最近、母の人格が変わってしまった。
万引きをするようになった
時計を常に気にして、時間通りに動くようになった。
このような行動に心当たりがあってこのページを訪れたのではないでしょうか?
上記の行動に心当たりがある場合は、ピック病の可能性が高いです。
ピック病は、脳の前方にある前頭葉と側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」のひとつで、比較的若い世代が発症する「初老期認知症」の代表的な疾患です。
進行が進むと家族だけでなく、近隣の方にまで迷惑が掛かってしまい、最悪の場合には犯罪も起こしかねません。
今回はそんなピック症について詳しく解説していきます。
1.ピック病とは
ピック病は、脳の前方にある前頭葉と側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」のひとつで、比較的若い世代が発症する「初老期認知症」の代表的な疾患です。
若年性アルツハイマーと同じく、40~60代前半に発症する場合が多いです。
「人間らしさ」を一気に奪う病気で、感情障害や記憶障害、意思の欠如などが現れます。
症状がうつ病や精神疾患と似ているため、誤診されたり、見落とされることも少なくありません。
2.症状
2-1.人格障害
ピック病の障害の大きな特徴は「人格の変化」です。
今まで温厚だった人が急に怒りっぽくなったり、他人を思いやれなくなったりします。
他にも善悪の区別がつかなくなり、暴力や万引き、痴漢などの犯罪行動を躊躇なく行うことが増えます。
また、犯罪行為まで及ばなくても、周囲への配慮がまったくみられず、葬儀などでの不適切な笑いや車のわき見運転、公然での性的表現など社会的なマナー面でも著しく品位が低下します。
しかし、本人にも悪気はありません。
2-2.同じ行動を繰り返す
散歩や食事などを決まった時間に生活をするようになります。
しきりに時計を見て時間を気にする、行動が曜日で規定される、など人によって分単位の行動なのか、秒単位の行動なのかは異なります。
この行動を止めようとすると怒ったり、暴れまわる可能性があるため注意しましょう。
さらには、毎日同じものを食べ続けたり、同じ言葉を何度も繰り返したり、他人の言葉をオウム返しにすることがあります。
2-3.記憶障害
アルツハイマーなどの認知症と同じく記憶障害を起こす場合もあります。
薬を飲み忘れたり、二重に飲んでしまう、ついさっき言われたことを忘れてしまう、今何しているかわからなくなる、などです。
体験全体を忘れることから、話のつじつまが合わなかったり、作り話をしてしまうこともあります。
また、ものを誰かに盗られたと思い込む、抗うつ状態を引き起こすことも少なくありません。
2-4.具体的な症状
・万引き、盗難
・怒り、暴力
・社会的ルールを無視する
・痴漢行為・セクハラ
・決まった時間や場所などで同じ動作を繰り返し行う
・不潔でも気にならなくなる
・無気力
・料理、洗濯などの生活能力の低下
・暴食、拒食、食べられないものを食べようとする
・人の物まねをする
・同じ場所を周回、どこへ向かっているかわからず徘徊
・失語、言語理解力の低下
3.チェックリスト
以下チェックリストで3つ以上に当てはまる場合は、ピック病を疑いましょう。
①状況に合わない行動
場所や状況に不適切と思われる悪ふざけや配慮を欠いた行動をする
②意欲衰退
引きこもりや何もしないなどの状況が持続し、改善しない。
思い当たる節もなく、本人に葛藤もない。
③無関心
自己衛生や整容に無関心となり、不潔になる。
④逸脱行為
万引きなどの犯罪を犯す。
しかし、自分が違法行為を行ったと理解できない。
⑤時刻表的行動
日常のいろいろな行動を時刻表のように決まって行う。
この際、止めたり遅れたりすると怒る。
⑥食べ物へのこだわり
毎日同じものしか食べない。
⑦常同言語
同じ言葉を繰り返す。オウム返しする。
⑧嗜好の変化
食べ物の嗜好が大きく変わる。
⑨発語障害
無口になったり、語彙力が低下する。
⑩はじめは記憶や見当識は保持
初期には、日時の間違いや道に迷うことはない。
4.治療法
ピック病は認知症のひとつであるため、根本的な治療はできません。
診断は、CTやMRIで脳の萎縮の確認や、脳への血流を測定する検査などをおこないます。
ピック病であることが判明したとしても、ピック病自体を改善する薬はないです。
しかし、症状を改善させることは、ある程度投薬によって可能となります。
万引きや痴漢、常同言語などの異常行動を含む症状には、ドーパミンの抑制効果がある薬が処方されます。
他にも、うつ症状に似た症状が出ている場合には、興奮性を高める薬が処方されます。
5.ピック病の人への対応方法
万引きや痴漢をしてしまう場合
ピック病になると社会性が欠如してしまい、悪いことと認識できなくなります。
介護サービスなどを利用して、1人で行動する時間をなるべく減らすことが重要です。
ひとりで電車に乗らせない、買い物に行かせないようにしましょう。
また、近隣の店に症状を説明し、万引きしてしまった場合にあとから支払できないか交渉する家族もいるようです。
暴力・暴言に対する対応
ピック病は抑制が効かなくなるため、暴力や暴言もよく見られます。
暴力・暴言に対しては感情的な対応せずに、その場を離れて、落ち着くまで待ちましょう。
症状が悪化する前に精神科を早めに受診して投薬を検討することをおすすめします。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?
ピック病は、「人間らしさ」を一気に奪う病気で、感情障害や記憶障害、意思の欠如などが現れます。
症状がうつ病や精神疾患と似ているため、誤診されたり、見落とされることも少なくありません。
また、若年性アルツハイマーと同じく、40~60代前半に発症する場合が多いです。
まだ若いからと言って安心してはいけません。
あなたの大切な家族が犯罪を起こしてしまう前に、チェックリストを参考に早めに病院に行きましょう。