「最近、親の物忘れが激しい・・・」
「老化か認知症かわからず、対応に困っている。」
そんな悩みをお持ちでないですか?
物忘れが著しくなった際に受診する物忘れ外来では、受診者の60%前後がすでに認知症と診断されています。
ここでは、老化と認知症の違いについて、受診する目安から対応方法について解説します。
目次
1.老化現象は自然に訪れる
老化とは、成熟期を迎えてから死ぬまでに起きる変化です。
人の脳は歳を重ねるとともに機能が低下し、記憶力や判断力、適応力が衰えます。
そのため老化は、誰にでも起こりうる自然なことなのです。
1-1.身体への影響
老化は、体に様々な影響があります。
それぞれ引き起こりうる影響について、表で見ていきましょう。
機能 | 影響 |
脳神経系 | 認知機能の低下 |
心血管系 | 心筋梗塞、心不全、高血圧 |
呼吸器系 | 息切れや胸の圧迫感など、呼吸機能の低下 |
消化器系 | 便秘、便通の異常
逆流性食道炎 |
腎泌尿器系 | 尿失禁 |
骨格系 | 骨粗しょう症、骨折、関節炎 |
1-2.原因は酸化・糖化・ホルモンの変化
老化は主に、酸化・糖化・ホルモンの変化により起こります。
それぞれについて見ていきましょう。
・酸化:人は酸素を吸うと、体の中に活性酸素が発生します。
その活性酸素は、タンパク質や脂質を酸化させ、細胞の動きが低下します。
活性酸素は酵素により消去されますが、40代を過ぎると酵素は減り、活性酸素は減らず老化が進むのです。
・糖化:体の中にタンパク質と食事から取り入れた糖が結びつくと、糖化が進みます。
体は糖化すると、体や肌の老化が早まってしまいます。
・ホルモンの変化:男性ホルモンや女性ホルモンの源になっているのは、若返りホルモンのDHEAホルモンです。
DHEAホルモンは老化により変化し、分泌量が減少します。
2.認知症は脳の疾患
認知症は、脳の疾患により引き起こる機能障害で、日常生活に支障が出ている状態をいいます。
一度発症すると元の状態に戻すのは困難で、治療は進行を抑えるのが主な目的です。
2-1.中核症状と周辺症状
認知症の症状は、中核症状と周辺症状の2つにわかれます。
中核症状 | 周辺症状 | |
概要 | 認知症の方なら誰でも現れる症状 | 中核症状が元となり、行動や心理に現れる症状
個人差あり |
症状 | ・記憶障害
・見当識障害 ・理解・判断力の障害 ・実行機能障害 ・失語・失認・失行 |
・不安・抗うつ
・徘徊 ・物盗られ妄想 ・幻覚 ・暴力・暴言 ・介護拒否 ・失禁 ・睡眠障害 |
2-2.原因は生活習慣病
認知症の原因は、さまざまな脳の病気です。
原因の約7割はアルツハイマー病で、神経細胞が傷害され脳が委縮します。
次に、脳梗塞や脳出血など脳血管障害が認知症の原因です。
これらアルツハイマー病や脳血管障害を引き起こすリスクを高めるものとしては、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病があります。
3.表で見る老化現象と認知症チェック
老化現象と認知症による物忘れの特徴は、以下の表の通りです。
老化で起こる物忘れ | 認知症で起こる物忘れ | |
内容 | 一般的な知識を忘れる | 経験した出来事を忘れる |
範囲 | 体験したことの一部分 | 体験したこと全体 |
進行 | 進行しない | 進行する |
日常生活 | 支障なし | 支障あり |
自覚 | 自覚がある | 自覚はない |
学習能力 | 判断力や理解力に問題ない | 判断力や理解力が低下する
新しいことを覚えられない |
感情・意欲 | 保たれている | 怒りっぽくなる
やる気がないように見える 何事にも億劫になる 疑い深くなる |
(参照:https://www.sompo-egaoclub.com/articles/fixed/2)
3-1.見分け方3選
3-1-1.何を忘れたか
何を忘れたかに着目しましょう。
老化現象であるもの忘れは、物事自体は覚えています。
例えば、食事した内容は忘れていても、食事をしたことはわかります。
一方で、認知症になると食事をしたこと自体を忘れ、体験したことの記憶が抜け落ちるのです。
3-1-2.自覚があるか
自覚があるかどうか、確認しましょう。
物忘れは、忘れたことを思い出そうとしたり、ヒントがあれば思い出せるなど、忘れたことを自覚しています。
認知症の場合、忘れた自覚がなく、忘れたことに気づきません。
3-1-3.人柄に影響しているか
認知症は、人柄に影響を与えることがあります。
以前よりも怒りっぽくなった、頑固になったなど、「性格が変わった」と感じた場合、認知症の可能性があるでしょう。
4.認知症の対応方法
