「口腔ケアってどうしたらいいの?」
「お母さんの歯を清潔に保ってあげたい」
あなたは今、こんな悩みを抱えてはいませんか?
介護状態になると難しくなってしまうのが口腔ケアですが、適切な方法を知って大切な人の口内を清潔に保ちたいですよね。
平均年齢76歳男女約3000名を対象にした調査によると平均残存歯数は8.7本{男性10本・女性7.8本}でした。
残っている歯の本数は認知症とも相関があることが分かっています。残っている歯の本数が少ないほど、認知症にかかる可能性が高まるとされています。
また、高齢者の死因第1位は肺炎であり、口腔内の衛生状態の悪化から誤嚥性肺炎を起こすことが多いです。口腔ケアをすることによって、口腔内を衛生的に保つことができるため、誤嚥性肺炎のリスクを減らすことができます。また口腔機能を向上させることで、美味しく食事を摂ることができ、低栄養を防ぐことができます。
そこでこの記事では、適切な口腔ケアの方法から、それに必要なアイテムまで「口腔ケア」の効果とポイントになる情報を全てまとめました。
何歳になっても、自分の親には健康で美味しいものを食べて欲しい。そのためにも口腔ケアは必須なのです。
身体の健康は心の健康に直結するので、大切にしたいですね。
この記事を読めば、口腔ケアの理解はもう大丈夫。
口腔ケアについて理解し、少しでも親の気持ちに寄り添えるようにと思ってこの記事を書きました。少しでも参考になれば幸いです。
では解説していきます。
1.口腔ケアとは
この章では口腔ケアについて分かりやすく解説していきます。
・セルフケア
自分自身で口腔内を清潔に保つこと。歯ブラシや歯間ブラシを用いる。
・プロフェッショナルケア
歯科医や歯科衛生士などの専門家が、口の中や全身の状態を見て、その状況に応じた的確なアドバイスやケアをしてもらうこと。
ケアの目的は、歯石・汚れの除去、口腔機能の維持・回復や日々の食生活をよりよくすることです。
1-1.口腔ケアは体全体の健康を綺麗にするケア
口腔機能が低下すると、食事を味わってから飲み込むまでの一連の流れがスムーズにこなせなくなり、十分な栄養が摂取できず、栄養不足につながります。栄養不足の状態が続いてしまうと、免疫機能や運動機能の低下や認知症を誘因してしまいます。そのため、口腔ケアは全身の健康を維持するために必要なケアと言えます。
1-2.口腔ケアの目的
・虫歯・歯周病の予防
虫歯・歯周病を予防することによって、歯を失うことを防ぎます。残りの歯の本数が少ない人は、認知症になるリスクが高くなるデータが出ています。
・乾燥・口臭の予防
高齢になり、噛む力が低下することによって、唾液の分泌量が減ります。唾液は口腔内を清潔に保つ機能があるので、口腔内の唾液が減り、乾燥しやすくなると細菌が増え、口臭につながります。
・味覚の改善
高齢者は口腔内の自浄作用が低下するため、下の表面に舌苔がつきやすくなります。舌苔がつくと、味を感じにくくなったり、味覚に違和感をもったりすることがあります。
・唾液分泌の促進
口の中が食べかすや細菌で不衛生な状態では、唾液が出にくいため口内が乾燥します。口腔ケアで口の中を清潔にすると、唾液の分泌が促進されます。唾液の量を増やすことは口腔ケアにおいて、歯や口の粘膜を保護したり、虫歯や歯周病を予防したりする重要な役割があるため、大切になります。
・誤嚥性肺炎の予防
食べ物や唾液を飲み込む時に、誤って食べ物や唾液が気管に入ってしまうことがあります。それによって細菌が肺に入ってしまうのが誤嚥性肺炎です。高齢になると、噛んだり飲み込む機能が低下するため、誤って気管に入ることが多くなります。高齢者のとって誤嚥性肺炎は生死に関わる重大な病気なので、口腔内を清潔にしてしっかり予防するようにしましょう。
・コミュニケーションの改善
口腔ケアをすることによって、介護者と要介護者でコミュニケーションがより多く生まれるようになります。特に、口腔内に痛みがある場合はケアを嫌がるようになるので、トラブルの早期発見につながります。そのためにも日頃から、密接にコミュニケーションを取り、信頼関係を築いておくようにしましょう。
