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旅行のあとで熱が出た話

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世間ではGOTOトラベルやらGOイートやら、人々の外出を促す企画が目白押しであるが、わたし自身は、もう何年も泊りがけの旅行をしておらず、いまさら行こうという気にもなれないでいる。

二年前に行った最後の旅行が、一連の体調不良の発端になったという思いが、未だに抜けきれないことも、いまいちその気になれない理由のひとつである。もちろん科学的でないのはわかっているが、どうしてもその気持ちを払拭することができない。

この7−8年のあいだ、ほぼ家と職場の往復(と週末の帰省)しかせず、しかも、朝は始発、帰りも最も空いている時間の電車を選んで通勤していたのは、別に病気が怖いとか、そういう理由ではなかったが、それが幸いしたのか、しばらく風邪をひかない年が続いていた。

けれども、かえってそれで免疫力が落ちたのか、2年前の福岡出張のあとしばらくして、いきなり38.6℃の高熱がでた。それは2018年9月のことで、2泊3日の福岡出張から十日ほど過ぎていた。

その数日前から咽喉と胃がいやに痛むので、なにか変なものでも食べたのだろうか、と最初は考えたが、特に思い当たる節はなかった。知人の何かのお祝い会に誘われていたが、とても飲みに行けるような体調ではないと断ったばかりだった。他人からの誘いは100%断らないことにしているのだが、そのときばかりはとても無理だと感じたのだった。

後になってよくよく考えてみると、明らかに感染症だったのだと思う。そうなると人ごみに長時間さらされたのは、福岡出張しかありえないということに思い至った。だが、別に飲みに行ったわけでもなく、長時間の会議があったわけでもなく、3密状態にはなったことはなかったと、もっともその時はまだ3密などという言葉はなく、ただ漠然と感染の機会はほとんどなかったはずだと考えた。

結局、高熱は5日間続き、さすがに自宅でコンタックを飲んでいるだけではヤバイと思って医者に行ったことは、以前にも書いたとおりである。お医者様に処方された抗生物質でウソのように熱が下がったが、それもすでに治りかけていただけのことかもしれないので、細菌感染症だったという決定的な証明になるわけでもない(まあ、かなり有力な証拠だとは思うが)。

福岡出張以外には考えられない、と漠然と考えてはみたものの、感染症を誰からもらったかなんて、ふつうはわかるはずがない。そもそも感染症だったのか、そうだったとして何の感染症だったのかが分かっていないのだから、それ以上追及のしようがなかった。

※こちらの記事は、2020年10月26日にながさごだいすけ氏によって、note上にて公開されたエッセイになります。

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