「介護」と「介助」の違いを解説。違いを理解することで適切な支援を
日常では、「介護」と「介助」を使い分けることなく使用しているかもしれません。
しかし、介護の現場ではその違いを明確に分けています。
「介護」と「介助」は、たいへん似ている言葉ですが、それぞれ別の意味を持っています。
この介護と介助の違いを理解することは、適切な支援の提供するために不可欠な要素です。
それでは、「介護」と「介助」の違いの解説を始めます。
目次
1.介護と介助の違い
まず、結論である「介護」と「介助」の違いについて解説します。
介助は、介護の中に含まれており、以下の式がイメージしやすいです。
「介護」=「介助」+「生活援助や社会的援助等」となります。
介助は、ある行動を補助することが目的であり、介護は、介助や生活援助を通して自立した生活を促すことが目的です。
そのため、「食事介護」や「入浴介護」という表現は避けましょう。
2.介護とは、日常生活の自立を促す行為
介護とは、高齢者や障害者など、日常生活を営む上で困難な状態にある人に対し、生きるために必要な生活を支援し自立を促す行為です。
介護では、介助以外にも、生活援助や社会的援助を行います。
公式な定義としては以下が挙げられます。
老齢者や心身の障害者など日常生活を営む上で困難な状態にある個人を対象に、専門的な対人援助を基盤に身体的・精神的・社会的に健康な生活の確保と成長、発達を目指し、利用者が満足できる生活の自立をはかること
(日本社会事業学校連盟・全国社会福祉協議会施設協議会連合会 1988年)
2-1.介護の種類と内容
〇身体介助とは
食事や入浴、排泄など日常生活を送るうえで必要な動作日常生活動作(ADL)の介助をすること。
〇生活援助とは
買い物や掃除、洗濯など手段的日常生活動作(IADL)を援助をすること。
〇精神的援助とは
病気などで退院した後の不安や配偶者との死別など、精神的な問題に対して援助すること。
認知症による抗うつ症状や老人性うつなど、精神病に対しても同様です。
〇社会的援助とは
介護を社会全体で支えることを指します。
介護保険を活用した介護サービスの利用などが当てはまります。
3.介助とは、日常生活を手助けする行為
介助とは、介護を実現するための手段であり、生活を手助けする行為を指します。
具体的には、入浴や食事、歩行など具体的な行為に対する手助けを行います。
つまり、「介護」という大きな枠組みの1つに「介助」があるのです。
3-1.介助の種類とポイントを解説
3-1-1.食事介助
食事介助では、誤嚥性肺炎に注意しましょう。
〇誤嚥しにくい食べ物を選ぶ
誤嚥を防ぐためには食べ物に気を配ることが大切です。
さらさらとした液体も実は誤嚥のもとになってしまうのです。
誤嚥しやすいもの、しにくいもののそれぞれを知り、安心して食事を楽しめるようにしましょう!
〇食事の際の姿勢に気を付ける
誤嚥性肺炎を防ぐために、6つの項目に気を付けましょう。
– 出来るだけ起き上がる
– 顎を引くこと、イス の 座面の高さを、ひざが90度に曲がるくらいに調整する
– テーブルの高さを、腕を乗せた時にひじが90度に曲がるくらいに調整する
– イスの座面の高さは、ひざが90度に曲がるくらいに調整する
– 足の裏は、床または足置きにきちんとつく高さにする
– 身体とテーブル の間に、 握りこぶし1つぐらいのすき間をつくる
画像引用元:嚥下困難|病態別栄養関連情報|株式会社クリニコhttps://www.clinico.co.jp/medical/worry/worry04.html
3-1-2. 入浴介助
〇浴室の準備
入浴介助を行う前に、浴槽にお湯を張り、脱衣所・浴室を温めておきましょう。
お湯の温度は、40℃~43℃が適温とされています。
必ず事前に温度計を使ったり、自分の手を入れて湯温を確認しましょう。
冬場ではヒートショックが起こりやすいので、脱衣場と浴室の温度差には十分注意しましょう。
〇健康チェック
普段の食事や睡眠の状態、入浴直前の体調や顔色など小さな変化に気を付けましょう。
何か変化があれば無理をせず、部分浴や濡れたタオルで体を拭くなど変更しましょう。
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3-1-3. 排泄介助
〇トイレのサインを見極める
トイレのサインを見極めることが大切です。
ポイントは、落ち着きなくそわそわしている、膀胱を抑えているなどです。
誰にでもサインは現れるため、よく観察してみましょう。
〇オムツや失禁パンツを利用する
身近な人間とはいえ、排泄のお世話までするのは気持ち的にもなかなか大変なところもあると思います。
介護者の負担を減らすためにも、要介護者のストレスを軽減させるためにも、適切なオムツを選ぶことが必要になります。
失禁パンツは、本人の精神的抵抗感も少なくすむため、利用を検討してみましょう。
詳しくはこちらをご覧ください。
3-1-4. 歩行介助
〇歩調と歩幅を合わせる
一番大切なことは、歩幅と歩調を合わせることです。
介護者がリードするのではなく、要介護者に合わせてゆっくりと一歩ずつ進みましょう。
そのため、行動には時間のゆとりを持たせて焦らないようにする工夫も有効です。
また、歩幅と歩調だけでなく、疲れていないか、体調に異変が起きていないかなども確認を行い、適宜休憩を取りましょう。
〇立ち位置に気を付ける
歩行介助は介護者の立ち位置が重要です。
歩行介助の基本的な立ち位置は、利き手とは反対側の斜め後ろで密着しすぎないことが原則です。
前に立ってしまうと視界を妨げ、密着すると体重移動を妨げてしまいます。
距離感は、バランスを崩したときにすぐに支えられるくらいが目安です。
近すぎると歩行を妨げてしまい、離れすぎると支えられなくなるため、程よい距離感を掴みましょう。
3-1-5. 更衣介助
〇部屋の温度調整をする
服を着替える際には、身体が冷えてしまうので、必ず室内の温度調整をしてから着替えに入ります。
室温は、23~25℃前後を目安に、暑くも寒くもない適温に保ちましょう。
〇皮膚の様子も観察する
更衣介助の際には、皮膚の状態もチェックしましょう。
皮膚の乾燥、臀部の褥瘡の状態など、しっかりと観察してください。
早期発見・早期治療で重症化を予防できます。
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4 まとめ
いかがでしたでしょうか?
介助は、介護の中に含まれており、以下の式がイメージしやすいです。
「介護」=「介助」+「生活援助や社会的援助等」となります。
介助は、ある行動を補助することが目的であり、介護は、介助や生活援助を通して自立した生活を促すことが目的です。
過ごしやすい生活を送るための介護も、安心して行動ができるように補助する介助も欠かせないものです。
また、介助には危険が伴うため、しっかりと専門家からの指導を受け実践してください。