現在の日本では、平均寿命と健康寿命の差が広がっていることが大きな問題となっています。
健康寿命とは、介護の手に頼らず暮らしていける年齢です。
しかし、平均寿命は伸びているにもかかわらず、健康寿命は比例して伸びておらず、介護が必要な状態が長くなっています。
そして、健康寿命を伸ばすために欠かせない指標がIADLです。
IADLとは、Instrumental Activities of Daily Livingの略で、少し複雑な日常生活動作を指します。
この記事では、IADLの評価方法や低下の原因、予防方法を解説します。
目次
1.IADLとは
IADLとは、Instrumental Activities of Daily Livingの略で、少し複雑な日常生活動作を指します。
日本語に訳すと、手段的日常生活動作です。
IADLには、家事や買い物などの日常生活を送るうえで必要な動作ができることに加え、判断力や意思決定できるかどうかも含まれています。
そのため、QOLを高めるうえでも欠かせない指標となっています。
IADLの例
買い物、洗濯、掃除、服薬管理、交通機関の利用等
2.IADLとADLの違い
ADL(日常生活動作)とは、Activities of Daily Livingの略で、日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作のことです。
具体的には、移動・食事・入浴・排泄などがこれにあたります。
ADLは、高齢者や障害者の日常生活レベルを測る重要な指標です。
ADLはBADLとIADLに分類することができます。
そのため、IADLはADLのうちの1つと考えられます。
3.BADLとIADLの違い
BADLとは、Basic Activity of Daily Livingの略で、基本的な日常生活動作を指します。
例:起き上がり、歩行、食事、排泄・入浴等
BADLとIADLの違いは以下のようになります。
BADL | IADL | |
移動 | 歩くことができる | 交通機関を利用できる |
入浴 | 1人で入浴できる | 入浴後に浴槽の掃除ができる |
食事 | 1人で食事ができる | バランスの取れた食事を作れる |
4.IADLの評価法
IADLを評価する方法は、Lawtonの尺度や老研式活動能力指標、DASC-21など様々あります。
今回は、最も広く使われているLawtonの尺度を解説します。
以下のスコアは、高ければ高いほど自立しているという評価になります
項目 | 男性 女性 |
A 電話を使用する能力 1. 自分から電話をかける(電話帳を調べたり、ダイアル番号を回すなど) 2. 2, 3 のよく知っている番号をかける 3. 電話に出るが自分からかけることはない 4. 全く電話を使用しない |
1 11 1 1 1 0 0 |
B 買い物 1. 全ての買い物は自分で行う 2. 小額の買い物は自分で行える 3. 買い物に行くときはいつも付き添いが必要 4. 全く買い物はできない |
1 1 0 0 0 0 0 0 |
C 食事の準備 1. 適切な食事を自分で計画し準備し給仕する 2. 材料が供与されれば適切な食事を準備する 3. 準備された食事を温めて給仕する、あるいは食事を準備するが適切な 食事内容を維持しない 4. 食事の準備と給仕をしてもらう必要がある |
1 0 0 0 |
D 家事
1. 家事を一人でこなす、あるいは時に手助けを要する(例: 重労働など) 2. 皿洗いやベッドの支度などの日常的仕事はできる 3. 簡単な日常的仕事はできるが、妥当な清潔さの基準を保てない 4. 全ての家事に手助けを必要とする 5. 全ての家事にかかわらない |
1 1 1 1 0 |
E 洗濯 1. 自分の洗濯は完全に行う 2. ソックス、靴下のゆすぎなど簡単な洗濯をする 3. 全て他人にしてもらわなければならない |
1 1 0 |
F 移送の形式 1. 自分で公的機関を利用して旅行したり自家用車を運転する 2. タクシーを利用して旅行するが、その他の公的輸送機関は利用しない 3. 付き添いがいたり皆と一緒なら公的輸送機関で旅行する 4. 付き添いか皆と一緒で、タクシーか自家用車に限り旅行する 5. まったく旅行しない |
1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 |
G 自分の服薬管理 1. 正しいときに正しい量の薬を飲むことに責任が持てる 2. あらかじめ薬が分けて準備されていれば飲むことができる 3. 自分の薬を管理できない |
1 1 0 0 0 0 |
H 財産取り扱い能力 1. 経済的問題を自分で管理して(予算、小切手書き、掛金支払い、銀行へ 行く)一連の収入を得て、維持する 2. 日々の小銭は管理するが、預金や大金などでは手助けを必要とする 3. 金銭の取り扱いができない |
1 1 1 1 0 0 |
5.IADLが低下してしまう原因
IADL低下の原因は、様々な疾患や老化が考えられます。
認知症や老化による筋力低下、糖尿病などの生活習慣病、骨折などが引き金となるケースが多いです。
また、IADLの低下から、認知症や廃用症候群などの疾患につながる場合もあり、早期のIADL低下の予防が重要になります。
6.IADL低下を予防するためにできること
6-1.残存能力を活かす
過度に介護をしてしまうと、今までできていたことが、あっという間にできなくなってしまいます。
全てを介護するのではなく、なるべく残存能力を使ってもらうようにケアを行いましょう。
例えば、少しでも歩けるのであれば、なるべく車いすを使わずに歩くなど、日々の行動に残存能力を活かせるように工夫を行います。
しかし、できる範囲を超えたものをやってもらうとストレスにつながるため、日々の体調や状況に応じて考えましょう。
6-2.住宅改修で生活環境を整える
暮らしやすい環境を整えることで、自分の力で生活ができるようになります。
介護保険の制度には在宅介護に必要な住宅改修費が含まれています。
これは、介護のための住宅改修を支援する仕組みです。
自宅に手すりを付けたり、階段に滑り止めを付けたりする住宅改修を行う場合、工事費用の7~9割が支給されます。(上限20万円まで)
この機会に住宅改修も検討してみてください。
7.まとめ
いかがでしたでしょうか?
IADLとは、Instrumental Activities of Daily Livingの略で、少し複雑な日常生活動作を指します。
日本語に訳すと、手段的日常生活動作です。
IADL低下の原因は、様々な疾患や老化が考えられます。
定期的にセルフチェックを行い、異変を感じた時にはかかりつけ医に相談しましょう。