「主治医に胃ろうをするか聞かれたけど、胃ろうをすると生活は変わる?」
「そもそも胃ろうについてよく知らない……」
そういった悩みを抱えていませんか?
胃ろうを造設している患者は、胃ろうの造設および転帰に関する実態調査全国(2014)によれば約26万人いるとされています。
この記事では胃ろうの目的や、種類ごとのメリット・デメリット、老人ボームに入居できるかなど、詳しく解説していきます。
目次
1. 胃ろうとは
胃ろうは胃に穴を開けて管を通し、栄養を摂取するための装置です。
胃ろうを作ることで、栄養補給のためのルートを増やすことができます。
1-1. 胃ろうの目的は、生命維持と栄養状態の改善
胃ろうの目的は、体への負担なく栄養を取り入れることです。
口から食事を取れない方だけではなく、むせ込んでしまう方も対象です。
むせ込みは誤嚥性肺炎を引き起こすことがあり、肺炎は高齢者の死因5位でもあることからも、むせ込みには注意が必要です。
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1-2. 胃ろうの検討が必要な状態とは
胃ろうの検討が必要なのは、主に自分の力で食事を取ることが困難な方です。
例えば、重度の認知症を患っている方や、飲み込む力が弱ってしまった方などを対象としています。
2.胃ろうカテーテルの組み合わせ4種類とメリット・デメリットをわかりやすく図解!
胃ろうカテーテルとは、胃に開けた穴に通して栄養を送るための器具です。
胃ろうカテーテルの組み合わせを4種類紹介します。
参考:https://www.pegsupport.net/about_peg/peg_type.html
2-1. バルーン・ボタン型
2-1-1. バルーン・ボタン型のメリット
バルーン・ボタン型のメリットは、目立たず動作の邪魔になりにくいため自己除去の可能性を減らすことができます。
また、バルーン内の蒸留水を出し入れするため、交換が容易です。
2-1-2. バルーン・ボタン型のデメリット
バルーン・ボタン型のデメリットは、指先でボタンを開閉し辛い場合があることです。
またバルーンが破裂することもあり、短期間で交換になることもあります。
2-2. バルーン・チューブ型
2-2-1. バルーン・チューブ型のメリット
バルーン・チューブ型のメリットは、栄養を投与する時に栄養チューブとの接続が簡単なこと。
また、バルーン内の蒸留水を出し入れするため、交換が容易であることも特長です。
2-2-2. バルーン・チューブ型のデメリット
バルーン・チューブ型は動作の邪魔になってしまい、自己除去の可能性があることがデメリットです。
チューブが長く、チューブ内の感染が起きやすくなります。
2-3. バンパー・ボタン型
2-3-1. バンパー・ボタン型のメリット
バンパー・ボタン型のメリットは、動作の邪魔になりにくく自己除去の可能性を減せることです。
また、カテーテルが抜けにくく、交換までの期間が長いことも特徴です。
2-3-2. バンパー・ボタン型のデメリット
バンパー・ボタン型のデメリットは、交換の時に痛みや圧迫感を感じる場合があることです。
また、指先でボタンを開閉しづらい場合があることもデメリットの一つです。
2-4. バンパー・チューブ型
2-4-1. バンパー・チューブ型のメリット
バンパー・チューブ型のメリットは、栄養を投与する時に栄養チューブとの接続が簡単なことです。
カテーテルが抜けにくく、交換までの期間が長いことも特徴です。
2-4-2. バンパー・チューブ型のデメリット
バンパー・チューブ型のデメリットは、交換の時に痛みや圧迫感を感じる場合もあることです。
またチューブが長く、チューブ内の感染が起きやすいです。
3.胃ろうのメリット6選
胃ろうのメリットを6つご紹介します。
3-1. 利用者の体への負担が少ない
胃ろうのように人工的に栄養を入れる方法は、胃ろうの他にも鼻から入れる経鼻経管もあります。
胃ろうを利用して栄養を補給する場合、鼻から直接補給するよりも痛みや体への負担を軽減できます。
3-2. 洋服で隠せば目立たない