1-3.口腔ケアの効果
口腔ケアでは以下のような効果を受けることができます。
・効果1 誤嚥性肺炎を予防する
誤嚥性肺炎とは、口の中の食べ物や飲み物が気道に入ってしまい、肺に口腔内の細菌が入り込むことによって発症します。誤嚥性肺炎は高齢者に発症しやすく、最悪の場合死に至る場合もある怖い病気です。
口腔内を清潔に保つことによって、口の中の細菌を減らし、誤嚥性肺炎のリスクを低下させることができます。
・効果2 認知症を予防する
愛知県で65歳以上の健常者を対象に行われた調査によると、歯が20本以上残っている人と比べて、歯がなく、入れ歯も使っていない人は、認知症になりリスクが1.9倍高いという結果が出ています。
【参考】
神奈川歯科大学プレスリリース(2011年)
「歯を失うと認知症のリスクが最大 1.9 倍に ~厚労省研究班が愛知県の健康な高齢者 4425 名のデータを分析~」
・効果3 唾液分泌を促進する
食べかすや、細菌で口の中が不衛生な状態になると、唾液が分泌されにくくなります。口腔ケアで口の中を清潔にすることで、唾液の分泌を促進します。唾液には、虫歯や歯周病を予防する効果があるため、口腔ケアにおいて、唾液の分泌を促すことは、大事なポイントです。
・効果4 感染症や発熱を予防する
高齢になり筋肉が衰えると、「噛む」「飲み込む」「笑う」「話す」といった日常生活に関わる口腔機能が低下しやすくなります。口腔機能が衰えてしまうと、十分な栄養が摂取できなくなり、免疫力や身体の健康状態の悪化につながります。口腔ケアをすることで、口腔機能が回復し体全体の機能向上に期待ができます。
・効果5 口腔機能の低下を防ぐ
高齢者は加齢による口腔機能の低下によって「噛む」「話す」「食べる」「飲み込む」いった一般的な動作が全般的に難しくなる傾向があります。口腔機能が衰えると、十分な栄養の摂取ができなくなり、免疫力や体力の低下につながります。口腔ケアをすることで、口腔機能が向上し、改善することで、口腔だけでなく全身の機能向上への期待が持てます。
2.実際に口腔ケアをしてみよう!
それでは、実際に口腔ケアをするために大切なポイントを4つ解説していきます
2-1.口腔ケアをする時の4つのポイント
①できる限り自分でやってもらう
高齢者の自立を促すためにも、サポートを最小限にすることが大切です。
歯を磨く動きは手を使うので、筋肉の運動を促し、手や指を動かすリハビリにもつながります。介護者が全て行ってしまうと、自分でできる能力を奪ってしまうことにも繋がるので、できる限りは自分でやってもらうことが重要になります。
また、口腔内に汚れを放置すると、他の細菌や病気の温床になってしまうこともあるので、最終的な確認作業は介護者が行うようにしましょう。
②短時間で済ませる
口の中を見られることや、口を開くことによって口の中が乾燥することを嫌がる人もいます。
口腔ケアは毎日の日課として必要なことなので、不快に思われてしまい続かなくては意味がありません。そのため、口腔ケアの必要性を事前によく理解してもらい、本人がリラックスした状態で受けられるようにしましょう。
③姿勢に気をつける
口腔ケアをすると唾液の分泌が活発になります。あごが上がっている状態だと、唾液や水分が気道に入り誤嚥性肺炎を引きおこす原因になります。あごを引いた状態をキープしてもらい、安全な状態を作りましょう。
④口腔内の様子をチェックする
口腔内は普段見れないので、見ることができるタイミングで見ておくことが大切です。臭いや色、状態を見ておくとトラブルや病気の早期発見につながります。もしも異変を感じたらすぐに、専門医を受診するようにしましょう。
2-2.口腔ケアに必要な4つのアイテム
・歯ブラシ
