「カゾクを支える、カイゴを変える」
介護と親と向き合うサイト

コロナ疲れ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

実家でずっとテレワークしているせいで、だんだん居心地が悪くなってくる。テレビでは相変わらず、母が好きらしいO先生が出ているが、見るからに疲れているようだし言うことも少しおかしな感じになってきていて、司会者も変なことを言わないようにわかりやすい質問しかしなくなっているような気がする。

そのせいなのかどうかは知らず、というのもわたしは朝から夕方まで8時間テレワークで別の部屋にいるのでテレビはまったく観ないからだが、夕方のニュースを観に居間に降りてくると、母が、

「緊急事態宣言なんて守っているのは日本人の5分の1に過ぎないのよ。コロナが終息するまで2年はかかるのよ」などと言いだした。

「軽症でホテルに行く人たちって若い人ばかりじゃないの。あれ、ホテル代が浮くからわざと感染しているのよね。そうやって日本人全員に抗体ができるのを待つしかないんだわ。」

聞いているとだんだんいらいらしてくるが、(まてまて、これが世に言う「コロナDV」だぞ)と思って努めて平静を保とうとする。

翌朝、朝食のとき、母が新聞の下段にある週刊誌広告の見出しを指さして、「ほら二年かかるって書いてある」と言う。

さらに別の見出しをさして、「どうして厚労省はアビガン使わせないのかしら?」

「いや、使おうとしてるでしょ?」とわたしは答える。

(でも、もともと備蓄がないうえに、本来の適用であるインフルエンザの患者に回らなくなるような使い方は、少なくとも厚労省レベルではできないのだろう)と思ったが、それを言うと説明するのが面倒になりそうな気がしたので黙っていた。

昨日のテレビでO先生が、すべての医療従事者にただちにアビガンを投与すべき、と力説していたばかりである。O先生は、PCR検査もただちに全医療従事者にすべきである、とおっしゃっていた。はて、どちらも実際の患者数に追い付かないことが最大の問題ではなかったのか?

「だってほらここに書いてある」とまた週刊誌の見出しを指さす。「軽症の人にしか効かなくて、重症の人には意味ないっていうから、そのせいなのかねえ。重い副作用があるっていうけど、一生動けなくなっちゃうんじゃいやだけどねえ。」

いや、さすがに、それは副作用のレベルを超えているだろう。死なないけど間違いなく一生植物状態です、みたいな? それでも生きていることを望む人間なんているのだろうか。

「神奈川県は、知事が来るなって言ってたでしょ。なかなか言えないわよ、来るな、なんて。でもはっきり言ってやらなきゃわからないんだから、しかたないわよねえ。」

そして【緊急事態宣言 正念場】という見出しを見て、「正念場って言ってもねえ、ぜんぜんじゃない。どうしようもないわね。だれも守っちゃいないんだから。だれも理解してないのよ、この事態を。これから2年かかって世界中で不況の嵐が吹き荒れるのね」

そう言いがら、立ちあがって外出の支度を始めたので、驚いて「なにしてるの?」と聞くと、

「コープにいくのよ。コープのほうがキャベツが新鮮なのよ」という。

「コープは混んでないの?」

「どうして? 混んでるわよ。最近開くのが遅くなってますます混むようになっちゃって。どうしようもないわ」

わたしには、母もまったく理解していない側のひとりのような気がした。

※こちらの記事は、2020年5月4日にながさごだいすけ氏によって、note上にて公開されたエッセイになります。

https://note.com/carenavi/n/na8c9a6f98024

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

ご相談はこちらから