身近な人に認知症の症状が現れた場合の対応方法を紹介します。
4-1.病院で受診する
まず、認知症かもしれないと思ったら、病院を受診しましょう。
認知症の検査が受けられるのは、主に神経内科や脳神経外科、精神科、心療内科です。
認知症は早期発見、早期治療により症状の進行を遅らせられます。
症状が現れたら、なるべく早く病院に行くのが大切です。
4-1-1.5つの健診STEP
病院で行われる検査の一例を紹介します。
①採血
血液検査を行うためにまず採血する。
通常の健康診断では行わない項目の検査をすることで、認知症の原因を探る。
②頭部のCT検査
頭部のCT検査で、脳震盪や脳腫瘍、慢性硬膜下血腫など、血管性認知症の原因があるか確認。
③家族や患者本人にヒアリング
病院を受診するまでの経緯や生活習慣を聞き取りする。
認知症の種類によっては、本人に自覚がないため、身近にいる人から情報を聞き出す。
④認知機能検査
簡単な質問や計算、言語理解など認知機能検査を行う。
⑤治療を受ける
①~④を通して、認知症かどうか判断が行われる。
認知症である場合、種類や原因に応じた治療が始まる。
以上が、5つのステップによる認知症の検査です。
4-2.否定したり叱らない
認知症の方とコミュニケーションをとるとき、否定しない・叱らないを意識しましょう。
認知症になると記憶障害により、理解しがたい言動が多くつい強く注意しがちです。
しかし、本人も症状には戸惑い混乱しています。
本人の気持ちや考えを尊重し、穏やかに接するのが大事です。
4-3.環境を整える
認知症になった本人が生活しやすい環境を整えましょう。
例えば、トイレの場所を忘れる場合は、張り紙でトイレまで誘導すると安心です。
同じ商品を買ってくる場合は、買い物メモを渡すことで余計なものを買う頻度が下がります。
このように、本人の症状に合わせた工夫を取り入れ、自身の負担を軽減します。
5.予防方法
老化現象と認知症、それぞれの予防方法の紹介です。
5-1.老化への予防方法
5-1-1.酸化対策
酸素を吸うことで活性酸素が発生し、老化が進みます。
酸化を防ぐには、活性酸素を消去してくれる酵素を補う必要があります。
そのため、抗酸化作用のある栄養素を積極的にとりましょう。
抗酸化作用のある栄養素の例は、以下の通りです。
・βカロテン:人参、かぼちゃ、ほうれん草、しそ、ひじき
・ビタミンC:レモン、みかん、ブロッコリー、アセロラ、パセリ
・ビタミンE:アーモンド、イワシ、マーガリン、うなぎ
・ポリフェノール:ブルーベリー、赤ワイン、ココア
・フラボノイド:レタス、春菊、玉ねぎ、ぶどう
5-1-2.糖化対策
糖化は、体や肌の老化を早めます。
糖化を抑えるには、食生活を見直すのが大切です。
食事は最低20分かけて行う、炭水化物を控える、食事の時間を空けるのも効果的でしょう。
5-1-3.ホルモン対策
若返りホルモンのDHEAホルモン量は、低下を抑えることが可能です。
しっかり睡眠をとる、ストレスをためない、軽い運動をするよう心がけましょう。
5-2.認知症への予防方法
認知症の予防では、脳の活性化に役立つ行動が大切です。
その方法として、「リハビリ」「家事」、そして「生活習慣病対策」を紹介します。
5-2-1.リハビリ
リハビリの方法として、回想法や芸術療法があります。
・回想法:昔の写真を使用し家族で思い出を語る
・芸術療法:懐かしい歌を歌う、楽器を演奏する、絵を描く
認知症の本人は、古い記憶は残りやすい特徴があります。
本人が親しみやすいテーマでやるのが大切です。
5-2-2.家事
家事を工夫することで、自宅でリハビリができます。
家族や友人と家事を分担することで、達成感や自信を得られるのです。
ポイントは、以下の4つです。
・シンプルにお願いする
・うまくできていることを伝える
・さりげなく手伝い、失敗を防ぐ
・感謝する
このように、感謝を伝えることで自分が必要とされていると感じ、リハビリへの意欲がわきます。
5-2-3.生活習慣病対策
生活習慣病は、認知症の原因となる病気との関連が強いです。
そのため、以下の生活習慣病対策を心がけることで、予防になります。
・食生活:低糖質、低塩分にする。バランスよくとる。
・体を使う:スポーツ、運動をする。楽器を演奏、手芸、料理など体の一部を使う。
・人と交流をする:家族や友人と会話する。共同作業をする。
6.まとめ
いかがだったでしょうか。
老化現象は自然に訪れるものに対し、認知症は早期発見早期治療が大事です。
症状の違いや日常生活に影響がでているかを見分けて、適切な対応をしましょう。
また、普段から家事やリハビリ、生活習慣病対策を一緒に行うことで、認知症の予防をするのが大切です。