「カゾクを支える、カイゴを変える」
介護と親と向き合うサイト

ついにコーラス会を辞める?(2)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

次のコーラス会の日になった。発表会の二日前である。

母は、朝食のときから、すでに楽譜を入れる手提げのバッグを用意していてコーラスに出掛けるつもりだった。二度と行かないと言っていたのが、やはり行くことにしたようだ。なんといっても今週末は発表会なのである。母が行かなければ二人しかいない。あとのことを考えて、母は現実的な選択をすることにしたようだった。妹にやんわりと皮肉を言われるのが怖かったのかもしれない。

ただ、発表会を母は妹にずっと土曜日と言い続けていたが、予定表のカレンダーには前日の金曜日のところに赤いサインペンで発表会と書いてあった。朝食のときわたしがそれを指摘すると、いろいろ連絡が印刷された束の入ったクリアファイルを出してきた。見ると確かに発表会は〇月×日土曜日と書いてあった。

発表会のお知らせは1枚だけでなく、時間割が書かれた紙が2枚あり、よく見ると、1枚は当日の楽屋への入りと出の時刻が書かれたものだったが、もう1枚「リハーサル日程」と書かれた紙があって、水曜日と木曜日の時間割のようなものが書かれてあった。母のコーラス会の時間は午後2時からで、そこにオレンジのラインマーカーが引いてあった。すこしわかりにくかったが、それは水曜日の午前中と木曜日の午後にリハーサルするという意味だろうと思われた。

母は、たぶんもう行かないつもりでいたせいで、そんな日程のことは完全に忘れていたようだった。いまさらのように、「じゃあ、今日はリハーサルがあるのね、たぶん」と他人事のように言い、「このとおりなら、今日はたぶん遅くなるわ」と言って出掛けた。その通りに決まってるだろう、とわたしは思ったが、もちろん口には出さなかった。

実際に帰った来たのは5時近かった。疲れた疲れたと言っていたが、他には何も言わず、いつものようにビールを飲んで6時過ぎに寝てしまった。特に機嫌が悪そうにはみえなかった。

*     *     *     *     *     *

結局、土曜日の発表会にも母は出かけた。嫌がるどころか、むしろ張り切っているように見えた。

夕方の最後の組なので帰宅は遅くなるという。いつものように8時過ぎに出かけるのだと思っていたら、10時過ぎということだった。時間が遅いので、その前にメンバーの一人の家に集まって練習するのだという。それから駅にあるスタバのようなコーヒーショップでランチをするのだと言っていた。

夕方5時過ぎに帰ってきた母は、ご機嫌で、夕飯に牡蠣釜飯を買ってきたと言った。夕飯の弁当はよく買ってくるが、牡蠣なんてはじめてのことである。コーラスの話はひとこともなかったが、これはいつものことだった。むしろ、なにか言うとすればそれは間違いなく不満なのだから、なにもいわずにご機嫌で牡蠣をほおばるというのは、きわめて上機嫌なのだと言って良い、とわたしは60年間培われた経験と勘から判断した。

母は、いつも6時過ぎには寝床に着くのに、8時を過ぎてもTVの前から離れなかった。久しぶりに舞台に立って大きな声を出してきたので、興奮が醒めないのだろうとわたしは思った。まさか、また嫌なことがあって、それで内心、怒りに燃えているということはないだろう、と思いたかったが、一抹の不安は残った。

ついにコーラス会を辞める?(2)|ながさごだいすけ|note

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

ご相談はこちらから