「介護の移乗ってどうやるの?」
「介助で腰を傷めないか不安」
そういった悩みを抱えていませんか?
介護が必要な高齢者にとって、移動介助は日常生活で欠かせないサポートの一つです。
しかし、やり方を間違えてしまうと、腰痛や怪我を招く可能性もあります。
この記事では、介護における移乗のやり方や、腰痛を防ぐポイント、負担を軽減する8原則を紹介します.
目次
1.移乗とは
移乗とは、別の場所に乗り移ることです。
たとえば、ベッドから車椅子、車椅子からトイレなどに移動することなどがあります。
日常生活で欠かせない移動とその介助は、身体介護の基本とも言えます。
2.移乗の手順
移乗の手順は以下の通りです。
ここでは、移乗の中でも特に多いベッドから車椅子への移乗を紹介します。
まずは、被介助者をベッドから起こします。
被介助者は足を床につけて浅く座り、被介助者の足を手前に引きます。
介助者が被介助者の脇の下と腰を持って支え、介助者に寄ります。
被介助者がお辞儀をするように立ち上がります。
介助者は、腰を中心に方向を転換します。
介助者がお辞儀をするようにして、被介助者をゆっくりと座らせます。
最後に、被介助者が車椅子に深く腰掛け直します。
3.移乗の注意点
3-1. 膝くずれによる怪我への注意
膝くずれとは、膝が体を支えきれずに体からガクッと力が抜けてしまうことです。
その原因には、立ちくらみや目眩が挙げられます。
もともと介助の必要性が低い方でも、急に立ち上がると膝くずれの危険性があります。
3-2. ずり落ちへの注意
ずり落ちとは、移乗の際にベッドや椅子から滑り落ちてしまうことです。
その原因には、ベッドや椅子に腕をかけていない状態で浅く座るなどの不安定な状態が挙げられます。
シーツや座布団の上に座る時には特に注意が必要です。
3-3. 皮膚剥離への注意
皮膚剥離とは、皮膚の表面が剥がれてしまうことです。
その原因には、高齢により皮膚が弱くなってしまうことが挙げられます。
ベッドの柵にぶつけたり、塗装された椅子などに擦れたりするだけでも皮膚剥離の可能性があります。
3-4. 腰痛への注意
介助者は腰痛に注意が必要です。
その原因には、介助者が間違った姿勢で移乗介助を続けることにあります。
負担軽減のためにも、正しい介助姿勢を身につけることが大切です。
5章で腰への負担を軽減する8原則を紹介しています。
4.腰を痛めないためのコツ
腰を傷めないためには、長時間前かがみの姿勢で作業を続けないことが大切です。
しかし、身体介護が必要な方にとって、移乗介助が必要な場面は日常に多々あります。
日常的に移乗介助をする方が腰への負担をできるだけ減らすには、正しい介助姿勢を身につけることと、コルセットの使用がおすすめです。
5.負担を軽減するボディメカニクス8原則
ボディメカニクスとは、最小の力で介護ができる技術の一つです。
この章では、8つの原則とその仕組みを解説していきます。
5-1. 重心を低くする
介助の際に、介助者の重心をできるだけ低くするように心がけましょう。
姿勢が安定し、腰への負担も軽くなります。
被介助者を動かす時に、腰ではなく膝の屈伸を利用することで楽に移動しやすくなります。
5-2. 足幅を広く保つ
足幅を広く保つことで、体を支える基盤となる面積が広くなります。
体を支える面積が広がることで、姿勢が安定しやすくなります。
足幅は前後左右に広げるイメージを保つとより良いです。
5-3. 介助者と被介助者の重心を近くする
お互いの重心を近くすることで、体が安定する上、力が一定方向に働きやすくなります。
移乗の際に力が一定方向に働くため、無理な力を入れる必要がありません。
5-4. てこの原理を活用する
てこの原理とは、力が働くところと力を加えるところの間に支点を作ることで、小さな力で重いものを動かすことのできる原理です。
例えば、介助者の肘や膝などを支点にして被介助者を動かすことで、少しの力で介助しやすくなります。
5-5. 大きな筋肉を意識して使う
介助者は、大きな筋肉を意識して使うことで、一つの筋肉にかかる負荷が小さくなります。
例えば、被介助者を腕だけで移乗しようとせず、足や腰など全身を使いましょう。
5-6. 介助者の体をねじらない
体をねじると、姿勢が不安定になることで怪我や腰痛に繋がる恐れがあります。
体をねじらないようにするには、介助者の足を動作方向に向けておくと良いです。
5-7. 被介助者を水平に動かす
ベッド上を移動する場合には、持ち上げず、滑らせるようにすると良いです。
また、その際には被介助者を手前に引くような動作で介助することをおすすめします。
奥に押すよりも手前に引く方が少ない力で介助できるためです。
5-8. 被介助者の体をコンパクトにまとめる
被介助者の体をコンパクトにまとめることで、少ない力で介助ができます。
被介助者の腕を胸の前で組んだり、膝を曲げたりすると良いです。
コンパクトにまとめることで、摩擦面の減少や、力の分散防止が期待できます。
6.移乗前の準備
6-1. 周辺環境の整備
安全に移乗を行うためには、移乗前に周辺環境を整備する必要があります。
ベッドの柵を外したり、かけ布団をベッドから下ろしたりすると良いでしょう。
さらに、リハビリシューズを持っている場合には、転倒防止のため履いてもらうことをおすすめします。
6-2. 車椅子の移動と固定
車椅子に移乗する場合には、車椅子をしっかりと固定しましょう。
また、肘掛けと足置きを上げることも大切です。
7.まとめ
最後に、移乗は身体介護の基本でありながら、介助者の負担が大きいものです。
介護の負担を軽減するためにも、この記事で紹介したボディメカニクスの8原則を実践してみてください。
また、介助者のコルセット使用や、被介助者の介護用靴など、介護グッズの利用もおすすめします。