QOLという言葉をご存知でしょうか。
QOLは、「生活の質」や「人生の質」と訳され、私たちが満足に生きる指標として注目されています。
現在の日本では、平均寿命と健康寿命の差が広がっていることが大きな問題となっています。
健康寿命とは、介護の手に頼らず暮らしていける年齢です。
しかし、平均寿命は伸びているにもかかわらず、健康寿命は比例して伸びておらず、介護が必要な状態が長くなっています。
高齢者がQOLを高め、豊かな生活を送るためにはどうすればよいのでしょうか?
目次
1.QOLとは
QOLはQuality of lifeの略で、「生活の質」や「人生の質」と訳され、私たちが満足に生きる指標として注目されています。
明確な定義としては、1994年にWHOが「一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準、関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定義しています。
超高齢社会の日本では、ただ長く生きるのではなく、如何に生活や人生の質を高めるかが重要となっています。
1-1.QOLの評価基準
WHOは、評価基準として、「WHO/QOL」と呼ばれるQOL基本調査票を開発しました。
基本調査票は「身体的領域」「心理的領域」「自立のレベル」「社会的関係」「生活環境」「精神性/宗教/信念」の6領域に基準を設けています。
また、この6領域をさらに細分化することで数値的にQOLを評価することが可能となりました。
2.高齢者のQOLを高める方法
高齢者のQOLを高める方法はなんでしょうか?
結論として、QOLの感じ方は人それぞれ異なります。
QOLの向上には、ご本人の気持ちを理解することが欠かせません。
日ごろからどんなときに幸福を感じているか観察をしてみましょう。
ここでは、高齢者のQOLを高める可能性の高いものを紹介します。
2-1.レクリエーション
レクリエーションとは、自由時間に行われる創造的活動です。
老人ホームでは、入居者が集まるレクリエーションが様々に企画されています。
QOLは、運動やコミュニケーション、笑顔になることで、向上すると考えられています。
そのため、生活にレクリエーションを取り入れることで、QOL向上が見込めるでしょう。
2-2.趣味に没頭する
QOLは人生における幸福や幸せを意味するため、趣味に没頭することでもQOLは向上します。
そのため、老後を迎えるまでに、没頭できる趣味を見つけておくことは重要です。
趣味がないと、時間を持て余してしまい、QOLが下がってしまう可能性もあります。
2-3.ボランティアに参加する
老後の生活の中で、ボランティア活動は大きな生きがいになりえます。
実際に総務省の調査によると、ボランティア活動するシニアのうち67.7%が参加理由を自分自身の生きがいと考えています。
また、様々な人と交流できる点もメリットの一つです。
高齢になると定年退職などにより、人との関わりが薄くなりがちと言われています。
そのため、社会と関わりを持てる点でもボランティアはオススメです。
2-4.体を動かす
体を動かすことでも、QOLは高まります。
運動は、健康寿命を伸ばし、QOLを維持した生活をおくるためにも大切です。
また、運動は認知機能の向上や生活習慣病の予防につながるため、QOLを高めるか否かに関係なく、意識的に行いましょう。
3.高齢者のQOLを下げる要因
ここからは、高齢者のQOLを下げる要因についても解説します。
3-1.低栄養
低栄養とは、エネルギー摂取量やたんぱく質などの栄養が慢性的に不足している状態のことです。
主に食欲の低下や、噛む力が弱くなるなどの口腔機能の低下により食事が食べにくくなるといった理由から起こる場合が多いです。
低栄養になってしまうと、食への喜びの喪失や運動機能の低下、栄養不足による疾患などQOLが低下するきっかけとなります。
3-2.運動不足
運動不足もQOLを下げる要因です。
運動不足は、筋力の低下により基礎代謝の減少や血流の低下をもたらし、免疫力を低下させてしまいます。
さらに、筋力が低下してしまうと、孫とのお散歩や趣味の旅行にも行けなくなる可能性もあります。
QOLを維持するためには、意識的に運動をすることが欠かせません。
しかし、この記事を読んでいきなり激しい運動をすると、かえって心筋梗塞を引き起こす原因になってしまいます。
ご自身の体調と生活習慣に合った方法を取り入れましょう。
3-3.ストレス
ストレスがかかっている状態では、睡眠障害や食欲不足、または暴飲暴食など生活習慣に乱れを招きます。
結果的に、免疫力の低下や生活習慣病の原因を促進してしまいます。
ストレスを定期的に発散できる習慣を作りましょう。
3-4.フレイル
フレイルとは、『加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態』のことです。
高齢者のほとんどは、フレイルの時期を経て、徐々に要介護状態に陥るとされています。
そのため、フレイルの状態を放置しておくと、QOLを高めることが難しくなってしまうでしょう。
しかし、フレイルの状態は、対処の方法によっては健康な状態に戻すことができます。
4.QOLとADLの違い
QOLと似ている言葉に、ADLがあります。
ADL(日常生活動作)とは、Activities of Daily Livingの略で、日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作のことです。
具体的には、移動・食事・入浴・排泄などがこれにあたります。
ADLは、高齢者や障害者の日常生活レベルを測る重要な指標です。
要介護認定の調査項目や、リハビリの効果判定などに使われています。
そのため、QOLは、ADLが問題なく行える上で高められることがわかります。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
QOLはQuality of lifeの略で、「生活の質」や「人生の質」と訳され、私たちが満足に生きる指標として注目されています。
QOLを高めるための手法は人それぞれ異なります。
ご本人にとって幸福とは何か、日ごろから観察をしましょう。
また、QOLを低下させないために行う行動に違いはありません。
この機会にQOLを意識した介護を心がけてみましょう。