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スマホが壊れた話

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夜中、たぶん午前一時半から二時半の間くらいだったと思うが、スマホの画面が光っていて、暗証番号を要求していた。なにかわからないがリスタートしたのだな、とボンヤリ思いながら暗証番号を入れたが、その後の一時間くらいして気が付くと、キャリアのロゴが表示されたままで固まっていた。

まだ午前三時を少し過ぎたくらいだったので、もういちど寝ようとしたが、気になって眠れない。起きてリスタートしようとしたが、電源ボタンを押し続けてもまったく反応がなかった。バッテリーを取らないとだめだと思って裏ぶたを開けたが、このスマホはバッテリーが取り外せないタイプだった。

なにか強制再起動の方法があるはずだと思い、少し考えた結果、音量ボタンと電源ボタンしか物理的なボタンはないのだから、両方を同時に押し続けるのがもっともありそうだと思って実行したところ、それで再起動はできた。が、やはり同じキャリアのロゴが表示されたところで止まってしまった。

起動しないのならせめて電源を落としておきたかったが、再起動はできても電源をオフにすることはできなかった(結局、スマホ販売店に行くまで、というかそれ以降もずっと電源は付きっぱなしのままだった)。

というわけで、まったくの予定外だったが、スマホが使えないと会社のメールにアクセスができない。つまりテレワークに支障がでるわけで、スマホの修理もしなければならないから、急遽勤め先に行くことにして、四時半に起きた。

母は大慌てで朝食の支度をしてくれたので、麦茶を火にかけっぱなしで散歩にでかけ、信号のところまで行って慌てて帰って来た。信号機のところで、大型車が目の前を猛スピードで通り過ぎ、はっとした拍子に思いだしたのだという。悪い予感がするから気をつけろといわれた。

スマホ販売店は十時からで、少し前に店にいくと、事前予約制と書いた張り紙があった。ただし、故障などの緊急の場合は店の人間に言ってくれと書いてある。そりゃそうだろうと思って店が開くのを待って、Perfumeみたいなお姉さんに事情を話したが、新型コロナのせいなのか最近の店はみなそうなのか、店でOSの書き変えのようなことは一切やっていないということで、画面がフリーズしている場合、工場に送るしかないということだった。

それを聞いてわたしは一瞬躊躇した。

工場に送るということは、初期状態に戻る可能性が高いということだ。つまり機械にしか入っていない情報は100%消える可能性が高い。そこで躊躇する人が多いのだろう。販売店の人もわたしがそう思ったのだと考えて、「どうしますか、持ちかえって検討されますか」と言って心配そうにこちらをじっと見た。

だが、わたしの場合、スマホは勤め先のメールにアクセスする以外の目的で使うことはほとんどないので、その点に特に問題はなかった。本来ならメールもPCでできるのだが、実家のPCはOSが古すぎてメーラーのインストールすらできなかった、というだけのことだった。

このとき、わたしが一瞬躊躇したのは、スマホがなくなると勤め先とのメールのやり取りに支障がでる、ということだった。幸いにも勤め先のメールはGmailなどと同じでサーバーにすべて保存される仕様だったから、受け取ったメールが無くなるという心配はなかったが、メールの読み書きをする別のマシンを用意するのがひどく面倒に感じられたのである。

だが、販売店の人が続けて、「よかったら代替機もお出しできますので」と言ったので、お願いすることにしたのだった。実は、スマホに変えたのが2年前、それまで10年以上ガラケーで故障ひとつなかったわたしは、スマホにタダで代替機が出るなんて思ってもいなかったのである。毎月保険のようなものに入っていたのが幸いして、恐らくただで修理できるだろうと店の人は言っていた。修理後は自宅の方に直送になるそうだ。そしたら代替機を返送するのだという。一週間くらいかかると言っていた。

朝、出かけた時は、母の悪い予感が的中かと憂鬱だったが、なんのことはない、わたしもすっかりデジタルデバイドに取り残されていたというわけである。

(その後スマホは1週間もかからずに修理から戻ってきた。)

※こちらの記事は、2020年6月29日にながさごだいすけ氏によって、note上にて公開されたエッセイになります。

https://note.com/carenavi/n/n1c8975fdcf7a

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