「認知症の親が家に1人になった時、火事が心配」「認知症による火事の対策を知りたい」など、不安を抱える介護者の方は多いと思います。
過去に、認知症の夫を家に残して妻が用事で出かけた時に火事が起き、隣の家に燃え移り、裁判沙汰になった事例があります。
認知症の夫が、紙くずにライターで火をつけ、布団に投げたことが原因でした。
裁判では、妻には夫が異常な行動をしないか注意深く見守る義務があったとし、夫を残して外出したことは「重い過失」と判断されました。
この記事では、認知症による火事を防ぐため、家の環境をどのように工夫すれば良いか、また、対策としてどのような家電が良いかなどをご紹介致します。
認知症が原因で火事が起こりやすい理由
認知症になると、火事を起こしてしまう危険は高くなります。
その理由として、「うっかり火を切るのを忘れる」「変な行動に出る」などをイメージする方は多いと思います。
対策を考える前に、原因を把握しておくことは大切です。
ここでは、認知症の人がなぜ火事を起こしやすいのかをご説明致します。
注意・記憶力の低下
認知症になると、注意力・記憶力が低下します。
お湯を沸かしている時に電話がかかってきたら、電話に気を取られてしまい、火を使っていたことを忘れてしまいます。
また、出かける時にストーブをつけたままにするなど、家電のスイッチを切り忘れて出かけてしまうという場合も多く、火事のリスクが高まります。
また、タバコや仏壇のろうそくの火などの消し忘れも多く、管理が難しくなります。
理解・判断力の低下
認知症の方は、環境変化が苦手です。
そのため、新しい環境や新しい家電の操作が分からず、適切な判断ができなくなります。
また、一度説明してもなかなか容易に理解ができないため、失敗が増える状況にあります。
複雑な家電の操作は特に難しく、使い方を間違ってしまい、火事に繋がりやすい場合もあります。
嗅覚の低下
嗅覚の低下は、認知症の初期に生じることが明らかになっています。
中でも、アルツハイマー型認知症において、特に墨汁、材木、バラ、ひのき、炒めたにんにくのにおいを識別するのが難しいという研究報告もあります。
認知症が原因で、焦げた匂いを嗅ぎ分けることが難しい場合、火を消すタイミングが遅れたり、火事に気づかず逃げ遅れることもあり、火事の危険は高くなると言えます。
行動の障害
認知症のBPSDでは、抑うつ、妄想、幻覚、誤認などの症状が現れます。
そうなると、冒頭でお伝えした事例のように、「紙くずにライターで火をつけて布団に投げる」といった行動を起こす危険があり、火災のリスクが高いと言えます。
◉認知症のBPSDについてはこちらの記事をご覧下さい。
認知症による火事の対策
認知症の人が火事を起こしやすい原因を把握できたところで、それらを踏まえた火事対策をご紹介致します。
認知症の程度によって効果のある対策は異なります。
例えば、言語機能が低下した場合に、複雑な注意喚起のポスターを貼っても理解ができず、意味がありません。
そのため、個人に合わせた対策を講じる必要があります。
これからご紹介するのは、環境の工夫と家電の工夫の参考例です。
認知症のご家族にとって、どの対策が効果的なのか、認知症の症状や程度と照らし合わせて選択すると良いでしょう。
環境の対策
環境面での対策を以下に挙げます。
環境の対策は、家の状況によって導入が難しい場合もあるため、可能な範囲で取り入れることをお勧めします。
・家の周りに燃えやすいものを置かない
・配線周りを整理し、発火を防止する
・カーテンやカーペットなどを防火品にする
・簡易自動消化装置を設置する
・在宅用スプリンクラーを設置する
・電気ストーブの周りに燃えやすいものを置かない
・見えやすい場所に「ガス・火注意」「火の用心」などのポスターを貼る
家電の対策
家電の対策を以下に挙げます。
家電は火災を起こす要因になりやすいため、安価でできる家電対策も普及してきています。
今すぐ導入できる対策もあるので、参考にしてみて下さい。
・安全装置付き調理器具にする
・ガスではなくIHに変える(ただし、IHクッキングヒーターでも加熱する力によって火災に繋がる危険があるため注意が必要)
・電気ストーブをエアコンに変える
・プラグ安全カバーをつけてトラッキング火災防止をする
・Alexaなどのデバイスを利用し、出先から家の様子をスマホで確認する
・監視用ロボットを導入する
・火災報知器を設置する
まとめ
認知症が原因で火事が起こりやすい理由、認知症による火事の対策についてご紹介させて頂きました。
火事になる前に、しっかりと対策をとっていれば不安も減ります。
できる限りの火事対策をしておくことが大切です。
また、火災などの被害を軽減するために、地域との関わりも大変重要です。
「地域見守り活動」により、安心して暮らせる仕組みも構築されてきています。
安心して住み続けることができるよう、この記事が何か1つでも参考になれば幸いです。