「認知症の父親が知らないうちに外出していた……」
「認知症の進行が進み、徘徊が心配になってきた」
「徘徊の危険を防ぐ対策はある?」
こんな悩みを抱えていませんか?
高齢化とともに認知症患者が増え続けています。
公益法人生命保険文化センターによれば、2020年の65歳以上の認知症患者数は約602万人となっており、これは6人に1人程度が認知症であるということです。
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/15.html
中でも認知症による「徘徊」は、外出に伴う危険性から大きな悩みの種となっています。
この記事では、徘徊の危険性や原因、徘徊対策について詳しく解説していきます。
目次
1.徘徊は、認知症の一症状
徘徊とは、認知症の周辺症状と呼ばれる症状の一つです。
周辺症状とは、環境や心身の相互作用の結果として起こる様々な精神症状や行動障害です。
2.徘徊の危険性
認知症の高齢者が一人で外出してしまうと、家に戻れなくなったり事故に巻き込まれたりする危険があります。
夏場であれば脱水症状や熱中症、冬場では低体温症などの危険も。
また、転倒や熱中症は家の中でも起きる可能性が十分にあり、家の中での徘徊にも注意が必要です。
3.徘徊の5つの原因を具体例とともに解説
徘徊は、目的もなくただ歩き回っているように見えます。
しかし、徘徊には原因があることをご存知でしたか?
ここからは、徘徊の5つの原因をご紹介します。
3-1. 記憶障害
徘徊の原因の一つに、認知症の記憶障害があげられます。
記憶障害とは、経験したこと自体を忘れてしまうことです。
単なる物忘れとは異なり、きっかけを与えても記憶が戻ってくることはありません。
記憶障害により、既に夕食をとったこと自体を忘れて台所にいたり、既にゴミを捨てたにも関わらず捨てに行こうとしたりなどが挙げられます。
https://carers-navi.com/memory
3-2. 見当識障害
見当識障害も徘徊の原因の一つです。
見当識障害とは、自分が置かれている状況や日時、人物や場所などを判断する力に障害があることです。
トイレに行こうと思ったが、トイレの場所がわからずうろうろしていたり、時間感覚がわからず夜中に出かけようとしたりする症状があります。
https://carers-navi.com/kenbun
3-3. 前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は認知症の一種です。
前頭側頭型認知症による徘徊は、同じ行動を繰り返す症状が見られます。
ひどい天候でも同じ時間に散歩に出ようとしたり、定年退職をした会社に出勤しようとしたりするなどが挙げられます。
同じ時間に行動するため、家族も注意を払いやすいです。
しかし、その行動をしているときは周りが見えなくなっているため、事故や怪我に繋がらないように注意する必要があります。
3-4. 不安・ストレス
不安やストレスが徘徊の原因となることも。
具体的には、引越しで新しい環境に慣れず引越し前の家に戻ろうとしたり、家族が留守になると不安でなりうろうろしたりなどの行動があります。
3-5. 判断力障害
判断力障害とは、ものごとへの理解力や判断力が低下することです。
たとえば、道に迷っても人に尋ねることができず、あてもなく徘徊を続けてしまうことがあります。
他にも、電車に乗っていく場所にも歩いて行こうとするなどの行動に繋がることもあります。
4.徘徊による危険を軽減する方法
徘徊は本人にとって理由のある行動です。
そのため、徘徊自体を止めるのは難しいでしょう。
逆に、無理に止めようと鍵を増やしたり靴を隠したりすると、本人が混乱し、暴力や暴言、また無理に外出しようとするリスクも伴います。
しかし、徘徊をするのは心配ですよね。
これから、徘徊による危険を軽減する方法を紹介します。
4-1. GPSを利用
GPSとは、位置情報を測定するシステムのことです。
杖や鞄などにつけられる小型のGPSも販売されています。
4-2. 近隣住民や自治体と連携
徘徊をしてしまうことを、近所の方や警察などに伝えてみましょう。
徘徊の事情を知らないと単なる散歩とも捉えられてしまいますが、相談しておくことで声をかけてもらいやすくなります。
4-3. 名札をつける
持ち物に名札をつけておくこともおすすめです。
名札をつけておくことで、万が一の時に連絡をもらいやすくなります。
ただし、本人の自尊心を傷つけてしまうと、混乱して徘徊を助長させてしまうことも。
本人が気づかない工夫も大切です。
4-4. 趣味などの生きがいを見つける
徘徊をする理由の一つに、不安や孤独感があります。
その対策としてあげられるのが、趣味や仕事を見つけること。
特に生涯を通して続けられるようなものがおすすめです。
4-5. 生活習慣を整える
夜に眠ることができないと、不安になり徘徊の原因となることも。
朝に太陽の光を浴びたり、日中適度な運動を取り入れたりすることで、夜の徘徊の危険性を減らすことができます。
4-6. 玄関にセンサーをつける
外に出てしまうことを避けるのは難しいです。
その場合は、本人が玄関を出た時に音が鳴るセンサーをつけておくことも一つの対応策です。
5.徘徊が起きた時どうすればいい?
徘徊が起きて、知らないうちに外出してしまったら焦ってしまいます。
徘徊が起きた時の対処法を紹介します。
5-1. 怒らない
徘徊した本人を怒らないようにしましょう。
本人は怒られている理由がわからず混乱を招いてしまうこともあります。
不安でついつい感情的になってしまいますが、怒ったり問い詰めたりしないことが大切です。
5-2. 理由を聞く
徘徊には理由がある場合がほとんど。
本人に徘徊する理由を尋ねてみましょう。
理由がわかることで、根本的な対応策を取れる可能性も高まります。
5-3. 気をそらす
気をそらすことも有効な対策です。
徘徊をしそうな時や、徘徊の場面に出くわしたら、他のことに気をそらしてみましょう。
たとえば、定年退職したのに出勤しようとしている場合は、「お茶を飲んでから仕事に行きましょうか」などと誘ってみましょう。
5-4. 一緒に出かける
一度徘徊の症状が出ると、完全に徘徊をさせないことは難しくなってきます。
その際は、安全に配慮するため一緒に出かけてみることも対応策の一つです。
普段は一人で行くような散歩なども、「送りますよ」などと一声かけることで自然に一緒に出かけられるでしょう。
6.まとめ
65歳以上の認知症患者数は6人に1人と言われる現代では、徘徊は身近な問題になっています。
急に家族が徘徊を始めると焦ったり不安になったりする気持ちがありますが、記事で紹介したものを参考に対応策を考えましょう。
また一人で抱え込まず、近隣住民や交番などに早めに相談することをおすすめします。