「認知症で転倒することが増えた」「認知症によって歩行はどう変わるの?」など、認知症の歩行について悩みを抱える介護者の方は多いと思います。
この記事では、認知症の歩行と一般高齢者の歩行は何が違うのか、認知症の種類による歩き方の特徴や介助のポイント、転倒予防策について解説します。
目次
1.認知症の歩行について
認知症の歩行にはどのような特徴があり、認知症のない高齢者と比べて何が違うのでしょうか。
その違いは「症状が進行すること」と「パーキンソン症状が出ること」の2つです。
パーキンソン症状とは、「小刻みに歩く」「突進するように歩く」「足がすくんで最初の一歩が出ない」「内股ですり足になる」「体が丸太のように固くなる」「体の重心が後方になる」「歩く速さが明らかに遅くなる」といった症状です。
2.認知症の種類別、歩行の特徴と介助ポイント
認知症には種類があり、歩き方にはそれぞれ違いがあります。
ここでは、代表的な認知症における歩行の特徴と介助のポイントについてご紹介します。
2-1.アルツハイマー型認知症の歩行
アルツハイマー型認知症は「記憶障害」「見当識障害(時間や場所がわからなくなる状態)」「行動心理症状」が主な症状です。
運動能力が低下するというよりも、認知機能の低下が特徴的な病気です。
【歩行の特徴】
・初期は歩き方に変化がないが、病気が進行するとパーキンソン症状が現れる
・見当識障害や徘徊があり、転びやすい場所に行ってしまうリスクがある
【歩行介助ポイント】
認知症がかなり進行した段階でパーキンソン症状が出ますが、それまでは見当識障害や徘徊に対する介助が大切になります。
日中はなるべく見守り下での活動に参加したり、トイレなどよく行く場所は分かりやすく看板で示すなどの工夫が効果的です。
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2-2.脳血管性認知症の歩行
脳の血管が障害されることで、障害部位により異なる様々な症状が現れる病気です。
【特徴】
・身体症状(麻痺や感覚障害、パーキンソン症状など)が出る
・症状がまだらである
・脳の血流量によって能力が変動する
【介助ポイント】
片麻痺や感覚障害、運動失調(手足や体が震えて上手く動かせない状態)、パーキンソン症状など、出ている症状に合わせた介助を検討することが大切になります。
また、起床直後や食事後、水分不足時などは、血流量が減ることで症状が出やすくなるため注意が必要です。
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2-3.レビー小体型認知症の歩行
レビー小体型認知症は「幻視」「パーキンソン症状」「抑うつ」「睡眠障害」などが主な症状です。
【歩行の特徴】
・パーキンソン症状が出る
・能力が変動する
・夜間に歩き回り異常行動をとることがある
・視空間の認知が障害されやすい
【歩行の介助ポイント】
介助者のペースではなく、本人様のペースに合わせて歩くことが大切です。
また、物を見間違えたり、立体的に見づらくなることがあるため、階段などは特に注意が必要です。
歩き始める前に少し手足を動かして体を慣らし、ストレッチをしてから歩くことで、体の固さが軽減します。
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2-4.前頭側頭型認知症の歩行
前頭側頭型認知症は「人格が変わる」「感情や行動の抑制ができない」「注意が散漫で集中できない」「同じ行動を繰り返す」「無気力になる」などが主な症状です。
【歩行の特徴】
・他の認知症と比べて歩行の特徴は少ないため、症状を自覚しにくい
・足の動きに左右差が出ることがある(右に比べて左の動きが悪いなど)
・物や人にぶつかりやすい
【歩行介助ポイント】
足の動きに左右差がある場合は、動きの悪い側に介助者が位置すると良いでしょう。
また、注意散漫で、症状を自覚していないので、人や物にぶつかりやすくなってしまいます。
ぶつかると危険な物はなるべく置かず、人混みを歩く時などは見守りを強化することがポイントです。
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2-5.正常圧水頭症
正常圧水頭症は、「歩行障害」「認知症」「尿失禁」の3つが主な症状です。
中でも、歩行障害はもっとも多く現れる症状で、手術により改善しやすい特徴があります。
【特徴】
・歩幅が広く外股になる
・足が挙がりにくく滑るように歩く
・大きく左右に揺れるように歩く
【介助ポイント】
パーキンソン症状との違いは「外股で、大きく左右に揺れやすい」ことです。
そのため、特に方向転換の際、バランスを崩しやすく注意が必要です。
また、左右の動きが制御された歩行器を使うことで、安定性をアップすることができます。
3.認知症の歩行における転倒予防策4つ
様々な認知症における歩行の特徴や介助についてご紹介して参りましたが、介護者を悩ませる課題の一つに転倒が挙げられます。
そこで、認知症の歩行における転倒予防対策を4つご紹介します。
3-1.ラベンダーの香りを日常に
ある研究にて、ラベンダーの香りを嗅ぐことで、認知症による焦燥感などのイライラする気持ちを減らし、転倒予防に効果があったことが証明されています。
日常的にアロマなどでラベンダーの香りを嗅ぐことは、転倒予防にお勧めの策です。
3-2.環境を整える
認知症による歩行中の転倒を防ぐとは言え、四六時中見守りをすることは難しいのが現実です。
そこで、見守りの環境を整えることも転倒予防策の一つです。
例えば、病院でよく使用されるセンサーマット(センサーで動きを感知して知らせてくれるもの)や、音声コントロールデバイス(アレクサなど、呼びかけることで様子が動画に映るもの)など、積極的に取り入れることもお勧めです。
〈引用文献〉離床センサーを用いた高齢痴呆患者の転倒予防の試み
3-3.エクササイズやアクティビティ
四肢と体幹の筋力強化エクササイズや立位でのバランス訓練を行うことで、転倒回数が減ったという研究報告はたくさんあります。
また、1人で訓練をするのではなくグループで行うアクティビティも、認知症の転倒を減らす効果があります。
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〈内部リンク〉認知症の転倒予防にはコグニサイズ!注意力を鍛えて万全の対策を
3-4.歩行補助具の正しい選択
杖や歩行器を使うと転びにくくなると思われがちですが、認知症の方にとってはそうとも限りません。
間違った歩行補助具を選択してしまうと、逆に転びやすくなる場合もあります。
歩行補助具を操作しながら周りに気を配って歩くというのは、認知症の方にとって難しいことなのです。
認知症の種類や個々の症状に合わせて、歩行補助具を正しく選択することが大切です。
4.まとめ
認知症の歩行について、特徴や介助のポイント、転倒予防策を中心にご紹介致しました。
認知症の歩行介助や転倒対策は、症状によって異なります。
個々に合わせた対応が重要であるため、専門の医師やリハビリに相談することをお勧めします。