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世帯分離で介護の負担を楽に!!メリットや手続き・注意点を解説

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介護が長期化すると様々なサービス費用に加え、通院費など経済的な負担が大きくなっていきます。

世帯分離という言葉は聞いたことがあるでしょうか。

「介護が必要な親と同居している」「介護をするため、親と同居する」という人はぜひ一度検討する必要があるでしょう。

ではここから介護を抱える家族の世帯分離について解説をしていきます。

1章では世帯分離の定義について説明しているので、世帯分離については知っているという方は飛ばして2章のメリット・デメリットからお読みください。

 

1.世帯分離とは

世帯分離とは、同じ住所で暮らす世帯を分けて住民登録をすることです。

例えば、あなたが父親、母親、自分、自分の妻、自分の子供と住んでいたとしたら、父親と母親、自分と自分の妻と自分の子供で世帯を分けて住民登録をします。このことを世帯登録といいます。

例 <世帯分離前(1世帯)>

世帯主:父親

世帯員:母親、自分、自分の配偶者、自分の子供

  <世帯分離後(2世帯)>

世帯主①:父親

世帯員:母親

世帯主②:自分

世帯員:自分の配偶者、自分の子供

よく、世帯分離=親子の縁を切るという誤解があります。

しかし、世帯分離は戸籍謄本の変更の話ではなく、あくまでも住民票上の記載を変更する話です。

そのため、世帯分離=親子の縁を切るというわけではありません。

そして、親の介護を抱えている家庭にとって世帯分離をすることで介護サービス費の節約などメリットがある場合もあります。

 

世帯分離が影響してくる費用の制度は、下記のとおりたくさんあります。

1.介護保険保険料

2.介護保険自己負担割合

3.高額介護サービス費

4.特定入居者介護サービス

5.医療保険(国民健康保険)保険料

6.70歳以上の場合の医療保険負担割合

7.高額療養サービス費

また上記の中には、市町村単位で基準が違うものもあるので、一概に言えず、上記全てを考慮して試算する必要があります。つまり、サービス利用負担額が減っても保険料がトータルで増えることもあるため、少し複雑です。

次章では世帯分離をするメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

 

2.介護を抱える家庭が世帯分離をするメリット・デメリット

介護を抱える家庭が世帯分離をするメリット・デメリットは以下の表のとおりです。

メリット デメリット
介護サービスの自己負担額を軽減できる場合がある 家族に介護が必要な人が2人いる場合は損をすることもある
住民票の取得に手間がかかる

1つずつ解説していきます。

 

2-1.世帯分離をするメリット

世帯分離をする最大のメリットは「介護サービスに関わる自己負担額を軽減できる場合があること」です。

介護サービスを利用する時には公的介護保険を利用します。

その際にかかる費用として月々の介護サービス利用額には、軽減策として「高額介護サービス費支給制度」が定められ、上限額が設けられています。

つまり以下の表のように、介護サービス利用額には自己負担額の上限額が定められています。

対象者の区分 負担の上限
本人または世帯

全員または一部が住民税課税者

現役並み所得者 44,400円(世帯)
一般所得者 44,400円(世帯)

*世帯の65歳以上全員の

利用者負担割合が1割の場合、

平成29年8月から3年間は

年間の上限額446,400円

世帯全員が

住民税非課税

下記以外 24,600円(世帯)
年金収入80万円(年)以下など 24.600円(世帯)

15,000円(個人)

生活保護受給者など 15,000円(個人)

ここでのポイントは世帯全員の住民税が「非課税」かどうか。

世帯全員が住民税非課税の場合、本人または世帯のどなたかが住民税課税者の場合に比べ、負担の上限額が変わってきます。

例えば、住民税を納めているあなたが住民税を払っていない両親と同じ世帯の場合は住民税課税世帯となり、親にかかる介護サービス費用の自己負担上限額は44,400円です。

対して、住民税を納めているあなたが住民税を払っていない両親と同居しているものの、違う世帯にしている場合は親にかかる介護サービス費用の自己負担上限額は24,600円となります。

ここでの例を見ると同じ世帯か、違う世帯かどうかで、月々19,400円、年間232,800円の違いが生まれました。

また、親が75歳以上であれば、医療保険は後期高齢者となるため、国保保険料は関係なくなるため、トータルでみて節約になる場合がほとんどです。(医療保険を上限額まで使わなければ節約にはならない)

このように介護サービスを自己負担の上限額以上に利用している場合には、世帯分離をすることで負担が少なくなり、大きな節約になるメリットがあります。

[おまけ]

世帯分離をすることは医療費の負担額の節約になる場合もあります。ただし、世帯分離をすることで、自動的に保険の扶養からはずれ、保険料が二重にかかってきますので、それも踏まえて、つまり負担額と保険料の両面をトータルで考える必要があります。

下記は、高額医療を利用した場合の負担額が、具体的にどの程度の節約になるか表にまとめました。

同一世帯の世帯員全員が市町村民税非課税の場合、低所得者Ⅱとします。

高額療養費

(75歳以上の場合)

