ヤングケアラーという言葉をご存じでしょうか?
近年の日本では、家族の介護を担う、18歳未満の若者が増えており、彼らはヤングケアラーと呼ばれています。
ヤングケアラーとは、要介護状態の家族がいる場合に、大人が担うような介護を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどをおこなっている、18歳未満の子どもです。
総務省が2012年におこなった調査によると、家族の介護をしている若者(15~29歳)は約17万7,600人に上ります。
約10年前のため、その数はかなり増加していると考えられます。
目次
1.具体的にヤングケアラーがしていること
- 家事(買い物、料理、掃除、洗濯など)
- 一般的な介護(着替え・入浴・トイレの介助など)
- 病院や介護施設への付き添い等
子どもは、介護を通じて、自分が役に立っていると感じたり、家族との結び付きが強まったと感じたりすることもあります。
しかし、介護の負担が大きすぎたり長期に及ぶ場合には、子どもの勉強や人間関係、心身の発達に影響を与えかねません。
欧米諸国では、「子ども一人ひとりも、独立した一人の人間である」という考えをもとに、早くからヤングケアラーに対する支援体制を整えており、日本はやや後手を踏んでいます。
日本では、2020年3月に埼玉県で日本初となる「ケアラー支援条例」が成立されました。
一体なぜ、近年ヤングケアラーが増えているのでしょうか?
2.ヤングケアラーが増えている3つの原因
2-1.少子高齢化
超高齢化社会により、介護が必要な人が増えている一方で介護できる人材の不足が大きく影響しています。
さらに2025年には、介護が必要な高齢者は716万人に上ると推定されており、ヤングケアラーはより深刻な問題となるでしょう。
2-2.核家族・ひとり親家庭の増加増加
ヤングケアラーの増加は、核家族・ひとり親世帯の増加も一つの原因です。
三世代同居率は、1980年から2016年にかけて12%にまで減少しました。
さらに、ひとり親家庭は、2016年では約142万世帯と25年前から比べると1.5倍近くに増えています。
家庭内で誰かが介護が必要になると、子どもに直接その負担が行きやすいです。
特にひとり親家庭では、低所得世帯が多く公的サービス以外のサービスを使う余裕がなく、子どもに負担がかかってしまう現状があります。
3.ヤングケアラーが抱える課題
3-1.学業に影響
ヤングケアラーが抱える最も大きな課題は学業への影響でしょう。
特に介護による遅刻や早退、欠席は直接的に就学機会の制限を及ばします。
埼玉県内の高校2年生を対象とした調査では、ヤングケアラーに当てはまると答えた割合は4.1%に上ることがわかっています。
また、遅刻や欠席、宿題忘れなど学業以外にも、部活動等の参加頻度が減り体力・健康面の影響や、友人と遊ぶ時間が減ることによるコミュニケーション能力の欠如などの懸念も考えられますね。
3-2.精神的ストレス
日々の介護や介護やそれを嘆くことに罪悪感を覚えざるをえない環境などにストレスが溜まってしまいがちです。
それ以外にも自分の時間を確保できなかったり、友人と遊ぶ時間が取れないことによるストレスも考えられます。
このような状態が続いてしまうと、不登校やうつ病、非行などにつながってしまう可能性が高まります。
4.まずは周囲に相談しよう
介護のことや家族のことを周囲に相談するにはかなりの勇気が必要です。
また自分が「介護」をしているという認識すらないかもしれません。
しかし、ひとりで抱え込んでいても解決にはつながりません。
まずは、信頼できる学校の先生や介護の相談所である地域包括支援センターに相談してみましょう。
相談することで心が軽くなるだけではなく、少しでも環境が改善できるようサービスの紹介などもしてもらえる可能性があります。
近年では、ヤングケアラーの問題に取り組むケアラーアセスメントという取り組みが広まっています。
今後は、このような支援団体による取り組みはさらに広がっていくと考えられます。
https://carers-navi.com/care-consultation
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
ヤングケアラーは、少子高齢化により今後も増え続けていくと考えられます。
しかし、介護のことや家族のことを周囲に相談するにはかなりの勇気が必要で、課題が見えにくいという現状があります。
ぜひ皆さんのできる形で、この課題に向き合ってみてください。