前々回のつづき。新型コロナの注意書きが表示されるかもしれない(というか、される)が、これは2年前の話である。
わたしは、抗体や抗原の測定をしていたことがあり、それはもうかなりむかしむかしの古い話なので、最近のPCR検査などのことはまったくわからないのだが、感染症になった人の血清には、ウイルスや細菌の抗原とそれに対する抗体ができるということくらいは知っていた。なので、抗体検査や抗原検査をすれば原因を究明できるということはわかっていた。
PCR検査も原理は知っていたが、すでにここまで実用化されていたなんて、うかつにもまったくフォローできていなかった。わたしが実際に測定をしていたのは30年も前なのである。その時代にもPCRはあったが、ノーベル賞を取ったか取らないかの頃で、それで検査なんて夢物語に過ぎなかったのだ。
検査をすればわかることはわかっていたが、抗体や抗原というのは極めて特異性が高く、検査の一般的な原理は単純だが、それでどんな感染症もたちどころに発見できるというわけにはいかない。新型コロナウイルスでもインフルエンザウイルスでも、あるいは細菌感染症でも、病原体がもっている抗原は、その病原体固有のものであり、それに対して作られる抗体も、その抗原に固有のものである。
厳密にいえば、それほど特異的でないものもいっぱい作られるが、そういう抗体では、感染症の原因を突き止めるための検査には役立たない。検査によって感染症の原因を確定するためには、ある感染症の抗原や抗体を特異的に測定することが必要で、そのためには感染症ごとに特異的な抗原と抗体を用いた検査キットを作る必要があるということになる。
実際、そうやってすべての感染症に異なる検査キットが開発されているのであり、原因不明の感染症の病原体を知ろうと思ったら、かなりの数の検査キットを試す必要があるかもしれない。その検査には血清が必要なので、そのたびに採血されることになり、痛いことやかかる費用のことは差し置いても、まあ、あまり現実的でないのは明らかだ。
というわけで、今に至るまで原因は不明なのだが、そのせいで、といっても大半は自業自得なのだが、話はおかしな方向に転がりだしたのであった(以下次号)。
※こちらの記事は、2020年11月13日にながさごだいすけ氏によって、note上にて公開されたエッセイになります。
https://carers-navi.com/mask3