過剰介護とは、文字の通り過剰な介護を指します。
過剰な介護は、身体機能や認知機能を低下させてしまい、最終的には寝たきりの状態に繋がってしまう可能性が高まります。
そして、過剰介護は身体面と認知面に分類することができるのです。
■身体面の過剰介護の例
1人で着替えられるにもかかわらず、時間がかかるからと着替えを手伝ってしまう
■認知面の過剰介護の例
認知機能が低下しつつある方に対して、「12時になったのでお昼の時間ですよ」と教え、時間を判断する機会を奪ってしまう
目次
1.過剰介護が問題となる理由
1-1.被介護者の身体・認知機能の低下
過剰な介護を受けることで、被介護者の身体・認知機能は低下してしまいます。
人間の筋力は、1週間の絶対安静で10~15%、3~5週間で50%まで低下するといわれています。
特に高齢者は、急激に低下が進んでしまうのです。
1-2.廃用症候群のきっかけに
廃用症候群とは、過度な安静や寝たきりなどで活動量が低下したときに生じる身体の様々な病的状態を差します。
廃用症候群は、子どもや若者にも現れる症状ですが、高齢者に多く見られます。
理由としては、加齢により身体機能が低下し始めているためと考えられています。
残存能力があるにも関わらず、車いすや杖などを使用する場合、体を動かす機会が損なわれてしまい、廃用症候群が引き起こされる可能性が高まります。
1-3.介護者の介護疲れ
入浴介助や排泄介助・起床介助などにはかなりの力が必要なので、過剰な介護をしてしまうと、身体的負担は非常に大きいです。
これらの身体的負担は、腰やひざ、ひじなどの関節にたまります。
一度痛めてしまっても介護はやめられないので、身体をかばいながら介護をしなければなりません。
このような毎日を過ごすことで、介護者の身体的負担は相当なものです。
また、介護をがんばりすぎてしまい、突然やる気を失うことがあります。
何もかもが嫌になったり、不安や怒りなど情緒不安定になったりする可能性が高まります。
2.過剰介護にならないためのポイント
2-1.本人ができることは本人にしてもらう
過度に介護をしてしまうと、今までできていたことが、あっという間にできなくなってしまいます。
全てを介護するのではなく、なるべく残存能力を使ってもらうようにケアを行いましょう。
例えば、少しでも歩けるのであれば、なるべく車いすを使わずに歩くなど、日々の行動に残存能力を活かせるように工夫を行います。
しかし、できる範囲を超えたものをやってもらうとストレスにつながるため、日々の体調や状況に応じて考えましょう。
2-2.身体面のだけでなく、認知面の過剰介護の防止
過剰介護には、身体面の過剰介護と認知面の過剰介護があります。
身体面の過剰介護予防に目が向きがちですが、認知面の過剰介護予防も重要です。
意識をしていないと、気づかぬうちに認知面の過剰介護をしてしまっていることも少なくありません。
まずは、認知面の過剰介護をしていないか意識してみましょう。
2-3.住宅改修で生活環境を整える
暮らしやすい環境を整えることで、自分の力で生活ができるようになります。
介護保険の制度には在宅介護に必要な住宅改修費が含まれています。
これは、介護のための住宅改修を支援する仕組みです。
自宅に手すりを付けたり、階段に滑り止めを付けたりする住宅改修を行う場合、工事費用の7~9割が支給されます。(上限20万円まで)
この機会に住宅改修も検討してみてください。
介護保険の対象となる主な6つの工事
①手すりの取り付け
階段や廊下、トイレ、浴室などに手すりを取り付ける工事です。
手すりの選び方はこちらをご覧ください。
http://carers-navi.com/care-handrail
②段差の解消
玄関や浴室などの段差や傾斜を解消する工事です。
取り付け工事を行わず、スロープを設置する場合などは福祉用具購入費の支給で補助をもらえます。
③滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
畳からフローリングや浴室を滑りにくいものへの工事などが適用されます。
滑り止めシートやマットを置くだけでは対象となりません。
④引き戸等への扉の取替え
開き戸を引き戸や折り戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える、ドアノブの変更などの工事です。
ただし、自動ドアに取り換える場合、動力部分の補助はありません。
⑤洋式便器等への便器の取替え
和式便器から洋式便器への工事、洋式トイレの向きや位置の移動工事が適用されます。
洋式トイレを暖房や洗浄機能付きトイレに切り替えは適用外です。
⑥その他上記の住宅改修に付帯する工事
手すり取付けのための下地補強
浴室の段差解消のための給排水設備工事
床材変更のための下地の補修
扉を取替えるための改修工事
便器を取替えるための給排水設置工事
など
3.ユマニチュードを取り入れよう
ユマニチュード(Humanitude)とは、食事介助や清拭、入浴、更衣などを行う際の実践的な認知症ケアの技法です。
フランス語で「人間としての尊厳」や「人間らしさ」を意味しており、ケアされる人とケアする人という考えではなく、関係や絆を中心にコミュニケーションを取ります。
フランス人の体育学の専門家イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが、40年にわたって編み出した実践的なケア技法であり、世界中の介護現場で取り入れられています。
日本でも少しずつ取り入れられており、この技術を身につけられれば、介護のプロだけでなく、ご家族も認知症ケアができるようになります。
ユマニチュードは、ケアのレベルを3段階に分け、必要なケアを選択して行います。
3-1.回復を目指す
寝たきりの場合、筋力の低下や関節の可動域の縮小などが起こり、症状が悪化してしまいます。
そのため、少しでも立てるのであれば、立ったまま清拭を行うなど筋力低下や関節の可動域の低下を防ぎます。
3-2.機能維持
全てを介護するのではなく、なるべく残存能力を使ってもらうようにケアを行います。
例えば、少しでも歩けるのであれば、なるべく車いすを使わずに歩くなど、日々の行動に残存能力を活かせるように工夫を行います。
3-3.最期まで寄り添う
健康の回復や機能維持が難しい場合は、ご本人が尊厳をもって過ごせるように最後まで寄り添います。
https://carers-navi.com/humanitude
4.まとめ
いかがでしたでしょうか?
過剰介護には、身体面の過剰介護と認知面の過剰介護があります。
身体面の過剰介護予防に目が向きがちですが、認知面の過剰介護予防も重要です。
また、過剰な介護は、介護者自身の負担にもなってしまいます。
この機会に改めて、過剰な介護になっていないか意識してみましょう。