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孫のお受験(1)

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11月1日ごろにお受験(面接)があるはずなので、数時間だけ上の子の面倒を見てもらえないかと、弟夫婦が母に依頼したのは、9月に一家4人で来た時だったと思う。帰りがけに母に頼んでいったのだが、正確な日時が決まっていないので、決まったら電話でしらせるということだった。

弟夫婦には二人の娘がおり、上の子は既に昨年から、祖母つまりわたしの母が出た女学校の幼稚園に通っているが、2歳離れた下の子も来年の4月から幼稚園に行く歳なので、11月にはお受験があるということは、以前から母が話していた。

幼稚園の面接には、夫婦そろって行かなければならないらしく、上の子を連れていくわけにはいかないから、どうしてもその間面倒をみてもらう必要があるということだった。ベビーシッターを頼んでも良かったのだろうが、そこは弟が気を利かせたのだろう。

母は、孫と二人で過ごせるというので大喜びだったと思う。初めてかどうかは知らないが、多分、一二回しかそんな機会はこれまでなかったはずだ。

それで最初のうちは、かなりはりきっていたのだが、そのうちにいつもの心配性がまた頭をもたげてきて、なにか遊ぶ道具がないと孫と二人きりで数時間を過ごすことはできない、と思い始めたようである。正確な日時を弟が連絡してきたのは、すでに当日まで1週間を切ったある日のことだったが、今さらのように、トランプとかるたを買いに行きたいが、売っているだろうか、と母はわたしに聞いてきた。

「おもちゃ屋にいけばいくらでも売っているでしょ」とあまり考えもせずにわたしは答えた。かるたはともかくトランプに季節は関係ないだろうし、かるたもおそらくえり好みしなければあるだろうと漠然と思ったからだった。

「ネットでも買えるんじゃないの?」と母はわたしのコンピュータをみながら言う。

それはそのとおりだが、あいにくお受験の日は4日後に迫っていて、万が一届かなかった場合のことを考えるとネットは避けた方が無難だと答えた。

だが、実は、間に合わないことより、ネットで初めてのものを買うときのリスクが、わたしは気になっていたのである。

「ネットで買った物って、たいてい予想したものとは違っていることが多いじゃない」とわたしは説明した。

「そうかしら。こたつだって電気毛布だって、重宝してるじゃない」と、以前買って、確かになくてはならない存在になっている品物を並べて母は答える。

それは確かに重宝しているのだが、こたつの温度調節ネジは、文字通りネジのように細かった。電気毛布は、毛羽立って部屋中に綿くずが舞うような「毛布」だった。天井からつるすペンダントライトは、蛍光灯の太さが通常の半分しかなかった。機能的には値段相応であり、なんの問題もなかったが、ネット通販では本しか買ったことがなかったわたしは、少なからず意表を突かれ、一瞬騙されたような気分になったのも事実である。

母の使っている血圧計の測定位置表示ランプ(手首の位置が心臓の高さにあることを示す)が点かなくなったので、アマゾンで同じブランドのいちばん安い製品を購入したら、そもそも表示ランプの機能そのものがなかった、ということもあった。確かに表示ランプは必須ではないかもしれないが、それがない製品があるなんて思いもしなかったのでコロっと騙されたのである。サイトにでてくる血圧計はやはり表示ランプ付きのものが多く、わたしはそれは必須だと信じ切っているから、もちろん付いてるよな、と思って安心し、そのうち値段に注目して安いものを探すうちに、表示ランプがなくなっていることに気付かないまま、買ってしまったというわけである。よくある話だ。でもないか。

トランプやかるたにも、きっとそういうなにかがあるだろう、とわたしは思ったのである。おもちゃは実用品とは違って、ただ使えれば良いというものではない。おもちゃ屋で見たって、中身のすべてを見られるわけではないから、リスクはあるものの、パッケージや開けられる範囲で中身を見られるのは、やはりホームページ上で見るのとはけた違いの情報をもたらしてくれるし、なにより、それ以上の情報は得られなかったのだと諦めもつく。

弟夫婦の家に行く途中の乗り換え駅は大きな町なので、当日早めに出かけて、買っていくということに話は決まったのだった。

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