家族や親戚の介護について、不安を抱えていませんか?
これから高齢者人口の増加とともに、介護を必要とする人も増えていきます。
介護のやり方は人それぞれですが、介護を原因として離職する、いわゆる介護離職をお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事は介護離職を様々な観点から解説し、ご自身に最も合う介護について考えることのできる内容になっています。
金銭面や制度面についての不安も一つ一つ解消していきましょう。
前半に介護離職の実態やメリット・デメリットを挙げた後、後半では、実際に介護離職をする前にできることや、介護離職の際のサポート等をご紹介していきます。
目次
1. 介護離職の現状
介護離職とは、親や祖父母など家族の介護を理由に会社を退職することです。その後は、無職になったり、パートでの短時間勤務になったりします。
総務省の『就業構造基本調査』から介護離職者数の推移を見ると、家族の介護や看護を理由に離職・転職する人は、2008年以降の10年間ほぼ横ばいで年間約10万人も存在していることがわかります。
総務省「就業構造基本調査」をもとに作成
年間約10万人が離職し介護に専念している現状ですが、ここからは介護離職のメリット・デメリットを3つずつ紹介します。
2.介護離職のメリット
まずは、メリットを紹介します。
2-1. 仕事に関する心身の負担を減らせる
第一に、仕事に対する心身の負担を減らせることが挙げられます。
介護は肉体的にも精神的にもかなり大変です。
仕事から離れることで、その分については少しでも負担を減らせます。
2-2. 施設や介護サービスの利用にかかる費用を軽減できる
介護施設に預けたり、デイサービスを利用したりする費用を抑えることができます。施設利用にはかなりの費用がかかります。その分、自身が介護に専念できればその費用を軽減できますよね。コストカットという観点からもメリットを感じている方が多いです。
2-3. 親の希望を叶えられる
最後に、親が子供に介護を期待している場合もあるでしょう。
そのような場合は親の希望が叶えることができます。
3. 介護離職のデメリット
次にデメリットを見ていきます。
3-1. 大きな収入源がなくなる
まず挙げられるのは、金銭的な問題です。
介護離職するとパートやアルバイトでの収入しか得られず、収入が大幅に少なくなります。
それにより、金銭的に選べる介護サービスの選択肢が狭まってしまう場合もあるでしょう。
3-2. これまで積み上げてきた仕事から離れる必要がある
次に、挙げられるのはこれまで行ってきた仕事から離れなければならない点です。
介護後は、再就職などで別の職につく可能性もあることを頭に入れておきましょう。
3-3. 気分転換の時間を取りづらい
最後に挙げられるのは、気分転換の時間を取りづらいことです。
介護離職をすると、1日の大半を介護に費やすことになります。
家族以外とコミュニケーションを取ることが少なくなり、気分転換できずストレスの原因になる可能性があります。
4. 介護離職する前にできること
ではメリット・デメリットを踏まえた上で、実際に介護離職をする前にできることはあるのでしょうか?