歯磨きは口腔ケアの基本です。歯ブラシを使い、歯と歯茎の間の食べかすや歯垢を取り除いてください。強く当てすぎず、優しくマッサージするようにブラッシングしましょう。歯に対して歯ブラシを90度であて、優しく動かすのがポイントです。歯磨きに加え、デンタルフロスや歯間ブラシを使うと更に効果的です。
・コップ
コップはうがいで使います。うがいは、口腔ケアの最初と最後で使います。うがいをすると口の中の汚れや食べかすを洗い流す事ができます。頬を動かして、主に歯の隙間を洗浄するぶくぶくうがいと、上を向いて、喉の奥を細菌を洗い流すガラガラうがいがあります。喉の奥を動かしながら洗うと効果的です。
・スポンジブラシ
スポンジブラシは、歯の少ない高齢者や口が開きにくい人にも使いやすい形状になっています。歯ブラシと違って、先端がスポンジ状になっているので、口腔内に傷をつけることも少ないです。
・タオル
うがいや歯磨きの際に、口の周りや服が汚れることがあります。すぐに拭き取れるようにタオルを用意しておくとスムーズです。
2-3.口腔ケアを行うパターン別の手順6STEP
①準備
2-2で挙げたアイテムの準備をしましょう。
また、口腔ケアを行う際は必ず本人に声をかけてからにしましょう。
②うがい
うがいは喉の奥についた細菌を洗い流すことや、口の中に残った食べかすを洗い流すのに効果的です。上を向いて喉の奥を洗ったり、口を閉じて頰を動かして歯主に歯を洗浄するうがいがあるので、どちらも3〜4回ずつするようにしましょう。
③歯磨き
歯磨きは、口腔ケアの中でも一番重要なものです。歯ブラシを使って、虫歯や病原菌の原因となる歯石を取り除きます。食後、すぐに行うことが効果的です。ブラシを強く当てすぎず、一本ずつ小刻みに磨いていくことが大切です。また、歯ブラシの後に歯の間でどうしても取り除けない汚れがある場合はデンタルフロスや歯間ブラシを使うと、さらに効果的です。
④舌の清掃
舌にも細菌が多く存在するので、定期的に綺麗にすることが必要です。舌ブラシにクリーナーをつけ、舌の奥から手前に引きましょう。この時、強く引きすぎないようにしてください。ブラシに汚れがつかなくなるまで、数回程度行うようにしましょう。
⑤うがい
ケアでとった汚れを最後に水で洗い流すようにしましょう。頬を大きく動かすぶくぶくうがいを10〜20秒で2〜3回行ってください。
⑥終了
口腔ケア後のコミュニケーションを忘れずにとるようにしましょう。痛みや汚れの有無を確認することで嫌悪感を抱かれにくくなります。口腔ケアに嫌悪感を抱いてしまうと、次から断られてしまいケア自体が難しくなってしまうので、アフターフォローを忘れずにしましょう。
3.自分で口腔ケアを行えない時は歯科医院に通うのがオススメ
普段は在宅で口腔ケアをしていても、専門的な領域であると、プロフェッショナルである歯科医院に任せた方が良い場合もあります。自宅で口腔ケアをしていても、トラブルに気づけなかったり、思わぬ虫歯が進行している可能性があるからです。もし、小さな異常を発見したら、放置せずにすぐに専門医に相談するようにしましょう。
また、専門知識のない人が口腔ケアをしていても、異常にすら気づかずにトラブルが進行していたというケースも考えられるので、異常を感じなくて定期的に受診するようにしてください。
歯科医院では以下のようなことを受けられます。
- 虫歯や歯周病等の状況
- 口腔清掃のの適切なアドバイス
- 日常的な口腔ケアではできない部分の清掃
- フッ化物洗口などの、薬剤の紹介や使用法の指導
高齢者になると、免疫や代謝が落ち病気や思わぬトラブルが発生しやすくなります。そのため、とにかく早めに対処し、トラブルを未然に防ぐための努力が必要になります。
4.まとめ
いかがでしたか?
上記で述べたように、口腔ケアは身体全体の健康に繋がる重要な役割を持っているので、家族内や身内で分担して毎日しっかりこなすことが大切です。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。