口腔ケアをするとき、歯磨きだけで満足していませんか?
実は、舌や頬の内側も磨く必要があります。
舌を磨かないと舌苔(ぜったい)と言われる、舌の表面に現れる白っぽい苔のようなものが増えてしまいます。
その結果、誤嚥性肺炎や味覚障害、口臭などの障害をもたらします。
また、口臭の約70%が舌の上の舌苔からくると言われているのです。
今回の記事では、特に舌の磨き方についてご紹介します。
目次
1.舌苔とは
舌苔(ぜったい)とは、舌の表面に現れる白っぽい苔のようなものです。
舌に 細菌や食べかすなどの物質が付着することで舌苔ができます。
舌苔は誰にでもあり、薄く付着している状態は正常ですが、厚みが増し白色が濃くなってきたタイミングでケアが必要です。
2.舌苔の放置は危険
舌苔は、ケアをすることでいくつかの障害を予防できます。
2-1.誤嚥性肺炎を予防
誤嚥性肺炎とは、口の中の食べ物や飲み物が気道に入ってしまい、肺に口腔内の細菌が入り込むことによって発症します。
誤嚥性肺炎は高齢者に発症しやすく、最悪の場合死に至る場合もある怖い病気です。
口腔内を清潔に保つことによって、口の中の細菌を減らし、誤嚥性肺炎のリスクを低下させることができます。
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2-2.口臭の改善
なかなか改善するのが難しいと思われがちな口臭。
実は、口臭の約70%が舌の上の舌苔からくると言われています。
こまめな舌苔のケアで口臭は予防することができます。
2-3.味覚の改善
舌苔の厚さによっては味覚障害を起こしてしまいます。
その結果、塩分や糖分の過剰摂取により、生活習慣病が促進してしまう可能性も考えられます。
生活習慣病になると介護が必要になる原因となる心臓病や脳血管疾患になる確率が大幅に増加するため注意が必要です。
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2-4.唾液分泌を促進
食べかすや、細菌で口の中が不衛生な状態になると、唾液が分泌されにくくなります。
舌苔のケアで口の中を清潔にすることで、唾液の分泌を促進します。
唾液には、虫歯や歯周病を予防する効果があるため、舌苔のケアにおいて、唾液の分泌を促すことは、大事なポイントです。
2-5. 感染症や発熱を予防
高齢になり筋肉が衰えると、「噛む」「飲み込む」「笑う」「話す」といった日常生活に関わる口腔機能が低下しやすくなります。
口腔機能が衰えてしまうと、十分な栄養が摂取できなくなり、免疫力や身体の健康状態の悪化につながります。
舌苔のケアをすることで、口腔機能が回復し体全体の機能向上に期待ができます。
3.舌苔ケアの方法
舌苔をケアには、適切な器具と方法があります。
まずは必要な器具から見ていきましょう。
3-1.必要な器具
次の器具を用意しましょう。
・ブラシ(舌ブラシ、スポンジブラシ、口腔ケアウエッティーのいずれか)
・保湿剤
・マウスウォッシュ(必要に応じて)
〇舌ブラシ
舌ブラシは、名の通り舌をブラッシングするためのブラシです。
舌は傷つきやすく、とてもデリケートですが、舌ブラシを使用すればリスクを軽減できます。
〇スポンジブラシ
スポンジブラシは、歯の少ない高齢者や口が開きにくい人にも使いやすい形状になっています。歯ブラシと違って、先端がスポンジ状になっているので、口腔内に傷をつけることも少ないです。
〇口腔ケアウエッティー
拭き取ることでお口の中を清潔にし、口臭を予防する口腔ケア用のウエットティシュです。
口が開きにくい方のケアによく使われています。
※基本的には舌ブラシを使用しますが、利用される方のお口の状態に合わせて選びましょう。
〇保湿剤
保湿剤と、口内に潤いを与えるため、水と保湿成分が含まれる製品です。
口腔をケアするときには、うるおいを与える口腔保湿剤を使用するのが好ましいです。
3-2.舌ブラシ使ったケア方法
①舌に保湿剤を塗布して20~30秒舌苔をふやかす。(舌ブラシは水で湿らせておく)
②舌の表面を舌先・中央・奥、というように手前に優しく搔き出す(一か所5回を目安に)
③一度行なったら必ず洗う
④舌ブラシも歯ブラシ同様、月一回交換する
「おえっ」となってしまう場合には、奥の方までケアせずに無理のない範囲で行いましょう。
また、口内の乾燥がひどく敏感になっている場合は、歯科医師・歯科衛生士に相談しましょう。
4.舌苔のケアでの注意点
4-1.1回のケアに時間をかけすぎない
舌苔をケアする場合、一度に全てを取ろうとしてはいけません。
長時間のケアは舌を痛める可能性があります。
数回に分けてゆっくりとケアしましょう。
4-2.強い力で磨かない
舌は傷つきやすく、とてもデリケートです。
力を入れすぎず優しくなでるようにケアしましょう。
また、強い力でケアすれば舌苔が取り除ける訳ではないです。
力の強弱で舌磨きに変化はないため優しくケアしましょう。
4-3.歯ブラシで舌を磨かない
舌苔をケアするときに歯ブラシの使用は避けましょう。
歯ブラシには見えない雑菌が付いていたり、舌を傷つける可能性もあります。
必ず舌ブラシ、スポンジブラシ、口腔ケアウエッティーのいずれかを使用してください。
5.舌以外の口腔ケアのポイント
①できる限り自分でやってもらう
高齢者の自立を促すためにも、サポートを最小限にすることが大切です。
歯を磨く動きは手を使うので、筋肉の運動を促し、手や指を動かすリハビリにもつながります。介護者が全て行ってしまうと、自分でできる能力を奪ってしまうことにも繋がるので、できる限りは自分でやってもらうことが重要になります。
また、口腔内に汚れを放置すると、他の細菌や病気の温床になってしまうこともあるので、最終的な確認作業は介護者が行うようにしましょう。
②短時間で済ませる
口の中を見られることや、口を開くことによって口の中が乾燥することを嫌がる人もいます。
口腔ケアは毎日の日課として必要なことなので、不快に思われてしまい続かなくては意味がありません。そのため、口腔ケアの必要性を事前によく理解してもらい、本人がリラックスした状態で受けられるようにしましょう。
③姿勢に気をつける
口腔ケアをすると唾液の分泌が活発になります。あごが上がっている状態だと、唾液や水分が気道に入り誤嚥性肺炎を引きおこす原因になります。あごを引いた状態をキープしてもらい、安全な状態を作りましょう。
④口腔内の様子をチェックする
口腔内は普段見られないので、見ることができるタイミングで見ておくことが大切です。臭いや色、状態を見ておくとトラブルや病気の早期発見につながります。もしも異変を感じたらすぐに、専門医を受診するようにしましょう。
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6.まとめ
いかがでしたでしょうか?
舌苔のケアは、様々な障害を予防することができます。
一度に全てを取ろうとせず、数回に分けて優しくこすり取るのがポイントでした。
また、平均年齢76歳の男女約3000名を対象にした調査によると平均残存歯数は8.7本{男性10本・女性7.8本}でした。
残っている歯の本数は認知症とも相関があることが分かっています。
歯の本数が少ないほど、認知症にかかる可能性が高まるとされています。
このことからも、日々の口腔ケアの重要性がわかりますね。
どうしても、ご自身や介護者だけでは取り切れない場合は、歯科医師・歯科衛生士に相談しましょう。