ここから3つ紹介していきます。
4-1. 介護保険制度を理解する
まず、介護保険について理解しておきましょう。
介護保険制度は、介護を必要としている方を社会全体で支え合うことを目的とした制度です。
介護が必要な方(要支援者・要介護者)に介護費用の一部を給付しています。
介護保険の仕組み、対象者、受けられる介護サービスなど、介護保険制度について詳しく知りたい方は、こちらのサイトに詳しく書かれているのでご覧ください。
4-2. 会社が実施している制度について情報を集める
次に、企業の中には、育児・介護休業法による制度に加え、介護離職者をなくすための独自の支援制度を実施している場合もあります。
具体例な取り組みの事例として、介護のパンフレット作成や、介護休暇についてのセミナー実施などが挙げられます。
4-3. 地域包括支援センターを知る
最後に、地域包括支援センターを紹介します。地域包括支援センターとは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」です。
専門知識を持った職員が、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援などの相談に応じており、介護保険の申請窓口も担っています。
地域包括支援センターのさらに詳しい情報はこちらをご覧ください。
5. 介護と仕事の両立
介護離職をする前にできることを紹介しました。
実際に介護離職をしないとなると、介護と仕事を両立させることになりますよね。
ここからは、介護と仕事を両立させる方法と現状について見ていきましょう。
5-1. 介護と仕事を両立している人は全国に240万人以上
2012年に総務省により発表された「就業構造基本調査」によると、介護と仕事を両立している人は239万人いるとわかっています。自営業を含めると、数はもっと多くなると考えられているのが現状です。
5-2. 介護転職後の年収は減少傾向
介護と仕事を両立させるため、介護をしやすい別の会社に転職をするという選択肢もあるでしょう。
しかし、安易な転職は危険かもしれません。
「株式会社明治安田生命生活福祉研究所」と「公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団」の共同調査(2014年)によると、転職後の平均年収が、男性で4割、女性で5割減少していることがわかりました。
また、正社員から介護のために転職した人のうち、転職先でも正社員として働いている人は、男性は3人に1人、女性は5人に1人であることもわかっています。
さらに詳しくはこちらの調査報告書をご覧ください。
介護と仕事の両立は金銭面からメリットが大きいですが、転職して年収が下がってしまうなら考えものですよね。
では、離職や転職をすることなく介護を続けられる方法はあるのでしょうか?
ここからは、その方法である介護休業制度と介護休暇制度についてご紹介します。
6. 介護休業制度とは
介護休業制度とは、労働者が要介護状態にある家族を介護するために通算93日間休業することができる制度です。
介護休業の対象となるのは、要介護状態にあるのが配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫のいずれかです。
また、雇用されている期間が一年以上であることや、介護休業の取得日から93日後〜半年の間に労働契約の期間が満了しないなどの条件もあります。
詳しくはこちらに掲載されていますのでご覧ください。
7.介護休暇制度とは
介護休業だけでなく、介護休暇という形で休みを取ることも可能です。
介護休暇とは、要介護状態の家族の介護や病院への付き添いなどの世話を行う際、1年に5日まで休暇を取得できる制度です。
対象となる家族が2人以上の場合、1年に10日まで取得できます。
基本的には介護休暇は半日単位での取得ですが、1日の所定労働時間が4時間以上である場合や、半日単位で取得することが困難といった場合には、1日単位での取得が可能となります。
なお、介護休暇は法律で守られている権利のため、事業主は、申し出があった際に拒否したり、減給・賞与の削減などをしたりすることはできません。
http://carers-navi.com/careleave
8. 介護の負担を減らすためにできること
介護と仕事を両立し、その負担を少しでも軽減するために用意されている介護休業制度と介護休暇制度についてご紹介しました。
ここからは、さらに介護の負担を減らすためにできることをご紹介します。
8-1. リモートワークの活用
まず、リモートワーク(テレワーク)の活用が挙げられます。リモートワークとは、オフィスではなく自宅などで仕事を行う働き方のことです。
リモートワークを活用すれば、自宅で仕事をしながら介護を続けることも可能です。
仕事先までの往復時間が無く、1日のスケジュールを自由に組むことができるため、介護と仕事を両立させられる可能性も高まるでしょう。
8-2. 有料老人ホームの利用
老人ホームや介護施設に入居できれば、仕事との両立は現実的なものになります。
また、要介護度が重くなり在宅介護の限界を感じた時には、老人ホーム入居も検討してみてはどうでしょうか。
金銭面での不安があるかもしれませんが、総合的に判断すると、介護離職をして専念するよりご自身とご家族にとって良い選択である可能性もあります。
有料老人ホームについては費用や内容が多岐にわたるため、まずは情報収集をして把握しておくことが大切です。
9.長く続けられる介護方法を見つけよう
長く介護を行っていくうえで大切なのは、自分が続けられる介護を目指すことではないでしょうか。
仕事と両立していると、ついつい「全て全力で頑張らなければ」と考えてしまうこともあるかもしれません。
しかし、頑張りすぎてしまうと介護うつ等に陥ることもあります。
介護者は、被介護者だけでなく自分自身もいたわるような介護を続けていくことが望ましいでしょう。