「オーラルフレイルってどんな状態?」
「口腔ケアってどうしたらいいの?」
「お母さんの歯を清潔に保ってあげたい」
あなたは今、こんな悩みを抱えてはいませんか?
平均年齢76歳男女約3000名を対象にした調査によると平均残存歯数は8.7本{男性10本・女性7.8本}でした。
残っている歯の本数が少ないほど、認知症にかかる可能性が高まるとされています。
また、高齢者の死因第1位は肺炎であり、口腔内の衛生状態の悪化から誤嚥性肺炎を起こすことが多いです。
オーラルフレイルを予防することによって、口腔内を衛生的に保つことができるため、誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができます。
また、口腔機能を向上させることで、美味しく食事を摂ることができ、低栄養を防ぐことができます。
目次
1.フレイルとは
まずは、フレイルについて学びましょう。
フレイルとは、『加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態』のことです。
(参照:厚生労働省発表、『後期高齢者の低栄養防止等の推進について』)
厚生労働省発表のレポートによると、フレイルは以下のような図で表されます。
出典:厚生労働省発表、『後期高齢者の低栄養防止等の推進について』より
上の図を見ると、『健康状態と要介護状態の間の状態』と言えますね。
ここで大切なのは、フレイルの状態は、対処の方法によっては健康な状態に戻ることができる、つまり可逆的な状態であるということです。
高齢になり、弱ってきたら、そこからは弱る一方であるという思い込みを持っている方が多いかと思います。
そういった思い込みは捨て、フレイルという概念をしっかりと認識し、フレイルの悪循環を断ち切る方法を実行して介護状態になることを防いでいきましょう。
2.オーラルフレイルとは
オーラルフレイルとは、噛んだり、飲み込んだりするための口腔機能の衰えです。
近年の研究で、口腔機能の衰えは、早期の老化のサインとされています。
これまでの食事が取れなくなることで、心身に支障を及ぼしたり、会話が難しくなり社会との関わりが減少することが考えられます。
一度オーラルフレイルが始まると負の連鎖が起こってしまうため、警鐘を鳴らした概念です。
3.オーラルフレイルと認知症
3-1.歯周病から、認知症のリスクを高める
歯周病が、認知症のリスクを高めることがあります。
歯茎の炎症部分から細菌や毒素が神経損傷を引き起こすことがあり、認知症になるリスクを高めます。
また、歯周病によって歯が減ることで、バランスの取れた食事が難しくなり、食べやすい食事が増え栄養バランスが偏ってしまいます。
これらは、糖尿病や高血圧の原因となり、認知症のリスクを高めます。
3-2.会話が難しくなり社会との関わりが減少
オーラルフレイルに陥ると活舌が悪くなったり、見た目に自信がなったりするため、社会との関わりが減少してしまいます。
他者との社会的交流で、他の人に対して気を使ったり、頭を使うことが神経細胞ネットワークを強化できると考えられます。
脳は怠け者で、使わない機能は衰えていきます。
実際に、愛知県で65歳以上の健常者を対象に行われた調査によると、歯が20本以上残っている人と比べて、歯がなく、入れ歯も使っていない人は、認知症になりリスクが1.9倍高いという結果が出ています。
そのため、オーラルフレイルと認知症には関係があると考えられます。
【参考】
神奈川歯科大学プレスリリース(2011年)
「歯を失うと認知症のリスクが最大 1.9 倍に ~厚労省研究班が愛知県の健康な高齢者 4425 名のデータを分析~」
4.オーラルフレイルを予防するメリット
4-1.虫歯・歯周病の予防
虫歯・歯周病を予防することによって、歯を失うことを防ぎます。
残りの歯の本数が少ない人は、認知症になるリスクが高くなるデータが出ています。
4-2.乾燥・口臭の予防
高齢になり、噛む力が低下することによって、唾液の分泌量が減ります。
唾液は口腔内を清潔に保つ機能があるので、口腔内の唾液が減り、乾燥しやすくなると細菌が増え、口臭につながります。
4-3.味覚の改善
高齢者は口腔内の自浄作用が低下するため、下の表面に舌苔がつきやすくなります。
舌苔がつくと、味を感じにくくなったり、味覚に違和感をもったりすることがあります。
4-4.唾液分泌の促進
口の中が食べかすや細菌で不衛生な状態では、唾液が出にくいため口内が乾燥します。
口腔ケアで口の中を清潔にすると、唾液の分泌が促進されます。
唾液の量を増やすことは口腔ケアにおいて、歯や口の粘膜を保護したり、虫歯や歯周病を予防したりする重要な役割があるため、大切になります。
4-5.誤嚥性肺炎の予防
食べ物や唾液を飲み込む時に、誤って食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。
それによって細菌が肺に入ってしまうのが誤嚥性肺炎です。高齢になると、噛んだり飲み込む機能が低下するため、誤って気管に入ることが多くなります。
高齢者のとって誤嚥性肺炎は生死に関わる重大な病気なので、口腔内を清潔にしてしっかり予防するようにしましょう。
5.オーラルフレイルのセルフチェック
自分の口の健康状態を知って、オーラルフレイル対策を行うきっかけにしましょう。
オーラルフレイルのチェック項目 | はい | いいえ |
半年前と比べて、硬いものが食べにくくなった | 2 | 0 |
お茶や汁物でむせることがある | 2 | 0 |
義歯を入れている※ | 2 | 0 |
口の渇きが気になる | 1 | 0 |
半年前と比べて、外出が少なくなった | 1 | 0 |
さきイカ・たくあんくらいの硬さの食べ物をかむことができる | 0 | 1 |
1日に2回以上、歯を磨く | 0 | 1 |
1年に1回以上、歯医者に行く | 0 | 1 |
合計の点数がセルフチェックの目安になります。
0~2 点 オーラルフレイルの危険性は低い
3 点 オーラルフレイルの危険性あり
4 点以上 オーラルフレイルの危険性が高い
https://www.jda.or.jp/pdf/oral_flail_leaflet_web.pdf
6.オーラルフレイルの予防方法
6-1.歯磨き
口腔ケアの基本です。
ブラッシングとうがいで歯垢を除去しましょう。
うがいができない場合は、口腔ケア用のウェットティッシュなどで拭き取ることが有効です。
6-2.バランスよく食事をとる
バランスよく食事をとることも大切です。
赤ワインやココナッツオイルなど、認知症予防に有効だといわれる食品があります。
このような情報を定期的に収集することは大切ですが、過度に取りすぎてはいけません。
情報のリソースをしっかりと確認する必要があります。
一汁三菜を意識して旬な食材を食べましょう。
6-3.定期的に歯科検診を受ける
普段は在宅で口腔ケアをしていても、専門的な領域であると、プロフェッショナルである歯科医院に任せた方が良い場合もあります。
自宅で口腔ケアをしていても、トラブルに気づけなかったり、思わぬ虫歯が進行している可能性があるからです。
もし、小さな異常を発見したら、放置せずにすぐに専門医に相談するようにしましょう。
また、専門知識のない人が口腔ケアをしていても、異常にすら気づかずにトラブルが進行していたというケースも考えられるので、異常を感じなくても定期的に受診するようにしてください。
7.まとめ
いかがでしたでしょうか?
オーラルフレイルとは、噛んだり、飲み込んだりするための口腔機能の衰えです。
一度オーラルフレイルが始まると負の連鎖が起こってしまうため、早期に発見し対策をしましょう。
ぜひ一度、セルフチェックを行い、問題があれば最寄りの歯科医院で検査を受けてみてください。