認知症の介護がうまくできない。。。
被介護者との関係性がよくない。。。
このような悩みを抱えているのではないでしょうか?
この記事では、認知症ケアの新常識と言われているユマニチュードについて解説していきます。
ユマニチュードとは、食事介助や清拭、入浴、更衣などの実践的な認知症ケアの技法です。
フランスで生まれたこの技法の目標や大切な観点をまとめています。
少しずつ日常に取り入れてみましょう!
目次
1.ユマニチュードとは
ユマニチュード(Humanitude)とは、食事介助や清拭、入浴、更衣などを行う際の実践的な認知症ケアの技法です。
フランス語で「人間としての尊厳」や「人間らしさ」を意味しており、ケアされる人とケアする人という考えではなく、関係や絆を中心にコミュニケーションを取ります。
フランス人の体育学の専門家イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが、40年にわたって編み出した実践的なケア技法であり、世界中の介護現場で取り入れられています。
日本でも少しずつ取り入れられており、この技術を身につけられれば、介護のプロだけでなく、ご家族も認知症ケアができるようになります。
2.ユマニチュードの目標
ユマニチュードは、ケアのレベルを3段階に分け、必要なケアを選択して行います。
2-1.回復を目指す
寝たきりの場合、筋力の低下や関節の可動域の縮小などが起こり、症状が悪化してしまいます。
そのため、少しでも立てるのであれば、立ったまま清拭を行うなど筋力低下や関節の可動域の低下を防ぎます。
2-2.機能維持
全てを介護するのではなく、なるべく残存能力を使ってもらうようにケアを行います。
例えば、少しでも歩けるのであれば、なるべく車いすを使わずに歩くなど、日々の行動に残存能力を活かせるように工夫を行います。
2-3.最期まで寄り添う
健康の回復や機能維持が難しい場合は、ご本人が尊厳をもって過ごせるように最後まで寄り添います。
3.4つの柱
ユマニチュードは、4つの動作を基本としています。
一つ一つ解説していきます。
3-1.見る
認知症ケアにおいて「見る」はとても重要です。
水平に目線を合わせ、正面から見つめることで、平等・誠実を伝えることができます。
また、近さも大切で、親密さや優しさを伝えられます。
そして、ユマニチュードでは0.5秒以上見つめ合うことが必要です。
目線を合わせ相手の正面から顔を近づけ、見つめる時間を意識的に長くとりましょう。
3-2.話す
会話はポジティブな言葉を意識し、ゆっくりと穏やかに行いましょう。
返事やうなずきがない場合でも、行っているケアの内容を実況中継するオートフィードバックという技法を使い言葉が途切れないようにします。
このように言葉を重ねることで、介護の受け手が自分の存在を再認識できるきっかけとなります。
3-3.触れる
ゆっくりと優しく、手のひら全体で包み込むように触りましょう。
触れるときは、肩や腕など体の鈍感な箇所から触れます。
手や顔など敏感な箇所から触れると驚かせてしまう恐れがあります。
肩や腕から移動させる際もびっくりさせないように、手のひら全体で触れながらゆっくりと動かしましょう
3-4.立つ
立つことで筋力の低下や骨粗しょう症の抑制、関節の可動域の改善など様々な面で健康に良い影響を与えます。
さらに、立つことで空間を立体的に認知しやすくなり、自分自身の存在を意識することができます。
可能であれば一日20分ほど立っている時間作ることで健康を保ちやすくなります。
1分しか立てない場合は、数回に分け合計20分になるように調整してみましょう。
4.5つのステップ
ユマニチュードでは、ケアの始めから終了までの流れが重視されています。
始めから終了までは、5つのステップに分かれており一つずつ解説していきます。
4-1.出会いの準備
出会いの準備では、人が会いに来たと伝え、受け入れるために準備をしてもらいます。
方法としては、ノックを意識します。
中にいる人に聞こえるように3回ドアをノックします。
その後3秒待ちましょう。
反応があればゆっくりと入室し、無ければ同じことを繰り返しましょう。
2回繰り返して反応がない場合は一回ノックして入室します。
ノックから数秒空けることで人を受け入れる準備ができます。
4-2.ケアの準備
ケアの準備では、関係性を築く段階で、ケアをしに来たのではなく「あなたに会うために来た」と感じてもらうことが重要です。
正面から近づき、目を合わせ、目が合ってから3秒以内に話し始めることがポイントです。
ポジティブな声掛けを行い、3分以内にケアの同意を確認します。
もし、3分以内にケアの同意が得られない場合は、いったんあきらめましょう。
適切なケアの準備の段階を経ることで、認知症の攻撃的な行動が7割減少し、協力的になることが知られています。
4-3.知覚の連結
知覚の連結では、4つの柱のうち「見る」「話す」「触れる」のうち2つ以上を使いながらケアを行います。
この3つが矛盾することなく一貫して相手を大切に思っているという意図を込めてケアを行いましょう。
例えば、優しい言葉を投げかけているのに、目がこわばっているなどをしてしまうと行動に矛盾が生じてしまいます。
4-4.感情の固定
感情の固定では、ケアの終了後にケアを受けた経験を素敵なものとして感情の記憶に残します。
「楽しかったですね」「気持ちよかったですね」などポジティブな声掛けとケアに協力をしてくれたお礼を伝えましょう。
「ケア=心地の良い経験・楽しい時間」という記憶が残るように意識するとよいでしょう。
4-5.再会の約束
感情の固定が終わったら再開の約束をしましょう。
認知症だと記憶できないかもしれませんが、優しくしてくれる人がまた来てくれるという楽しみは感情記憶に残ります。
そうすることで、次回も笑顔で迎えてくれる可能性が高まります。
メモ帳やホワイトボードなどにメモをしておくことも有効な方法です。
5.まとめ
ユマニチュードは、誰でも身に付けられる介護技法です。
この技法をうまく身に付けられると、認知の患者は感情的に穏やかになり、ご自身の介護の負担も軽減することができます。
特別な時間を取らずに、日常のケアのプロセスのなかで実践できるため、少しずつ取り入れてみましょう。