胃ろうは洋服で覆い隠すことができるため、目立ちません。
外出への抵抗を減らすことや、それによる寝たきり防止につながります。
3-3. カテーテルが抜けにくい
経鼻経管と比べ、カテーテルが抜けにくいこともメリットです。
寝ている間に抜いてしまったり、認知症の方が誤って抜いてしまうリスクを減らせます。
3-4. 誤嚥(ごえん)性肺炎を減らせる
飲み込む力が弱くなると、誤嚥性肺炎の危険性が高くなります。
誤嚥とは、食物などが誤って気管に入ってしまうことをいいます。
誤嚥性肺炎は細菌が唾液や食べ物などと一緒に誤嚥され、気管支や肺に入り炎症を起こす疾患です。
肺炎は高齢者の命に関わる病気であるため、胃ろうの大きなメリットと言えるでしょう。
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3-5. 口から食べる訓練も行える
胃ろうは喉に管が通っていません。
そのため胃ろうをしていても、口から食べる練習を行うことができます。
3-6. 入浴ができる
胃ろうを保護せず入浴ができることも、メリットの一つです。
4.胃ろうデメリット3選
胃ろうにすることのデメリットを3つ紹介します。
4-1. 皮膚がかぶれる場合もある
穴を開けた胃の部分が皮膚トラブルを起こしてしまうことも。
こまめに消毒するなど、清潔に保つ必要があります。
4-2. 注入した栄養剤が逆流することがある
胃ろうから送り込んだ液状の栄養剤が逆流を起こすこともあります。
逆流すると誤嚥に繋がる危険があり、注意が必要です。
4-3. 手術をする必要がある
胃ろうを設置するときには手術が必要です。
手術自体は全身麻酔の必要はなく、30分程度で終わります。
しかし、手術であることには変わりないため、本人の意思を尊重しましょう。
5.胃ろうの人を介護する4つのポイント
ここからは、胃ろうの人を介護するときのポイントを紹介します。
5-1. 口腔ケアを徹底する
口から食べ物を食べなくても、誤嚥や誤嚥性肺炎の可能性があります。
また胃ろうでの栄養補給をすることで唾液の分泌量が減少し、口腔内の菌を減らす自浄作用の機能が低下します。
そのため口腔ケアを徹底し、口腔の汚れや唾液・細菌の誤嚥を防ぐことが必要です。
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5-2. 胃ろう周りを清潔に保つ
胃ろうをしていても、問題なく入浴することができます。
皮膚トラブルを避けるためにも、胃ろうの周りを清潔に保つことが大切です。
入浴時にはしっかり洗い、入浴後は乾燥させましょう。
5-3. 栄養を体内に入れる行為には資格が必要
胃ろうを含む経管栄養の行為は看護師の他に、介護職員でもできますが、その場合は資格が必要です。
資格を持った人に任せるようにしましょう。
5-4. 体をしっかり起こす
食べた物が逆流することを防ぐため、体をしっかりと起こしましょう。
胃ろうの状態は、ゆっくり続けて口から食事を摂ることと似ています。
体を30度以上起こした姿勢を保つように心がけましょう。
また栄養の投与完了後も、30分から1時間程度は体を起こしておくことで、投与後の逆流も防げます。
6.胃ろうでも老人ホームに入居できる
胃ろうをしても老人ホームに入居できます。
ただし、胃ろうからの栄養投与の行為には資格が必要です。
そのため、胃ろうでも入居できる老人ホームは限られます。
※もともと介護士は胃ろうからの栄養投与を行うことはできませんでしたが、平成24年に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が施工されたことで、行えるようになりました。
7.まとめ
胃ろうは、口から食事を摂ることが難しくなってしまった場合でも栄養を補給できる手段です。
また、胃ろうをしていても口から食べる訓練を行うこともできます。
入浴ができて洋服で隠せば目立ちにくいことから、外出の機会を減らす必要もありません。
胃ろうによっては、カテーテルが抜けにくいものや逆流しにくいものもありますので、本人の状態に合わせて選んでみてください。