一般世帯 世帯分離後

(低所得者Ⅱに該当する場合)

一ヶ月にかかる世帯の負担金外来 18,000円 8,000円
入院費用 57,600円 24,600円
入院時 1食あたりの食事代 460円 210円(入院日数が90日を超えた場合、160円)

上限以上に医療保険負担金を支払った場合には、外来は月に10,000円、入院においては月に33,000円の減額があります。

2-2.世帯分離をするデメリット

世帯分離の1つ目のデメリットは、「家族に介護が必要な人が2人いる場合は損をすることもある」です。

家族で2人以上が高額介護サービスを受けている場合、世帯全体で合算し超過する部分について払い戻しを受けることができますが、世帯分離後は合算できなくなり、割高となる場合があります。

例えば、世帯全員が市町村民税非課税で、かつ老齢福祉年金を受給している利用者が同じ世帯に2人いる場合

世帯分離前の負担上限額 月額24,600円
世帯分離後の負担上限額 月額30,000円(一人あたり15,000円)

結果として月5,400円の増額になってしまいます。

世帯分離の2つ目のデメリットは、「住民票の取得に手間がかかること」です。

何らかの理由で住民票などが必要になった場合に、同じ家に住んでいても世帯は別であるため、別世帯の人の分は委任状をもらわないと住民票が受け取れないという手間が発生します。

なお、職場によっては、同一世帯で扶養している家族がいる場合、「家族手当」がもらえることがあるため、一度確認するとよいでしょう。

 

3.世帯分離で費用に差が出た場合の具体例

世帯分離で費用に差が出た場合の具体例を紹介します。

構成家族が、母75歳(後期高齢者 年金収入のみ年額80万円、要介護3で限度額ぎりぎりまで介護サービスを利用中) 子35歳(既婚 国保加入 給与収入 年収600万円)の場合、一年間で世帯分離した場合、自己負担額にどのくらいの差があるかシミュレーションをしてみました。

世帯分離しない場合 世帯分離している場合 費用差額
介護サービス費用 月44,400円×12か月

=528,000円

24,600円×12ヶ月

=295,200円

▲232,800円

世帯分離をすることで1年間でおよそ23万円の負担額削減になります。

 

4.世帯分離の申請手順

それでは、実際に世帯分離をするにあたってどのような申請を行う必要があるか詳しく説明します。

世帯を分離するというと時間がかかり、大がかりだと思われる方も多いかと思いますが、手続き自体は即日で終わります。

自治体によって少し変わることもありますが、基本的には以下の3点をもって各自治体の役所に行きます。

・本人確認書類(マイナンバー・運転免許証等)

・国民健康保険証(国保の場合)

 ・印鑑

まず、各自治体の「転入転出など住民票の異動に関する届出を担当する窓口」が主管課となり、その窓口で住民票上の世帯を分けるための申請を行いたいと申し出れば、必要な届出用紙(移勤届・世帯分離届)がもらえます。その場で記入し、届け出を出せば完了です。

通常は、届出者となる人は、世帯構成員であれば誰でも届出することができ、世帯構成員でない人が手続きする場合には委任状が必要となります。

世帯分離が完了したら、その後は個別の手続きとなり、窓口となる機関によって対応が異なります。

注意点として、届け出を出した後、すぐに上記のメリットを受けられるとは限らないです。自治体によっては、翌年度からという場合もあるため事前に準備をしておくとよいでしょう。

 

5.世帯分離の注意点

最後に世帯分離の注意点を3つ挙げます。

1つ目は、損するか得するかをしっかりと見極めることです。そもそも介護サービスを上限額まで使わない場合には、当然負担額軽減効果はありません。また介護サービス利用の負担額では得をするが、介護保険料や国民保険やその他の税金のことを考えると実は世帯分離する場合より高くなってしまうというケースがあるのでしっかりと各自で確認をすることが大切です。

2つ目は、自治体によっては介護や医療の自己負担額の節約のためでは認められないことです。

本来の世帯分離の目的は、何らかの事情で同じ建物で暮らしているが、生計は別にしている家族が行うものです。介護や医療の自己負担額の節約のために世帯分離するということでは、役所の方に認められない場合があります。つまり、世帯分離を申請する際、費用を抑えることは伏せておくほうがよいでしょう。

3つ目は、本人の収入が低すぎると認められない可能性があります。年収が低すぎることで1人では生活ができないとみなされることもあるそうです。

 

6.まとめ

世帯分離のメリット、申請方法についてまとめました。世帯分離することで介護や医療に関わる費用額がどのように変化するのか理解してただけたと思います。
ただし、介護保険料や医療保険料、税金の控除、家族手当などをトータルで考えると個別に精査する必要があり、必ずしも世帯分離をすることが、負担額を軽減することにはなりません。手続きについては、世帯分離と聞くと大掛かりで申請にとても時間がかかってしまうかと思われますが、申請自体は1日で終わるので、一度世帯分離を検討されることをおすすめいたします。

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