認知症が現れたと思ったら3日くらいで治まった
夜間に暴れまわる
ある時から無気力になり反応がない
そのような症状は「せん妄」かもしれません。
せん妄とは、高齢者によく現れる意識障害です。
突然現れて、時間とともに症状が改善されることが多いです。
認知症とは違って、正しく処置を行えば改善できるため、症状がみられた場合は迅速に医師に診てもらいましょう。
この記事では、せん妄と認知症の違いやせん妄に直面した時の対応方法などについて解説しています。
それでは見ていきましょう。
目次
1.せん妄とは
せん妄とは、高齢者によく現れる意識障害です。
突然現れて、時間とともに症状が改善されることが多く、入院中や手術後、家族の死など、体調不良や環境の変化などが原因で起こります。
他には、薬の副作用でも起きることがあります。
たいていの場合、数時間から数週間で改善するため、落ち着いて対応しましょう。
また、夜間に大声を出したり、暴れたりする「夜間せん妄」という症状もあります。
夜間せん妄については、4章で解説します。
1-1.せん妄の症状は様々
せん妄の症状は様々で、症状が短時間現れて消えたり他の症状に切り替わったりします。
・自分のいる場所や時間がわからなくなる
・コミュニケーションが取れない
・幻覚が現れる
・無気力で反応がない
・夜間に歩き回る
・物忘れがひどくなる
1-2.せん妄には4つの種類がある
〇低活動性せん妄
無気力状態であったり、ぼんやりしていて大きな動きは伴わない場合、低活動性せん妄となります。
〇過活動性せん妄(高活動性せん妄)
低活動性せん妄とは異なり、大声を出したり動き回ったりする場合は過活動性せん妄(高活動性せん妄)となります。
〇混在性せん妄
両方の症状が混在するのが「混在性せん妄」です。
〇夜間せん妄
昼間は症状がないのに、夕方以降になると症状が出る場合もあります。
1-3.せん妄の原因
せん妄の原因は明確には解明されていません。
有力な説として、何らかの身体的、心理的な変化やストレスによって起こると考えられています。
具体的には、ケガや急病などの身体的ストレス、身内や友人の不幸などの心理的なストレス、薬品に含まれる成分への反応などがあります。
2.せん妄と認知症の違い
せん妄の症状は、認知症とたいへん似ています。
しかし、違いを見極めることは可能です。
ここで認知症との違いをまとめておきましょう。
2-1.せん妄は、発症の時期が特定可能
せん妄は、症状がいつから始まったか、はっきりとしている場合が多いです。
心身へのストレスがあった出来事などを振り返るとよいでしょう。
一方、認知症は脳血管性認知症などを除いて、急に症状がひどくなることはありません。
2-2.せん妄は、短期間で症状が 治まる
せん妄の症状は、数時間から数週間で治まります。
一方の認知症は症状が治まることはなく、徐々に悪化していきます。
2-3.せん妄は、早いうちから失禁が起こる
せん妄では、初期の段階から失禁をしてしまうことがあります。
認知症でも失禁してしまうこともありますが、初期の段階ではめったにありません。
2-4.せん妄は、適切な処置を行うことで回復が見込める
せん妄は、原因となる心身のストレスに処置を行うことで多くの場合症状が改善されます。
その一方、認知症は処置を行うことで、進行を遅らせられても症状を改善することはできません。
3.せん妄5つの対応法
3-1.慌てず落ち着く
慌てずに落ち着きましょう。
周りが騒いでしまうと、せん妄はより悪化してしまう場合もあります。
3-2.安心感を与える
幻覚を訴えている場合は、気持ちに寄り添うように「大丈夫ですよ」「ここですね」と声掛けをしましょう。
本人にとっては、はっきりと見えているため、周りがいくら見えていないと伝えても信じてもらえません。
さらには、馬鹿にされたと感じて怒ったり暴力をふるってしまう場合もあります。
3-3.ご本人と家族の安全を
せん妄がひどくなると、暴れまわったり家から飛び出してしまうことがあります。
その際、ご家族がケガをしてしまったり、交通事故にあってしまうことも考えられます。
刃物など危険なものはご本人のそばに置かない、日頃から滑りやすい床には滑り止めをしておくなど注意が必要です。
3-4.早期に医師の診察を受ける
せん妄は、原因を特定できれば改善できます。
また、しっかりと原因を特定できていないと再発する可能性が大幅に増加します。
少しでもせん妄の症状が出ている場合は、医師の診断を受けましょう。
3-5.場所や時間を教える
見当識障害を起こしている場合は、場所や時間を教えると症状が治まることがあります。
日頃から目につく場所に大きな時計やカレンダーを置くことも有効です。
4.夜間せん妄とは?
夜間に大声を出したり、暴れたりする症状のことを「夜間せん妄」と言います。
せん妄の原因は心身のストレスですが、夜間せん妄の場合、睡眠ホルモンや睡眠障害も原因の一つとなります。
夜間せん妄を改善するには、
〇日中十分な活動を
日中活動をすることで、体は疲れを感じて睡眠を促します。
生活のリズムを付けるため、可能な範囲で家事を頼んだり、デイサービス・デイケアを利用することで、活動を習慣化させることができます。
自宅では日中、なるべく横にならないように工夫しましょう。
〇午前中の日光浴が効果的
特に朝日を浴びながら運動するとよいです。
体内時計を調節するホルモンであるメラトニンは、朝日を浴びた14~15時間後に分泌されると言われています。
睡眠時間を逆算して運動をしましょう。
しかし、早朝に日光を浴びてしまうとどんどん体内時計が乱れてしまいます。
高齢者でもできる運動はこちらの記事を参照ください。
https://carers-navi.com/exercise
〇軽食やマッサージも有効
寝つきが悪い時には、ホットミルクなど温かい飲み物を勧めたり、おにぎりなどで空腹を解消してもらうと穏やかに眠れることがあります。
血液の循環をよくすることも有効で、足浴やマッサージも効果があります。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか?
せん妄は、時間とともに改善していくものです。
初めてせん妄の症状に直面したときは、驚いて慌ててしまうかもしれません。
しかし、周囲が慌ててしまうと、せん妄の症状はよりひどくなってしまいます。
この記事を思い出し、落ち着いて対応しましょう。