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健康情報学の新時代が始まった(かもしれない)

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新型コロナの時代になって以前と変わったことは数々あるが、なかでも、テレビの専門解説が、科学的になったことが挙げられる。

正直に言うと、わたしは実家にいる時しかテレビは見ないので、間違っているかもしれないが、新型コロナ以降、具体的には2020年2月以降、それまで、テレビ(特に朝や昼のワイドショー)が自称専門家の独壇場だったところに、本物の専門家が登場するようになった。それは、国立感染症研究所の所長や国立国際医療センターの医師、大学教授、感染症専門医といった現役の専門家であった。

それでなにが変わったかといえば、何もかもが変わったと言わざるを得ない。それくらい変わってしまったという印象がわたしにはある。ただ、自称専門家と、本物の専門家(違和感のある言い方だが、ここでは自称でない自他ともに認める、くらいの意味合い)の違いは、全くの素人に一目瞭然であるほどには違わないようなので、漫然とテレビを見ている人にとっては、結局なにも変わっていないように思えたとしても不思議はないかもしれない。

そもそも自称専門家も専門家なのだから、当然ではあるが、そんなにおかしなことを言うわけがない。さすがにおかしなことばかり言っていたら、テレビ局の関係者も気付くだろうから、すぐにテレビには出演しなくなるだろう。自称専門家も、それなりに専門家なのである。

だが、そんな自称専門家の発言で、わたしが、絶対におかしいぞ、と思ったことが2つある(といっても、これはあくまでも個人の感想だ。そもそもわたしは感染症の専門家ではないので、正しいのに間違っていると思い込むリスクは決して低くない。素人のたわごとを聞きたくない人は、こんなものを読んでいないで、さっさと厚生労働省のサイトに行くことを強くお薦めする)。

ひとつは、まだ承認されていないある新薬を、いますぐ全医療関係者に配るべきだという意見を、毎日のように主張していた自称専門家がいたことである。そもそも新型コロナウイルスに対する特効薬が未だ存在しないことは周知の事実であり、たとえ承認されていたとしても、それだけで安心して医療を継続できるというわけではなかった(感染を予防できる完全に有効なワクチンということならそこまで違和感はなかったはずだ)。

だが、それ以前の問題として、本物の専門家というのは科学的根拠に基づいて発言をするものである、ということを前提に考えた時、この発言にはいかにも本物の専門家でないにおいをわたしは感じてしまったのである。

どういうことなのか説明してみよう。

ここで問題になっている新薬は、元々新型コロナウイルスとは何の関係もない薬だったが、近縁ウイルスについての有効性はある、ということから、新型コロナウイルスへの有効性を類推するのは、専門家ならだれでも(というか素人でも)することであっただろう。

でもそれはあくまでも推論に過ぎなかった。必要なのは実証であり、新薬として承認されるためにもそれこそが決め手となるというところまで心得ていてこその専門家なのである。したがって、具体的なデータがない段階では、それを全医療関係者にただちに配るべきであると、たとえ思ったとしても、そしてそれが科学的な推論に沿ったという意味で正しい意見と呼べたとしても、それを公に発言することはあり得ない、とわたしは感じたのだった。

もうひとつは、今すぐPCR検査を、全医療関係者にすべきであるとの主張だった。こちらも、科学的根拠という観点から言えば、実際にそのようなデータは存在しないことが明らかなので、それを公の場で主張することにはかなりの違和感があった。そもそも、毎日1回すれば有効なのかどうかもわからないし、数時間おきでなければだめかもしれない。だが、仮に毎日1回で有効ということでも、日本全国の医療関係者全員を毎日1回というのは、一体何検体くらいになるのだろうか? 全検査数を1日2万件に早くしたいと言っている状況下で、それは現実的なのだろうか? というわけで、本物の専門家は、増やすことが重要だとはいっても、全医療関係者にPCRをただちにすべきだとは、たとえ思っていても公の場では言わないのである。

誤解しないでもらいたいが、本物の専門家も意見は言うのである。ただし、その言い方は自称専門家とはかなり異なるのであり、基本的に専門家の間では、その違いは一目瞭然なのだと、専門家でもないわたしがいっても何の説得力もないだろうが、そう思うのである。

※こちらの記事は、2020年10月18日にながさごだいすけ氏によって、note上にて公開されたエッセイになります。

https://note.com/carenavi/n/n42818a088ca5

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