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小鳥の巣

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テレワークの運動不足を解消するために毎朝4時に起きて散歩をするようになった。5月の初めからもう2カ月続いている。といっても1日の歩数は勤めに行く時と変わらないし、起きる時間も変わらないので、むしろ続かなければおかしいくらいである。

ある日、夜明け前に家を出て、いつものように西の方にある川沿いの道を歩いていると、小鳥の巣を見つけた。あるいは、見つけたような気がした。

それは川沿いに作られた遊歩道で、車道と川の間のかなり急な斜面に造られており、車道側がコンクリートでできた格子状のブロック塀になっていた。そのブロックの隙間を小鳥たちが出たり入ったりしていたのを見つけたのである。ブロック塀は花壇になっており、様々な花を咲かせていた。ふいに眼の前を小鳥が横切った。あれっと思ってみると羽の白い小鳥がブロックの格子の中から出てきて、川の方へ飛び立っていった。

こんなところに小鳥の巣があるはずはないだろう、とすぐに思った。人間の手が届くような高さに鳥が巣を作るとは思えなかったからだ。

だが、ほとんど人が歩きそうにない遊歩道で、これだけ草花に囲まれていれば、あるいはありえないことでもないかもしれない、と思い直した。すぐ横の車道には別に歩道があり、しかも遊歩道は二百メートルほどしかないので、散歩以外で歩く人がいるとも思えない。川は住宅地の中にあって、わざわざ来るような場所ではなく、実際ほとんど人通りはないのだった。

川沿いには鳥が多くいたが、その巣と思しき場所の周辺は、とりわけ多くの鳥がいた。スズメ、ハト、カラスはもちろん、カモ、ウグイス、シラサギ、カモメ、そして多くの小鳥たち。川の両側には新しい住宅がぎっしりと立ち並んでいるが、地名に「田」の字が含まれるので、おそらくずっと水田だったのではないだろうか。実家からは少し離れた場所で、昔は来たことがなかったから詳しい事はわからない。

人が来たら鳥は逃げてしまうから、その場にいても確認することはできないと思ってすぐに離れたが、それ以来気になってしかたない。

それまで車道側の歩道を歩いていたのをやめて、わざわざ遊歩道を歩くようになったが、それはかえって逆効果かもしれないと思いつつ、結局あれ以来、いちども鳥たちがブロック塀から出てくる場面には遭遇しない。

おかしな話だが、毎朝それが楽しみのひとつになっているテレワークな日々である。

※こちらの記事は、2020年7月6日にながさごだいすけ氏によって、note上にて公開されたエッセイになります。

https://note.com/carenavi/n/nc4876f1d8840

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