今までにも何度か改定されている「特定処遇改善加算」ですが、令和6年6月にも改定される予定です。
そのため、今まで「特定処遇改善加算」を利用していた事業所も、これから利用しようとしている事業所も、最新情報をチェックすることが大切です。
本記事では、特定処遇改善加算の概要や改定内容、取得状況、要件について詳しく解説します。
特定処遇改善加算とは?
特定処遇改善加算とは、「介護職員等特定処遇改善加算」の略称で、経験や技能のある介護職員の処遇を改善するために、給与アップなどの支援を目的として厚生労働省を中心に運用している仕組みです。
介護サービスを行う事業所にて10年以上の勤続をしている介護福祉士の月給を8万円アップすることを基準として日本政府が1,000億円以上の予算を投じています。
(参照:厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」)
特定処遇改善加算は令和6年度から一本化される
介護職員のさらなる確保を推進するため、令和6年度から従来の「特定処遇改善加算」の制度が一本化されます。
この一本化によって、介護職の待遇をさらに改善するとともに、制度の簡潔化にも成功しています。
たとえば、訪問介護の職員が特定処遇改善加算を取得するとき、改訂前は「処遇改善加算」・「特定処遇改善加算」・「ベースアップ等の加算」の3つを基準に合計の加算率を算出していました。
しかし、令和6年6月に改訂されたのちは以下の表の通り、簡潔になっています。
介護職員等処遇改善加算 | 加算率 |
Ⅰ | 24.5% |
Ⅱ | 22.4% |
Ⅲ | 18.2% |
Ⅳ | 14.5% |
このように、複雑だった要件を再編・統合して簡潔なものにし、さらに加算率を引き上げることとなったのです。
ただし、一度に制度が大きく変化することもあり、令和6年度中の申請に関しては経過措置区分として、改定前の制度の内容を利用した場合であっても加算率の引き上げを行う措置が取られています。
(参照:厚生労働省「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」)
特定処遇改善加算の取得状況
対象となる介護職員が特定処遇改善加算を取得している割合は以下の表の通りです。
令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | |
介護職員処遇改善加算 | 91.5%〜92.3% | 92.4%〜92.9% | 93.2%〜93.3% | 93.4%〜93.8% | 93.8%〜94.3% |
介護職員等特定処遇改善加算 | – | 58.3% | 69.6%〜71.2% | 73.5%〜73.9% | 77.0%〜77.7% |
介護職員等ベースアップ等支援加算 | – | – | – | 85.4% | 92.1%〜93.4% |
(参照:厚生労働省「介護職員の処遇改善に関する加算等の取得状況」)
このように、取得状況は年々高くなっており、取得数の割合も高いことから、希望者はしっかりと取得できる仕組みになっていることが分かります。
特定処遇改善加算の要件
令和6年6月から開始される「特定処遇改善加算」を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
- キャリアパス要件
- 月額賃金改善要件
- 職場環境等要件
それぞれの要件について、以下で詳しく解説します。
1.キャリアパス要件
キャリアパス要件には以下の要件が含まれています。
- キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)
- キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
- キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)
- キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額)
- キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)
キャリアパス要件では、適切な賃金に設定されているかどうか、研修の実施や適切な介護福祉士等を配置しているか、などが重要視されています。
2.月額賃金改善要件
月額賃金改善要件には以下の要件が含まれています。
- 月額賃金改善要件Ⅰ
- 月額賃金改善要件Ⅱ
「月額賃金改善要件Ⅰ」では、新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を月給の改善に充てることが定められており、「月額賃金改善要件Ⅱ」では前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行うことが定められています。
3.職場環境等要件
職場環境等要件で取り組むべき内容は以下の通りです。
- 入職促進に向けた取組
- 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
- 両立支援・多様な働き方の推進
- 腰痛を含む心身の健康管理
- 生産性向上のための業務改善の取組
- やりがい・働きがいの醸成
Ⅰ・Ⅱの区分では上記の2つ以上の内容(生産向上は3つ以上)、Ⅲ・Ⅳの区分では1つ以上(生産向上は2つ以上)に取り組むことが要件となっています。
まとめ
本記事では、特定処遇改善加算の概要や改訂内容、取得状況、要件について詳しく解説しました。
特定処遇改善加算は介護職員の待遇を改善するとともに、介護職員の数を増やすためにも欠かせない制度ですので、正しく内容を理解して活用してみてください。