大腿骨頸部骨折は、どんな骨折?
高齢者に多い骨折はなに?
このような疑問を抱えているのではないでしょうか?
大腿骨頸部骨折とは、大腿骨の先端部分にある骨頭の下の部分が折れてしまうことです。
高齢者が寝たきりになってしまう原因の1つでもあります。
高齢者が転倒して立ち上がれなくなった場合は、大腿骨頸部骨折を疑いましょう。
この記事では、大腿骨頸部骨折の原因や治療法、今日からできる予防法について解説します。
目次
1.大腿骨頸部骨折とは
大腿骨頸部骨折とは、大腿骨の先端部分にある骨頭の下の部分が折れてしまうことです。
股関節に強い痛みが生じ、ほとんどの場合は立つことができなくなります。
高齢者が転倒して立ち上がれなくなった場合は、大腿骨頸部骨折を疑いましょう。
患者は高齢者に多く、2007年の推計患者数は約15万人、2030年には約30万人に患者数が増えるといわれています。
また、大腿骨頸部骨折は、寝たきりのきっかけとなりやすいため、早期の治療とリハビリが欠かせません。
2.大腿骨転子部骨折との違い
大腿骨頸部骨折と似た骨折に、大腿骨転子部骨折が挙げられます。
どちらも脚の付け根の骨折ですが、頸部は股関節の内側、転子部は外側にあります。
転子部の骨折では、骨に栄養を届ける血管が傷つかないので治りが早いです。
一方で、頸部の骨折は、血管が傷つきやすく、治りが遅いです。
さらに、骨が死んでしまうこともあり、合併症の危険もあります。
3.大腿骨頸部骨折の原因
3-1.転倒
大腿骨頸部骨折になる大きな原因は転倒です。
転倒により、臀部を打撲して発症します。
病気や疾患がない場合でも、年齢を重ねるにつれ、筋力や身体機能は低下します。
そのため、小さな段差やカーペットの出っ張りなども転倒の原因となってしまいます。
また、要介護となる主な原因として、「骨折・転倒」は全体の12.2%を占め、4番目の多さになっています。
病気や疾患がないからといって昔と同じように生活していると危険です。
3-2.骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、骨の強度が弱くなり骨折しやすい状態をいいます。
骨粗しょう症は、年齢を重ねるごとに発症率が高まる病気です。
どんな人でも年齢を重ねると、骨の量は減っていきます。
骨がもろい状態で転倒すると、大きな骨でも簡単に折れてしまいます。
4.大腿骨頸部骨折の治療法
基本的に、大腿骨頸部骨折は手術で治療を行います。
手術を行わない場合は、長期間ベッドの上で安静にする必要があり、筋力が衰えて寝たきりとなってしまいます。
そのため、早期の手術とリハビリが大切です。
ただし、手術に耐えられるだけの体力がない場合は、やむを得ず手術をしない場合もあります。
手術には大きく2種類あり、1つずつ解説します。
4-1.骨接合術
骨接合術は、骨折のずれが小さい場合に行います。
骨折部分を金属で固定し、骨をくっつけます。
人工骨頭置換術よりも身体への負担は少ない分、合併症の発症やうまく骨がくっつかない可能性もあります。
4-2.人工骨頭置換術
人工骨頭置換術は、骨折のずれが大きい場合に行います。
太ももの頸部を切り取り、人工骨頭と交換する手術です。
合併症の発症は防げますが、深くしゃがんだり激しい運動をすると脱臼してしまう可能性が残ります。
5.大腿骨頸部骨折の予防法
5-1.骨密度を低下させない食事
骨の形成に関係する栄養素を摂りましょう。
骨密度の低下を防ぐ主な栄養素は、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKになります。
5-1-1.カルシウム
カルシウムは、骨を作る重要な栄養素です。
75歳以上の方のカルシウム摂取量は、男性700mg、女性600mgが推奨されています。
【カルシウムを多く含む食品】
牛乳、チーズ、いわし、さんま、大豆、緑黄色野菜 など
5-1-2.ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの吸収を助ける栄養素です。
主に魚介類に多く含まれます。
また、食事を取らなくても、日光に当たることで皮膚からビタミンDは作られます。
そのため、散歩などで日光を浴びることも大切です。
【ビタミンDを多く含む食品】
鮭、うなぎ、さんま、まぐろ、しいたけ、きくらげ、しめじ など
5-1-3.ビタミンK
ビタミンKは、カルシウムの吸収を助け丈夫な骨づくりに関わる栄養素です。
油に溶けやすい性質を持っているため、油を使用した料理で吸収が促進されます。
【ビタミンKを多く含む食品】
納豆、油揚げ、卵、ほうれん草、アスパラガス など
一方で、アルコールやカフェイン、さらにリンを多く含む加工食品は、過剰摂取を控えるべき食品です。
5-2.転倒防止のための運動
転倒予防に有効な筋肉である、お尻と太もも(前後)、ふくらはぎのトレーニングが大切です。
また、下半身だけでなく、上半身も鍛えることで体のバランスが安定します。
ここでは、家にあるもので簡単にできる体操を3つ紹介します。
ぜひ実践してみてください。
5-2-1.柔軟性をアップするタオル体操
タオル体操は、筋肉の萎縮を予防し柔軟性がアップする効果があります。
タオルの端を両手で持ち、横向きに振ったり、縦向きに振ったりしましょう。
5-2-2.新聞紙体操で指先の運動
新聞紙をちぎることで、指先や握力の機能訓練ができる体操です。
新聞紙を用意し、複数人で行います。
ひとり一枚の新聞紙を、制限時間内に何分割にできるか競いましょう。
この時、「両手で」「片手で」「親指と人差し指で」のように制限することで身体の多様な場所を動かせます。
制限時間は、1分から2分程度が目安です。
5-2-3..転倒予防になるペットボトル体操
ペットボトルで転倒の予防ができる体操方法です。
まず、水を少し入れた500mlのペットボトルを寝かせておきます。
そのペットボトルを、片足だけを使い起き上がらせましょう。
この際、ペットボトルを5つほど用意し、何秒で全部起き上がることができたか測るのがおすすめです。
https://carers-navi.com/exercise
5-3.住居環境の整備
住居環境の整備も欠かせません。
階段や廊下、トイレ、浴室などに手すりの取り付けや玄関や浴室などの段差や傾斜を解消、滑りの防止のため床の張替などが必要になります。
ご自宅の中でどこに問題があるか確認しましょう。
また、介護保険の制度には在宅介護に必要な住宅改修費が含まれています。
これは、介護のための住宅改修を支援する仕組みです。
上記に挙げた住宅改修を行う場合、工事費用の7~9割が支給されます。(上限20万円まで)
〇介護保険の対象となる主な6つの工事
手すりの取り付け
段差の解消
滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
引き戸等への扉の取替え
洋式便器等への便器の取替え
その他上記の住宅改修に付帯する工事
https://carers-navi.com/jutakukaisyu
6.まとめ
いかがでしたでしょうか?
大腿骨頸部骨折は、大腿骨の先端部分にある骨頭の下の部分が折れてしまうことです。
股関節に強い痛みが生じ、ほとんどの場合は立つことができなくなります。
基本的に、治療は手術になります。
を手術を行わない場合は、長期間ベットの上で安静にする必要があり、筋力が衰えて寝たきりとなってしまいます。
大腿骨頸部骨折を起こさないために、食事や運動、住居環境の整備を行いましょう。