認知症は何歳からなるの?
若年性認知症ってどんな症状が現れるの?
進行を遅らせるにはどうすればいい?
このような疑問にお答えします。
若年性認知症とは、18歳から64歳までに発症した認知症性疾患の総称です。
患者数は、日本全体で約4万人といわれており、発症した年齢は平均して51.3歳と推定されています。
若年性認知症のうち、約40%が血管性認知症、約25%がアルツハイマー型認知症、その他の認知症が約35%という割合で、血管性認知症とアルツハイマー型認知症で全体の約65%を占めています。
今回の記事では、若年性認知症の特徴や症状、進行を遅らせる方法などをお伝えします。
目次
1.若年性認知症3つの特徴
1-1.経済的に厳しい
若年性認知症の患者が働き続ける環境が整っておらず、厚生労働省の調査の結果からも発症した患者の7割が収入の減少を回答しています。
子どもの養育費や住宅ローンがかかる世代の患者が多く、金銭面での影響がとても大きいです。
若年性認知症と診断されると「精神障がい者保健福祉手帳」を取得でき、身体症状がある場合は、「身体障害者手帳」に該当する場合もあります。
これらの手帳があれば、税制の優遇や障害者雇用枠として働くことも可能になります。
その他、医療費控除や高額介護サービス費、住宅ローン、生命保険などの免除などを受けられる場合もあるので活用してみましょう。
1-2.精神的なショックを受ける
まだまだこれから、と思ってる時に「この年で認知症になってしまった。」というショックから、ご本人やご家族が抗うつ状態になってしまうことも少なくありません。
また、認知症により低下した機能と、それ以外の正常な機能や身体的能力とのギャップに悩むこともあります。
1-3.専門のサービスや支援が少ない
若年性認知症は高齢期の認知症に比べ、圧倒的に患者数が少なく専門サービスや支援がほとんどありません。結果として、高齢者向けや障がい者向けのサービスを利用せざるを得ないことが多いです。
2.若年性認知症の種類
若年性認知症は、約40%が血管性認知症、約25%がアルツハイマー型認知症、その他の認知症が約35%という割合になっています。
この章では、若くしてかかる可能性のある認知症をご紹介します。
2-1.アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症とは、最も一般的な認知症の一種です。
以前までは、アルツハイマー型認知症=認知症とされていました。
また、認知症の半数近くをアルツハイマー型認知症が占めていると言われています。
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2-2.血管性認知症
血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などによって発症する認知症です。
脳血管の破裂や出血などにより、ダメージを受けた脳の血管付近の神経細胞が障害を受けます。
そして、その細胞が担っていた機能が失われて認知症になるのです。
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2-3.レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、アルツハイマーと脳血管性認知症と並び「三大認知症」と言われています。
主に65歳以上の高齢者にみられますが、40~50歳の方の発症も珍しくはありません。
また、アルツハイマーは女性の発症が多いのに対し、レビー小体型認知症は男性に多い傾向があり、女性の約2倍と言われています。
物忘れなどの認知機能障害、幻視、手足の震えなど様々な症状が見られます。
3.若年性認知症の症状
認知症の症状には、「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」の2種類があります。
中核症状は、認知症によって起こる直接的な症状を指しており、「周辺症状(BPSD)」はその二次的な症状を表します。
3-1.代表的な中核症状
3-1-1.記憶障害
記憶障害は、薬を飲み忘れたり、二重に飲んでしまう、ついさっき言われたことを忘れてしまう、今何しているかわからなくなる、質問を繰り返すなどです。
体験全体を忘れることから、話しのつじつまが合わなかったり、作り話をしてしまうこともあります。
また、ものを誰かに盗られたと思い込む、抗うつ状態を引き起こすことも少なくありません。
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3-1-2.見当識障害
見当識とは、時刻や日付、場所、周囲の状況などを判断する能力であり、その能力が低下するのが見当識障害といいます。
見当識障害の症状には、時間・場所・人物の3種類があり、時間→場所→人物の順番に進行していきます。
認知症の初期のころから現れ、ゆっくり進行します。
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3-1-3.言語障害
