまとめたり管理したりしないようにしましょう。
6-2. 取り違えのないようにする
服薬管理をする人は、1日あたりの薬の服用量を適切に把握する必要があります。
薬を取り違えたり、別の種類のものと混同しないようにしましょう。
確実に薬を仕分けるために、チェックシートの作成やダブルチェックがおすすめです。
6-3. 医師と連携してサポート
服薬管理には、医師との連携が欠かせません。
特に認知症の人は薬を服用したことを忘れたり、「自分は健康だから」と言い張って薬を拒否したりする場合も。
薬の役割を根気強く説明したり、先述した服薬管理の工夫を実践するなどして、飲み忘れを防ぐ必要があります。
服用状況や薬の在庫管理を含め、医師と連携することが大切です。
7.話し合いと見直しが大切
本人が薬の服用を拒否したり、飲みにくい形状の薬を敬遠したりする場合もあります。
本人が飲みやすい薬について話し合うことで、本人も介護者も服薬管理の負担を減らすことができるでしょう。
また、薬を自分で管理するのか、自分で管理できない場合には誰にお願いしたいのか、そういったことも含めて話し合いの機会を持ってみてはいかがでしょうか。
8.まとめ
介護において服薬管理は大きな不安の一つです。
高齢になってくると、視覚や手指の動作が不自由なケースもあります。
また認知症などの症状により、飲み忘れ・飲み間違いなどのトラブルが起こりやすいです。
医師や薬剤師、デイサービスの担当者などと連携を取って、服薬管理を徹底していきましょう。