言語障害では、失語症(言葉が出なくなること)や、言い間違えが増えるなどが起こります。
また、物の名前がわからなくなってしまうため、コミュニケーションが難しくなります。
3-1-4.実行機能障害
実行機能障害とは、物事を論理的に考えたり計画を立てて実行することができなくなってしまう症状です。
例えば、洗たくをした後に服を干すことを忘れてしまう、料理ができなくなってしまうなどです。
また、一連の行動が取れなくだけでなく、予期せぬ出来事に対応できなくなることもあります。
3-2.代表的な周辺症状(BPSD)
3-2-1.睡眠障害(不眠、昼夜逆転など)
年齢を重ねると、早朝に目が覚めたり、夜中に何度も起きたりすることがあります。
加齢によって、睡眠と目覚めのリズムが変わることは珍しくありません。
しかし、夢を見ながら暴れている場合はレム睡眠行動障害を疑ってみてください。
レビー小体型認知症の可能性があります。
日中十分な活動をすることや午前中の日光浴が効果的です。
3-2-2.幻覚
幻覚とは、実際には存在しない知覚を感じる症状です。
幻覚は、視覚によるものだけでなく、五感すべてにみられ、「幻視」「幻聴」「幻触」「幻臭」「幻味」などに分けられます。
せん妄やストレスが原因で現れる幻覚には、心身の状態を整えることで予防できます。
不安やストレスを感じていないか、体調に違和感はないかなど細かく観察しましょう。
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3-2-3.抑うつ
抗うつ症状は、気分が落ち込む、注意力が散漫になる、物事への興味や幸福を感じない、やる気が出ない、食欲が落ちる、眠れないなどの症状が出ます。
原因の一つに環境的要因があり、活力を取り戻せるような環境を整えたり、家族と定期的に会えるようにするなどが効果的です。
3-2-4.徘徊
見当識障害や記憶障害、ストレスなどで絶えず歩き回る症状を徘徊と言います。
行方不明になってしまうことも多く、脱水や転倒などの心配もあります。
徘徊の前兆が見られたときには、しっかりと外出の理由を聞き、無理には止めず一緒に出かけたり気をそらすような提案を心がけましょう。
4.進行を遅らせるために
若年性認知症に対する根本的治療法は見つかっていません。
しかし、現在有効とされる認知症予防を行うことで、進行を遅らせることはできます。
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4-1.飲酒、喫煙をやめましょう
喫煙は、喫煙は脳を委縮(小さく)させると言われています。
また喫煙者の脳は同年齢の非喫煙者よりも萎縮しています。
萎縮の進行度合いは 5~10 歳年上の非喫煙者と同等と言われています。
また、同様に飲酒でも脳を萎縮させることが、アメリカ・ウェルズリー大学の研究チームによって示されました。
昔は、「酒は百薬の長」という言葉もありましたが、現在は否定されつつあります。
出典:https://style.nikkei.com/article/DGXDZO39490270Q2A310C1MZ4001/
4-2.生活習慣の見直し
認知症の原因には、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が基礎疾患としてある場合が多く、生活習慣が深く関わっています。
そのため、生活習慣を整えることが最大の予防に繋がります。
この機会に生活習慣を見直してみましょう。
〇食事
食事の内容を炭水化物中心から低糖質、低塩分にするとよいでしょう。
考えるのが難しい方は、すでに塩分やカロリー計算されている宅配食を検討してみてはいかがでしょうか?
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また、様々な栄養素を含む食品をバランスよく摂りましょう。
いきなり食生活を変えることは難しいので、ゆっくりと習慣を見直して行くことをおすすめします。
〇運動
運動は生活習慣病以外にも、認知予防などの介護予防につながります。
自分の体調と生活習慣に合った方法を取り入れましょう。
この記事を読んでいきなり激しい運動をすると、かえって心筋梗塞を引き起こす原因になってしまいます。
以下のような簡単にできる運動や体操を日常生活に取り入れてみましょう。
・ウォーキング
・スロージョギング
・笑いヨガ
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5.早期発見が大切
若年性認知症は、高齢者と比べ脳の萎縮スピードが早いです。
そのため、早期発見・早期治療が重要になります。
厚生労働省調査では、最初に気づかれた症状はもの忘れ(50.0%)、行動の変化(28.0%)、性格の変化(12.0%)、言語障害(10.0%)となっています。
少しでも心当たりのあったり、周りから注意や心配を受けた場合には、医療機関で受診することをおすすめします。